不運な店主/中編





トストスと歩きながらレレスさんの店へ向かう。私はよく洞窟から漁ってきた物をレレスさんに売ったりしているので、実はレレスさんとは顔見知りなのだ。しかしまぁ、彼の商運の無さに思わず驚いてしまう。看板に脱字があったり、店に警備が必要な事があったりなど本当に気の毒過ぎて笑ってしまう。あんなに運が無いのに此処までやってこれたのは、きっと彼の人柄の良さに有るのだろうな、とそんな事を思っている間に扉の前まで来たようだった。
店の看板を一瞥し、扉をあけると相変わらず人懐こい顔をした店主がいた。心なしか少しやつれているように見える。扉の音を聞いてか「いらっしゃい」と言いながらこちらに視線を向けた。

「こんにちは、レレスさん。…看板は相変わらずそうで安心したよ」

「おおラトちゃん、久しぶりだね。…看板の事については触れないでくれ。で、今回は何を売ってくれるのかい?それとも何か買っていくかい?」

「そうしたい所だけど…今回は止しておくよ」

「?なら一体…あぁ、君はそういえば戦士ギルドの人だったね。君がもしかして依頼を受理してくれたのかい?」

「うんまぁ、ね。で、一体どうしたの?」

そう聞くとレレスさんがため息を吐きながら、実はな、と語ってくれた。
レレスさんが言う事にはどうやら数カ月前から盗賊の被害に遭っているらしく、補充しても盗まれるの繰り返しで、鍵を変えても全く効果が無かったらしい。で、私に一晩店の見張りをして欲しいそうだ。別に断る理由も無いので二つ返事で答えると「ありがとう!頼りにしてるよ!」と心労が溜まった顔で言った。

取り合えず、店の閉店時間頃にまた来るよ、と言って店から出る。最近武器や防具の手入れを怠っていたせいか剣や防具が酷く痛んでいた。戦士たる者が武器の手入れを怠るなんて、とギルドの仲間が居たらきっと怒られていただろう。武器防具を直してもらうために武具店に行き修理してもらう。あんまりにも痛んでいたせいかヴァレルさんに怒られてしまったが、流石(自称だが)鍛冶屋一筋30年といった所か、武器防具は返って来た時には新品のようになっていた。凄いなぁ、と傷一つ無い防具を撫でながら感謝の言葉を述べてお金を払う。
そんなこんなをしている内に日も暮れてきたので、レレスさんの店へと向かう。店に入るとレレスさんは財布を握り締めて「俺は隣の宿屋に居るから、もし解決したらそこに来てくれ」と言うと足早に出て行った。


***

「……ふぁー」

思わず出た欠伸を途中で手で遮る。店の警備をしてから早3時間といったところか、未だ何も起きておらず暇で仕方がない。先程から店に有る本など勝手に読んでみているのだが、いい加減飽きてきた。本を元の位置に戻し、話し相手がてらドレモラ・マルキナズを呼び寄せる。赤い霧が晴れると同時に女性のドレモラが立っていた。

「主様、どうなされましたか?」

「寂しくてね…つい呼んじゃった」

そういうとマルキナズは周りを見渡し、「暇だったんですね」と確信をついてきた。全く、長く一緒にいるせいか私の事を良く分かっている。はぁ、とため息を吐き遠くを見ながら「昔は寂しかったから呼んだ、とか頼りにしている、とか言ったら『あ、主さまああぁ!!』と感激してくれたのにね。冷たくなっちゃって」と言うとマルキナズは微笑みながら「主様に対する忠誠心は昔よりも深くなってますよ」と言ってきた。

次の瞬間、ラトが思っても無い返しに感激しながら、体を震わせ「マ、マルキナズうぅぅ!!」とマルキナズに飛びついたのはいうまでもない。
それと同時刻、扉からカチャリ…と不気味な音が鳴り出したのを二人はまだ知らない。

To be continueb…



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