何者かが、侵入した。
そう理解するのに時間は掛からなかった。すぐさま何かが落ちてきたと思われる場所に、偵察がてらセンチネルを数体行かせる。そして数分後、センチネルから送られてきた映像には、多種の生命体が見られた。珍しい、と思わず瞼が上がる。が、脅威になりうる場合を考えると消してしまった方が良いのかもしれない。
「どうします?殲滅しておきますか?」
そうギルに判断を仰げば、私の周りを数回周り「今はまだ様子見、としておきましょう」と何故か機嫌良さげに言った。そして『人類』という生命体が映っている映像を何度もリプレイして見ている。私と同じような容姿をした種族だ。(というより、私「が」同じような容姿をしているのだが)
「これが人間、ですか」
「ええ、あなたのモデルでもある種族ですよ」
「これが、」
フォアランナー達が選んだ種族ですか、という言葉は呑み込んでおいた。きっとあの方達にも何か考えがあって選び、私のモデルにもしたのだろう。私にとっては左程興味がないことだ、と若干興奮気味のギルを横目で見つつ思った。
ギルが先程から流している映像から一度目を離し、違う映像を見る。
「では私は遺跡の点検にでも行ってきます」
「そうですか。もし何かに合っても無理はしないで下さいよ」
「分かってます」
そう言ってセンチネルを数匹引き連れてワープをする。ふ、とリプレイされている映像を見ると、『人類』が血を流しながら喘ぎ、動かなくなっていた。脆い生き物だ、と思うと同時に、黄色い光が体を包んだ。
何かが侵入したと言っても、私の行動が変わるわけでもなく何時も通り物事を進めていく…予定だった。
予定が狂った理由は簡単な事だ。今、目の前にあるのは人類の死体ばかり。大方先程の多種の生命体とやりあった結果なのだろう。その事を証明するかのように他の種の死体も散らばっていた。と、いっても圧倒的に人類の死体の方が多かったが。
ぐ、っと目の前にある死体の腕を持ち上げる。生気を持ってない人間は酷く重たく、虚ろな目で空を見ていた。
私はふう、と一息吐くとギルに連絡をつなげる。
「ギル、聞こえますか。仕事が増えました。」
「おや、何があったんです?」
「生命体の死体が散らばってます。…今から処理します。そちらに戻るのは少々遅れますね」
「ふむ…分かりました。戦闘は控えるようにお願いしますよ。」
「分かってますよ。ではまた」
通信を切り、再度目を死体に向ける。処理すると決まれば話は早い。まず肢体を取り、そして焼却するのが良いだろう。
自分と同じ姿をしたものをバラバラにするというのはいささか気が引けた。が、汚染の可能性を考慮するとやらなければならない事だ。仕方がない、と自分に言い聞かせ作業に取り掛かろうとする。
センチネル達にも指示を出すと、早速取りかかろうと動き出した。ウウウ、と機械音が鳴りだすと中心が赤く照りだした。そのまま熱で肢体を焼き切るつもりなのだろう。
そして焼き切ろうとした瞬間、センチネルに向かって何かが山なりに飛んできた。
思わず目が点になる。そして何かを判断したと同時に爆風が襲った。咄嗟に腕でガードするが、近すぎたせいか若干ダメージが被った。やはりセンチネルに飛んできたのは爆発物の類だったか。
センチネルからはギギギ、と断末魔を上げ、宙から崩れ落ちた。爆発物が投げられてきた方向を見、何かが来る事を予想して身構える。が、土煙が立ちあがっていて前が見通せなかった。もう一体のセンチネルはその方向に向かって攻撃態勢で構えている。
突如身構えている方向からとぎれ気味な声が聞こえてきた。その声は苦しそうに呻くと、怒りが籠った声で「さわ…る…な…!!」と叫んだ。
その叫び声が聞こえると同時に、砂煙が落ち着いてきた。そこに居たのは脇腹辺りを抑えながら、木にもたれかかっている『人類』だった。その手には銃が握られており、こちらに焦点をあわせながら、ふー、ふー、とまるで猫が威嚇するかのように息を荒上げている。が、『人類』は私を見ると困惑した表情を浮かべた。自分と同じ形をした私が味方かどうか決めかねているのだろう。それを決定付けるように「人…間…!?」と疑惑の声を漏らしている。
不意にセンチネルが『人類』に向かって飛んで行った。私は指示を出してはいない、という事はセンチネルがさっきの指示の延長線と捉えたのか、先程の攻撃によって敵と認知したのか。どちらにせよ、攻撃する気でいる事はすぐに分かった。
『人類』はセンチネルの行動に気が付くとすぐに私から視点を離し、センチネルに向かって数発発砲した。が、センチネルにはそんな攻撃はきくはずもなく直ぐに間合いが詰められた。ヴヴヴ、と唸り中心部が赤く光り出す。
『人類』はしまった、という顔をすると悔しそうに顔を歪め、下唇を噛み、「くそ…!」と憎々しげに声を漏らした。
「センチネル、おやめ」
センチネルの行きすぎた行動を嗜める。折角生きているのだ、むやみに殺す事も無いだろう。まぁ逆に殺してしまっても別段困る事はないのだろうが。
センチネルは納得いかない、とでも言うようにまだ『人類』の周りを何度も旋回している。『人類』は先程の静止の声を聞いてか一層味方かどうか決めかねているようだ。
再度「センチネル、」と呼びかけるとしぶしぶ、といった様子でこちらに戻ってきた。
「お前は…一体何者なんだ…?」
不意に『人類』が口を開いた。その声は疑問、不審、それとわずかな期待が込められたような声色だった。
「・・・02」
簡潔に述べたつもりだったが相手は勿論理解出来て無いらしく、「は…ぁ?」と間の抜けた声が返ってきた。
そしてまた『人類』が何か言おうとしたが、丁度力尽きたのかバタリ、と前のめりに倒れた。
はぁ、また仕事が増えた。と呟くとギルに連絡を繋げるのだった。
To be continueb・・・