#1.見覚えのある街並み



何も変わらない日常

朝起きて、学校に行って…

毎日同じことの繰り返し

そんな日々に変化が訪れた

それは何の前触れもない突然の出来事――



ここは…一体…?

目の前に広がるのは澄み切った青い空に青い海。

そして少し先に見えるのは、巨大な球体。

辺りを見回すと色とりどりの店が並んでいる。

どこかアジアを思わせるその場所は初めて訪れた場所だった。

けれど、私はこの風景に見覚えがある。

FFXのルカ?

だけどどうして!?

…夢?

そう、今私が立っているのは、紛れも無く港町ルカの中央広場。

一瞬夢かとも思ったけど夢にしてはやけにリアルで…。

私はついさっきまでの記憶の糸を辿ってみた。

確かに自宅にいて…夕飯を食べ終わったからゲームをしようとプレステに向かっていた。

ゲームというのはもちろんFFXで、プレイデータをロードした途端目の前が真っ白になって…。

!?

まさか…本当にFFXの世界に来てしまった、とでも言うの?

そんな非現実的なこと有る得るわけない!

私は自分にこれは夢だと言い聞かせた。

だけど、私の考えは脆くも崩れ去る。


「おい」


不意に後ろから掛けられた声。

聞き覚えのあるその声に私は恐る恐る振り向いた。


「お前、どこから来た?スピラの住人でもザナルカンドの住人でもないだろう?」


予感は的中。

声を掛けてきた人物は物語の主要キャラ、アーロンだった。

ん?

スピラの住人でもザナルカンドの住人でもない…?


「ど、どうしてそんなことが分かるんですか!?」


このまま黙っていても仕方ない。

とりあえず思ったままの言葉を口に出していた。


「お前の格好を見ればスピラの人間でないことくらい一目瞭然だ。それに、ザナルカンドとスピラの人間の違いは見れば分かる」

「!?」

「どうやら当たりのようだな」


アーロンは私の反応を見て納得したようだった。

思えば、日曜だったせいか服は部屋着のまま…スピラの人から見ても充分不審人物。

さっきから何かと視線を感じるのはこの服のせいかもしれない。

スピラとザナルカンドの人間の違い…それはアーロンが死人でスピラとザナルカンドを行き来出来る存在だから分かる、といったところ…?

そして…テレビを通してでしか見ることの出来なかった人物が目の前にいること。

アーロンの言葉。

それらは、これが夢なんかじゃなく本当に私がFFXの世界に来てしまったことを理解するには充分すぎる要素だった。



「それで、お前はどういう世界から来たんだ?」



考え込んでしまっていた私に再びアーロンが問いかける。

アーロンは私が異世界から来たことを信じている。

それに全く知らない人物でもない。

というか…ここでアーロンに縋らなければ私はこの先どうしたらいいのか分からなくなってしまう。

私の中のは意を決してアーロンに全てを話した。

この世界は私の世界ではゲームというものであること。

そして…これからの未来を知っているということ。

ただ、未来のことは一切話さなかった。



「お前、名前は?」

「…!?…サラ」



唐突に名前を聞き、ベンチから立ち上がるアーロン。

そのあとアーロンは更に私を驚かせることを口走った。



「サラ、俺たちと一緒に来るか?」

「え!?」

「ここで出会ったのも何かの縁だ。それに俺たちと旅をしていれば元の世界に戻れる方法が見つかるかもしれん」

「でもジェ…!」



ジェクトやティーダは…

言いかけて詰まった。

しかし、アーロンは何か察したようにフッと笑って言った。



「本当に知っているんだな。ジェクトはザナルカンドから来たんだ。お前は違うだろう?」



確かに…異世界から来たといってもあの二人とは違う。

帰る方法が見つかるかもしれない…!

ここはアーロンを信じてみよう!



「私、一緒に行く!よろしくお願いします!」



私が言うや否や、アーロンは刀に手をかけた。

話に夢中で気が付かなかったけどスタジアムからは悲鳴が聞こえ、人々が次々と出てくる。

こ、これは…!?

私はゲームを思い出す。

!!

シーモアの自作自演!!



「状況を理解したようだな。…行くぞ!」



アーロンの後を追い私も走り出す。



「アーロン!!ティーダ達には私の本当のこと言わないで!」

「フッ…了解だ」



これから会うであろう、主人公のティーダをはじめとする仲間たち。

彼らには私の真実は知らせない方がいい。

不意にそう思った。

このときの私はただ元の世界に戻ることしか頭になくて。

物語に深く関わることになるなんてこれっぽっちも思っていなかったんだ。



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