荒涼たる洞窟/後編





二人をリエナの前に連れていくと、リエナは今回の作戦を話し始めた。リーダーらしく士気を高めつつ話している。作戦はリエナが後ろでゴブリン達の動きを射止め、怯んだ隙に攻撃を食らわすというものだった。成程、バーズがリエナをリーダーに選んだのも納得だった。リエナの言葉で明らかに士気は上がっている。
パーティの熱気が最高潮に達すると、リエナは先陣をきって扉を乱暴に開けた。そして声高らかにGOサインを出す。その声に反応してかバーグとエリドールは雄たけびに近い声を出しながら暗闇の中突っ切って行った。
「血の気が多いなぁ」とぼやきながら慌てて二人を追う。二人の姿が見えると同時にゴブリン達の怒声や悲鳴が聞こえてきた。どうやら二人はもう戦っているようだった。
とりあえず二人の輪の中に入り、同じようにゴブリン達を切り捨てていく。ひゅう、と空気を切る音とともに目の前のゴブリンが悲鳴を上げた。肩には矢が刺さっており、ゴブリンは痛さのあまり怯んでいるようだった。あぁ、リエナの矢か、と理解すると同時にバーグはそのゴブリンを吹っ飛ばしていた。ふとバーグの顔が見え、思わず目を見開いた。目が、目が完全に血走っている。そういえば、と前にリエナが言っていた事を思い出す。「興奮すると前が見えなくなる」と。此処はゴブリン達のいるダンジョンだ、もしうやむやに突っ走ればほぼ絶対的に罠に引っ掛かるだろう。
この辺りの敵は全て殲滅したので、とりあえず落ち着かせようと思い、「バーグ」と名前を呼ぶ。が、彼は聞こえてはいないかのように返事をせず、飢えた獣のように辺りを見回し、ゴブリン達を探していた。これは重傷だな、と思いリエナを手を招いて呼ぶ。
それと同時に一匹のゴブリンが、奥から出てきて、まるでこっちに来いと言わんばかりに此方を見ていた。罠だ、と頭で理解した瞬間バーグは、ゴブリンめがけて武器を構えながら走って行った。皆の静止の声など露知らず、バーグはゴブリンめがけて突っ走る。ゴブリンの顔が、いやらしそうに笑い、逃げて行く。急いでバーグの後を追う。リエナが「戻れバーグ!」と声を荒上げた瞬間、ブチリ、と何かが千切れる音がし、丸太の山がバーグに襲った。そして、バーグの悲鳴が洞窟内に木霊した。


***

砂煙が辺りを舞い、視野が利かない。一体バーグはどうなったのだろうか。あのトラップに当たったのだったら、きっと、きっと望みは薄いのだろう。もしそうなればリーダーとして、チームをまとめられなかった私の責任だ。顔を歪めて自分の失態を責めるが、今はそんなことよりもバーグの安否が優先だと思い、前を見据える。この丸太の量だ、助かっているとは思いにくかった。

「私がしっかりまとめなかったから…」

思わず後悔の声を漏らし、奥歯をギリリと鳴らす。そんな私の表情を見て、ラトさんは何故か笑っていた。何故こんな時に笑っていられるのだ、と怒りがこみ上げてきたと同時にラトさんが声を発した。

「相変わらずリエナは早とちりだねぇ」

「は?一体何が…」

続きを言おうとした時だった、砂埃が落ち着き始め、大きな数人の人影が見えた。視野がすっかり良くなった時、思わず目を見開いた。

「バーグ…!?」

ある一体の氷の精霊の後ろにバーグが倒れていた。そもそもこの三体の氷の精霊は一体どこから…、と思った瞬間もしやと思い、ラトさんに顔を向け、「もしかして、これ…」と声をかける。私の読みは当たっていたようで、ラトさんはけらけらと笑っていた。

「あの時ヤバいなーと思ってね、咄嗟に召喚したんだ。でも間に合ってよかったよ」

つまり、氷の精霊をバーグの前に召喚し、盾になるようにしたのだとラトさんは説明した。では何故バーグは倒れているのだ、と聞くと「前が見えて無かったからね、気絶させといた方が安全だと思って、氷の精霊に頭殴らせておいたのさ」と笑いながら言った。兜の上からでも気絶させれる程の力で殴られたのか、と思うと少しバーグが可哀そうに感じた。
ふと疑問に感じた事を聞いてみる。

「あんな一瞬で複数召喚したり、場所を特定して召喚したり、どうやったらそんな事が出来るのですか?」

その問いかけに、ラトさんはいつも通りの笑顔を向けながらと、「私はちょっと特殊だからね」と飄々と答えた。その言葉の意味を聞こうとした時だった、ギャァーというゴブリンの悲鳴が聞こえ、顔を向ける。そこを見ると、先程トラップまで誘導してきたゴブリンが、ラトさんの氷の精霊が引きずりながら持ってきた。それを見てラトさんは「Поиск」と唱えると満足そうにうなずき、「ゴブリン討伐完了みたいだね」と笑顔で言った。


補足として***からはリエナ視点です。




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