crazy about you...
※[think of you...]の続きになっています。
幼馴染から一歩前進。
ずっとずっと近い距離にいたあなたが、もっともっと近く感じるようになった。
これからもこのポジションは誰にも譲らない。
あの夜から数日。
「エレノア、今日ティーダ練習あるんでしょ?まだ起きてこないわよ?」
「んん?」
部屋の外から聞こえたのは母親の声。
私達が付き合いだしたのなんて、親にはすぐバレてしまって。
ティーダは今一人暮らし。
今までは、炊事も全部一人でこなしていたティーダだけどうちの母親の説得でご飯はうちに食べにきている。
朝ごはんをなかなか食べに来ないティーダを起こしに行くのは私の役目。
練習…。
確か8時からだったよね?
時計を見ると9時過ぎている。
「9時!?」
私はガバッとベッドから起き上がる。
着替えるのも忘れて部屋から飛び出すと、お隣さんちに駆け込んだ。
「ティーダ!?ティーダ!?もう9時過ぎてる!!」
「う〜ん…あと5分…」
いまだ夢の中のティーダ。
…こうなったら…。
どすッ
「ぬ!?」
おもいっきり上から跨ってやった。
「ほら!起きてってば!完璧に遅刻だよ?」
「く、苦しい……っ起きるから!」
その言葉を聞いて私はティーダから降りる。
「もう朝からなんなんだよ…」
「だから!9時過ぎてるの!練習8時からなんでしょ?」
「………あ、今日午後練に変わったって言うの忘れてたッス……」
視線を逸らしつつ言うティーダ。
…午後練…?
てことは午前中の練習ないんだ。
「エレノア?…ってその服」
「え?あ…家飛び出してきたからね」
寝たときのまんま。
短パンにキャミ。
「もうちょっと気にしろよな」
「ひゃあ!?」
グイっと腕を引っ張られる。
そしてそのままティーダの隣に横にさせられた。
「何!?もう!!」
「練習午後からだしもう少し寝るッス」
ぎゅーっと抱き締められる。
「ティーダ、暑いんだけど…」
「……」
溜息をつくと私から腕を解き、少し離れるティーダ。
なんか変なこと言ったかな?
ひっついてると暑いのは事実。
だけど急に寂しくなって。
今度は自分からティーダに擦り寄った。
「…エレノアって天然なとこあるよな」
「は!?私、天然なんかじゃないよ!?」
上半身を起こしてティーダに詰め寄る。
ティーダの顔の真横に手をついて、顔はティーダの顔の真上。
「そういうとこも」
「え?んっ…んぅ…っ」
いきなり首に腕が回ってきて顔が引き寄せられた。
この数日で何度もキスはしたけど恥ずかしさだけはなかなか慣れない。
「ふぁ…んんぅ…ぁ…」
ゆっくり唇が離れていく。
瞬間、力が抜けてティーダの首元辺りに顔を埋める。
「エレノア顔真っ赤」
ケラケラ笑うティーダ。
「ティーダがいきなりしてくるからでしょ!?」
「だからそれはエレノアが誘ってきたからッス」
「…私は誘ってないのに…」
ぼそっと言ったのにちゃんと聞こえてたのか、頭をポンポンっと撫でてくれた。
その手がすごく心地良い。
「ねぇ、ティーダ。午後練って何するの?」
「えーと…オレはシュートの練習とか。ポジションによって内容違うッスよ?」
「へぇ…」
「エレノア?」
自主練は何回か見たことあるけど、チーム内の練習は見たことがなかった。
スタジアムで行われてるから一般人は入れない。
入れるのは監督とか選手とかマネージャーくらい。
「…マネージャーになろっかなぁ」
「え!?」
「オリビアさん一人じゃ大変なこともあるんでしょ?」
私がティーダの彼女と勘違いしてしまったオリビアさん。
あれから何度か会ったりしてすっかり仲良くなった。
オリビアさんから規則とかいろいろ教えてもらってる。
「エレノアはダメッス」
「な、なんで!?」
「ダメなものはダメ」
そう言うティーダの表情は真剣で。
ティーダ目当てでマネージャーになりたいんじゃないって言ったら嘘になる。
けど、しっかり仕事をこなせる自信もあるのに。
少しでも一緒にいたいって思っちゃだめなの?
なんだか悲しくなって、ティーダに背を向ける。
「エレノアがマネージャーになったらオレが集中出来ないから」
スッとおなかに手が回ってきて、ティーダの方に引き寄せられた。
背中の密着してるところがやけに熱い。
「どういうこと?」
「エレノアが練習中とかもそばにいたら、こうやってくっつきたくなるだろ?」
「…っ」
耳元で言われると私の心拍数は上昇する一方。
「それに、マネージャーってチーム全体の世話しなきゃだろ?エレノアが他のヤツにドリンクとかタオル渡すの見たくないッス」
「……それって…ヤキモチ?」
くるっとティーダの方に向き直る。
ティーダの顔を見たら自分の顔がニヤけてしょうがない。
「や、ヤキモチ…とは違うだろ!?」
耳まで真っ赤にしてあたふたするティーダがなんだか可愛い。
でもそんなことまで言われたらマネージャーになれないじゃない。
今度は私がぎゅーっと抱きついた。
「じゃあ、マネージャーは諦める。だけど練習以外は一緒にいてよね?」
ティーダの顔を見上げたら、きょとんとしていて。
そしてフッと笑ってティーダは言った。
「そんなの言われなくてもそのつもりッス!」
私のおでこにキスを落とすと、ティーダはベッドから抜け出した。
どうしたのかと思えば、棚の上に置いてあった何かを持って戻ってくる。
「これ、明日のチケット。もう渡しとくな」
差し出されたのは明日の試合のチケット。
私がティーダの彼女になって初めての試合。
「ありがとう!!」
「よし、今度は嬉しそう」
「…もうっ!まだ言ってる。あれ?でも1枚しかないよ?」
手元にあるチケットは1枚のみ。
友達の分は…?
「そこはオレの彼女の特等席にしたッス!だからエレノアのだけ」
「…ティーダ」
友達になんて言い訳すればいいのかなんてどうでもいい。
『オレの彼女の特等席』
その言葉がすごく嬉しい。
「エレノア、おなか空いたから朝ごはん行こう!」
私がチケットを眺めてる間に着替えたのか、ティーダはもう玄関の前。
「あ、待ってったら!」
急いでティーダのところまで駆け寄る。
「起こしに来たのはエレノアなのに。あ!それ失くすなよ?」
「分かってますよーだ!絶対失くさないもん」
私だけの特別な席。
これはティーダの彼女の特権。
これから先、ずっとこの席は私の席だよね?
ねぇ、ティーダ。