みつあみ


最近、毛髪の量が増えてきた気がする。雑多に伸ばし続けた髪は量も増え、毛先はよく見ると傷んでいるようにも思う。
だけど、まだ切るには勿体ない気がして。もう少し伸ばしていたい。それで、伸ばしてから一気にバッサリと切りたいのだ。変な意地と面倒くさがりな性格が災いしていた。うーん、女としてこの性格はどうなものだろうか。

風呂上がり。鏡に映る自分を見ながら、ドライヤーをする。
このドライヤーの時間も、髪の長さと量に伴って長くなるのだ。最近はめっきり寒くなってきているのもあって、これだけで正直湯冷めしそうである。夏場ならドライヤーの風で汗だくだ。そういう意味では、冬場はマシな方だろうか。――いいや、マシじゃないな。このエアコンもない万事屋じゃマシじゃない。夏もマシじゃないけど。どっちも嫌。これが本音だ。

女というのは面倒くさい。寝るのにも時間がかかる。寝る前の事前準備に時間がかかるのだ。髪の手入れもさることながら――わたし自身はサボりまくっているのだが――、肌の手入れも欠かさなくてはいけない。
歳を追うごとに肌年齢が気になるようになってくるのである。若い頃からちゃんとしてれば、こんなこと気にすることもないのかもしれないが。
如何せん、わたしはズボラなのである。

「いつまでやってんの」
「あ、銀ちゃん」
「湯冷めすんぞ」
「いいところに来たね銀ちゃん」
「あれ?俺の言葉聞こえてない?」

ひょっこりと現れた銀時に、ヘアゴムを二本突き出す。わたしの行動に眉根を寄せて、ヘアゴムとわたしの顔を交互に見た彼が「これは?」と聞いてきた。

「みつあみして」
「は〜?なんで」
「髪の毛爆発しちゃう」
「意味がわかんねぇんだけど」
「最近髪の量が増えてきてね。だから、みつあみして寝ようかなって思うんだけど」
「それで?」
「みつあみめんどくさいからやって」

何度も言うが、わたしはズボラなのである。自分で決めたことではあるが、めんどくさいものはめんどくさいのだ。
みつあみもできないのか、と聞かれると答えは否だ。みつあみができないほど不器用さんな人間ではない。

「みつあみくらい自分でやりなさいよ」
「めんどくさい」
「知らねーよ!俺もめんどくせーよ!」
「いいじゃん、銀ちゃん器用でしょ」

「はい」と突き出していたヘアゴムを無理やり銀時に渡して、彼に背を向ける。ぶつくさ小言を漏らしているが、そんなことは些末なものなので気にしないのである。鋼の心。これが何よりも大事なのだ。
大きな溜息が後ろから聞こえてきたものの、すぐに髪の毛に触れられる感覚がした。なんだかんだこの人は、お願いすればやってくれるのだ。こういうところ、やっぱり好きだなあ。

毛束を二つに分ける感覚、それから少し引っ張られるような感覚に擽ったいような。決して痛くないように丁寧に施されるみつあみに「ふふ」と小さく笑いを漏らせば、「なに」とぶっきら棒に返ってきた。

「銀ちゃんは、優しいね」
「銀さんはいつでも優しいですよお。特にお前には」
「もっと甘やかしてくれていいよ」
「調子乗んじゃねェよ、おバカ」

クン、と少し強めに引っ張られる感覚。でもやっぱり痛くはない。

「ほら、できたぞ」

そう言われて、鏡を見れば、みつあみが二つ。綺麗にぶら下がっている。
「綺麗だね」素直に言葉を漏らせば、「銀さん器用だからな」と軽く返された。本当、手先だけは器用なんだもんなあ。
自分でやるよりも銀時にしてもらった方が今後いいんじゃないだろうか。

「ありがとう、またやってね」
「次はありません」
「えー」

そんなこと言って、またやってくれるの知ってるんだから。



20201218


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