港町からこんにちは
「ママ!久しぶり!!」
「ん?この声は、名前さんじゃないかあ?」
「そうだよー!」
久しぶりに帰ってきた地元。
懐かしい姿を見つけて駆け寄れば、ママは思い切り抱き上げてくれた。
そのままくるくると回ってから地面におろされる。
「相変わらず名前さんは軽いなあ、そんなに軽いと飛ばされてしまいそうだぞお」
「あはは、流石にそれはないから大丈夫。ママも相変わらず元気でよかった!」
「俺は元気だけが取り柄みたいなものだからなあ!あっはっは!」
ママときゃっきゃとはしゃいでいれば、不思議そうな顔でこちらを見ている女の子に気付く。
どこかで見たことあるような……ないような?
「ああ、彼女はあんずさん。夢ノ咲学院のプロデュース科に転校してきた子なんだ」
「あんずさん?あんず、あんず……ああ、もしかして」
「おや、名前さんも覚えていたかあ!」
随分と昔に一度か二度、一緒に遊んだことがある程度の存在だ。
よく覚えていたなぁ、自分。でもまぁ、普通は覚えてないよね。
「ええと、はじめまして……ではないんだけど、たぶん覚えてないよね。名字名前って言います」
「名字さん……?」
「あ、名字好きじゃないから、名前って呼んで!同い年だし。」
「あの、貴女も私の幼馴染なんですか?」
「おさななじみぃ?」
さすがに一、二度遊んだだけの相手を幼馴染とは言わない気がするんだけど。
ちらりとママの方を見れば、ママはからりと笑って見せる。
「幼いあんずさんを知っているんだから、幼馴染といってもおかしくはないだろう?」
「相変わらず無茶苦茶だなぁ……まぁ、昔一緒に遊んだことはあるよ。」
「そう……ですか」
「覚えてなくても仕方ないって!すっごい昔の話だし。それより、せっかく再会できたんだから私とも仲良くしてくれると嬉しいな?」
「あっ、はい!是非お願いします!」
ご丁寧にあんずさんがぺこりと頭を下げる。礼儀正しいいい子じゃん。
「ところで、二人でいたってことはこれから何か用事でもあるの?私邪魔しちゃったかな」
「あ……実は、次のライブの打合せをしに行くところで」
「えっ、はやく言ってよ!もう、ママそういうとこだよ!」
「名前さんに久しぶりに会えたのが嬉しくてついはしゃいでしまったんだよなあ、許してほしい!」
「別に怒ってはないけど!あんずさんに迷惑かけちゃだめじゃん。」
「べっ、別に迷惑とか……」
「ごめんね?ママの相手は大変だと思うけどよろしくお願いします。知ってると思うけど、悪い人ではないからさ!」
あんずさんに軽く頭を下げて、それじゃあまた、とその場を離れる。
ママはまあ……後でも会えるよね。
離れていく二人の背中を見送ってから、自宅への道を歩き始めた。