どうせなら 忘れてくれたほうが よかった


――「どこへいこうが私の勝手でしょう?」
後ろで苦言を呈す銀時なんて知らない。そう思って家を飛び出したの。

暫くどうしてやろうかな、なんてどうしようもない考えだったの。浅はかでしょう?だって、あの場所しかわたしの帰る場所なんてないんだから。
でも、もうそれでもいいの。人生どうにだって、なるものよ。

いいわ、別に他の人に何をされたって。どうされたって関係なかったの。だから、そこら辺のおじさんに声をかけて悪い子になってみようかな。なんて思ったりして(そんな意気地なんてないんだけど)。

だって。だってね?
彼だって勝手に家を飛び出すときはあるんだもの。「わたしはダメ」なんて、そんなのってあんまりだと思わない?

――どうせなら、飛び出したまま帰らないで。銀時がわたしのことを何もかも忘れてしまうまで、どこかへいってやりたいと思ったの。

「あー……もう、どこいったのかと思った」
「へ?」
「へ?じゃねぇよ、探し回ったんだぞコノヤロー」

どうして。……どうしてどうして、どうして!
嗚呼、神さま!こんなのってあんまりだわ!

後ろから抱きしめられる温かさは間違いなく銀時のもので。
少なからず心が跳ね上がって、息を切らしているのがわかったの。走り回ってまで、わたしのことを探してくれたことが嬉しくて。

だけれど、わたし、どうしようもないことを考えていたのよ。本当よ。
だからこそ、彼の行動がわたしには、辛すぎて。

(いつだって彼はわたしを捕まえて離さないの)


Title:星葬


加筆修正前2008
加筆修正後20180723


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