大人の時間
ぬいぐるみを手放せないわたしを、銀時が呆れたように笑う。「ガキクセェ」なんて毒吐くその口にムッと顔を顰めれば、それを見てまた銀時が面白おかしく笑った。
「二人で寝るのにそんなもん抱いて寝る女いるかよ」
「いるじゃん、ここに」
「お前だけだバカ垂れ」
この男はすぐわたしのことを小馬鹿にする。左腕に抱えたぬいぐるみを力強く抱きしめた。
「この子は離せないの」
「へぇへぇそうかい」
多分、否、間違いなく馬鹿にされてるんだろうけど。もうなんだっていい、わたしはこの子を抱いて寝るのだ。そして愛しい人の腕に抱き締められて、心地よい夢を見たいのだ。
「子供でいい」
「ふぅん?」
「ぬいぐるみを抱くのが子供なら、子供のままでいいよ。わたしは」
へぇーそう。興味が無いのを丸わかりな返事で、わたしに覆い被さる銀時をしっかりと見つめる。臙脂色の瞳の中に確かにある欲の炎は、それでも尚消え去ることはしなかった。
「別に名前チャンが子供のままだろうとなんだろうと、俺にとっちゃどうでもいい事なんですけどね」
「うん」
「コイツがいると、お前を抱けないわけよ」
――だから、コイツはちょっとお預けな。
わたしの腕からぬいぐるみを奪い去って、隣に優しく置いてくれる。そんな事を言う割にわたしの隣にぬいぐるみを置いてくれるこの人は、なんだかんだわたしに甘いのを知っていた。
「こっからは、大人の名前チャンを見せて頂戴よ」
20180720