不運な店主/前編



私は今、クランフィアに走って貰いながらアンヴィルに向かっている。理由は簡単だ、ゴブリンを片づけ終わった後、全員でシェイデンハルに帰りバーズに依頼完了と報告した。そこまでは良かったのだが、バーズから報酬金を貰うと同時に次の依頼用紙も渡されたのだ。何やらアンヴィルの方で人手が足りないらしく、助っ人に来てほしいとの事で、何故か私が抜擢された。どうやら勝手にオレインが手を回したらしい。せっかくシェイデンハルの住民から近くの洞窟の場所など教えてもらい、探索しに行こうと胸を躍らせていたのに。まぁどこの戦士ギルドもアザニ討伐の依頼で精鋭を失ったので、この状況は仕方がないのかもしれない。しかもその後、新しく出来たブラックウッド団とやらが出てきて、新人がそっちへ移ったりなどギルドの人員は減る一方だ。ギルドがこんな状態だというのにマスターは息子を失ったショックからか、何も対策を作らない。し、極端に死というものを嫌がるようになってしまった。今はオレインが居るからやっとギルドが回っているという状態で、ギルドは崩壊へ向かっているとしか思えなかった。きっと今のギルドの状況を見たら兄さんは悲しむだろうな、と顔を歪めて思っているとクランフィアが一声鳴いた。何事と思い、前を見据えるとどうやらお目当ての場所に着いたようだった。

「ありがとう、クランフィア」

そう言って降りて撫でてやると嬉しそうに声をあげた。そしてアンヴィルの支部長、アザーンに会うため門番に扉を開けてもらった。

***

「アザーン」

ギルドに入り、書類を整理しているお目当ての人物にそう呼びかけると「おぉ、ラト。久しぶりだな」とこちらに顔を上げて笑った。

「で、依頼は何なの?」

「ん?あぁお前が助っ人に来てくれたのか。これは頼もしいな。あぁそれで依頼の事だが、レレスの良品展ってあるだろう?あそこの店主がどうやら盗賊の被害に遭っているらしくてな」

「つまり、店の警備の仕事って事?」

「まぁそういう事だろうな。詳しくはノバート本人に聞いてくれ」

そこまで言うとアザーンはまた書類に視線を戻した。まるで先程の事はもう解決したと言わんばかりに書類と戦っている。ふぅ、と私は一息ついてもう一度アザーンに声をかける。

「ねぇアザーン、私がこの依頼断ったら困るよね?」

「当たり前だろう…お前まさか」

「私、最近暇貰って無いんだよねー。…意味分かるよね?」

そこまで言うとアザーンはおもむろにため息を吐きた。私だって出来ればこんなセコイ事はしたくないのだが、此処まで自由が利かないとなると話は別だ。

「……分かったよ、俺からもオレインにラトに暇を出すように頼んでみるよ。これでいいか?」

「さっすがああ!!!もうホントアザーンは物分かりが良いね!そういう所大好きだよ!」

そういうとアザーンは呆れながらも笑っていた。アザーンから言えば流石のオレインも私に暇を出すだろう。全くどこぞのモヒカンと違ってアザーンは優しいなぁ、と思っているとアザーンが不安そうな顔でこちらを見て「で、これで依頼受けてくれるんだよな?」と聞いてきた。
満面の笑みで「勿論!」と答えるとアザーンは顔を緩ませ、頼んだぞ、と言った。




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