まなざしで彩られた安らぎ


――〽ゆうや〜け こやけ〜の あかと〜ん〜ぼ〜

赤い空に響く下手な歌声は、道行く人にも届いているのだろう。わたし達を振り返っては、面白おかしく笑って過ぎていく。
この時間帯が、この季節の中で一番好きだ。たとえどんなに暑くたって、この空を見上げれば何となく鬱々とした気持ちは晴れていくように感じる。

ただ黙ってわたしの隣を歩く銀時の横顔とその目立つ銀髪は、ひどく綺麗に見えた。

次第に小さくなって途中で途切れたわたしの歌声に気付いて、彼が笑う。

「なに、もう歌わないの」
「もういいの」
「へぇ。そうかい」
「うん、もういいの」

気は済んだから。徐々に落ちていく日が、辺りを紺色に染め上げていった。橙色と紺色の混色を生み出す空を見上げて、今日一日がまた終わっていくのだと理解する。途端、あんなに晴々としていた気持ちは薄れていき、そうしてわたしはまたいつものわたしに戻るのだ。
あの瞬間だけが、わたしが子供に還れる唯一の時間であるのを、わたしも隣を歩く銀時もわかっていた。

「もう終わり」

小さく呟く声は、誰の耳に届くのか。恐らく、隣の彼には届いたかな。あぁ、でも、届かなくても良かったかもしれない。
終わりを迎える子供のわたしが泣き出した。嗚呼、畜生。何も考えなくていい時代なんて、とっくの昔に終わっていたじゃないか。

「また明日が来るだろ」
「明日のわたしは、今のわたしとは違うよ」
「違わねぇよ。お前はお前だろ」

鈍く光る輝きを、わたしは持っていない。だけど、この人はしっかりとその胸に抱いて、明日を待つのだ。
わたしなんかとは、全然違う。

「銀時が夕焼けなら、わたしは夜だよ」

意味のない言葉を呟けば、銀時がわたしの手を握って笑った。

「お前に飲まれるなら俺はそれでもいいよ」

あんなに泣いていた子供のわたしが、ピタリと泣き止んだのがわかる。そっか、なんて呟いて。銀時の手を握り返した。

――〽ゆうや〜けこやけ〜の あかと〜んぼ〜

今度は濃紺の空に、わたしの歌声が響いていた。


title:まばたき


20180720


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