ゲームオーバー





 やり過ぎた。
 
 富も力も与えられた人が、次に何を望むかなんて、すこし考えれば分かることだった。どうして神様が姿を出さず、気紛れに奇跡を起こしているのか、今ならなんとなく分かる。手の内をさらけ出した神は弱く、そして過度な力は、身の程を忘れさせてしまうのだ。
 
 「神様を従えようなんて、おこがましいと思わない?」
 「そうでしょうか。神様が、ずっとソバに居てくれたら嬉しくないですか?」
 「話を、そらさないでっ…!?」
 
 私を拘束している木の根が、きつく絞めあがる。圧迫感に堪らずえづく私の姿を、魔王は満足そうに笑った。
 
 富も力も、私は魔王に与えすぎたのだ。世界征服が終わって、そこで終わっておけば良かったものを、何となく毎度毎度顔を出して――もっといいスコア、狙いましょう、と熱っぽく言う魔王に付き合ったらこのザマだ。溢れかえった強化パワーに、全て揃ったドラゴンオーブ。気づけば私よりも、力を持っていた。
 
 「はな…して…」
 「苦しかったですか?スミマセン、力のカゲンとか、慣れてないもので」
 
 シュルシュルと音をたてながら、まとわりついていた根が離れていく。
 根が全て戻っていくのを確認し、私は魔王に背を向け部屋から飛び出した。このままでは、帰れなくなる。本能がそう警鐘を鳴らしていた。荒い呼吸の中、ちらりと後ろを見るが、魔王の姿はみえない。よし、これなら逃げれる――
 
 「う、そ」
 
 一瞬にして、頭が真っ暗になる。廊下の角を曲がってすぐあるはずの扉は、ギチギチと唸る程の根が蔓延っていた。
 息切れと、焦りと、絶望が胸の内を潰す。逃げないと、でも、どこに?
 ――この木の根をどかすしか、道はない。1秒も無駄にできないのだと、疲労困憊の体に鞭をうち、根に掴みかかる。もはや自棄だった。うんともすんともいわぬソレに爪をたてれば、木のささくれが刺ささり、血が出た。だがそれでも、爪を立てた。
 
 「こないでっ!」
 
 裏返った自分の声が、廊下に響く。返事はなかったが、確実に近付いてきているのを感じていた。恐怖に歯の根が、ガチガチと震える。
 
 「まるで家に迷いこんだ猫ですな?」
 
 クツクツと喉を鳴らして笑う魔王が、一歩、また一歩と歩みを進める。薄暗い闇の中でも、赤い瞳はハッキリと浮かび上がっていた。一度目が合えば、もう離すことはできない。
 
 あれ、わたし、なんでこんなところにいるんだっけ――?
 
 
 「さぁ、帰りましょう。破壊神さま」

 気づけば優しく引き起こしてくれる手に引かれ、木の根の蔓延るソコから離れていく。何か、大事な何かを忘れているような気がして、振り返る。
 
 「どうかしましたかな?」
 「…ううん、何か、大事なこと忘れているような、気がして…」
 「…きっと、疲れがでているのでしょう」
 「そう、なのかな…」
 
 行きましょう、と魔王が歩きだす。握られた手がズキズキと、訴えかけるように痛かった。
 
 


ツイッターに置いたものを少しだけ手直して載せました

魔王っぽい魔王さまを書きたかった…







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