※浅葱が乙女チック
※耳元で大好きって言ってきての後の会話
「…そういえば、浅葱って手芸部だったんだろ。」
浅葱が浴槽にお湯をためている間、彼から渡されたペットボトルに入ってる水を飲みながら俺はふと思い出したことを彼に聞いてみた。
「あれ、言いましたっけ?」
「言ってない。木津から聞いた。」
飲み終えたそれを浅葱に渡し、浅葱も一口飲んでから暫く何故か黙り込む。え、そんなに聞かれたくないことだったのか?
「はい。手芸部でしたよ。」
「なに、今の間。いいじゃん手芸部。」
「いえ、ちょっといろいろ思い出しただけです。でも女の子ばっかりでちょっと居づらかったと言いますか。木津先輩とか他の男子部員が居なかったら行かなかったんです。」
あー確かにそれはちょっと分かるかもしれないけど。
まずその整った容姿だと話しかけられたりされそうだし、編み物とか裁縫とか集中するときは堪ったもんじゃないんだろうな。
「けど、うちの高校の手芸部って言ってみたら家庭科部みたいに料理とかお菓子も作ったりするんだろ?」
「顧問の先生が結構ゆるかったんですよね。だからある程度好きにさせてもらってました。」
「俺も木津からクッキー貰って凄い美味しかったの覚えてるんだよ。」
最近、俺の周りの奴らの料理スキルというかお菓子作りの腕とかかなり高い気がするのは何故だろう。バイトの女の子ですら料理あんまりしないとかできない子が多いというのに。そんなことをぼんやりと考えていたら突然浅葱が顔を逸らしているのに気づき、「浅葱?」と彼の名前を呼ぶも返事がない。
え、なに、俺とセックスして気分悪くなったとか?
「浅葱。」
身体を起こしてもう一回彼を呼びながらその肩に触れるも浅葱は「大丈夫です。」というだけで顔を向けてこない。何か隠しているようにも思えて、少し苛立った俺は「何?こっち見ろよ。」と少し声を荒げた。
「……その、照れているだけです。」
「は?何、突然。」
「き…木津先輩に、作ったのが自分だと嘘ついて美津先輩に渡してくださいって頼んでいたので…」
食べて貰って、その感想もまさか数年越しの今聞くなんて。
その時に見えた浅葱の頬は赤く染まっていて、俺も思わず釣られて頬に熱が集まった。な、なんて言ったこいつ…?
確かに木津から渡されたクッキーはもうあまり見た目は覚えてないが本当にお店で売られているものかと思うぐらい美味しくて甘さも少し控えめだったためか食べやすかったのを覚えている。何故か木津にしては可愛いラッピングしているなとは思ったし、それに何故か執拗なまで「感想は?」と聞かれたがまさか作った相手が浅葱だったとは。
「お前…本当ズルい。」
二人それぞれ真っ赤な顔を隠しているこの光景は第三者が見れば異様だと思うが、口から出てきたその言葉に浅葱はようやくこちらに顔を向けてきた。まだ顔が赤い。釣られてまた赤くなるからやめてほしい。
「大体、直接渡して来たらいいだろ、クッキーなんて。」
「そんなの無理ですよ!木津先輩にお願いするだけでもう限界でした。」
バレンタインの時とか女の子たちはああいう死にそうな緊張と闘いながら渡してくれているのかと知ることが出来ましたし、と少し目を伏せて話す浅葱。
「僕、美津さんを好きになってからいろいろなことを知ることが出来たんですよ。」
耳まで真っ赤にして何を言っているんだこいつは、と思ったが、こうも純粋に気持ちを向けられてしまうと俺も何もできない。なんだかまた恥ずかしさがこみ上げてきて、俺は浅葱のギュッと抱き着いてその胸に頭を埋めた。浅葱もまた俺の背中に腕を回してくる。
「…もう一回クッキー作れよ。」
「う…、それは…渡せるように頑張ります。」
「絶対食べるから。」
そう言うと、浅葱はそっと俺の顔を上げてから唇と頬に軽くキスを落とし、また恥ずかしさを隠すようにしがみついてきた。何なんだこいつは。
お風呂のお湯が溜まったことを知らせる音が聞こえ、浅葱にそれを伝えようとしたがそういえばこの後二人でお風呂に入るんだよな、なんて思い出した俺は途端にまた恥ずかしさやら嬉しさが込みあがり、喉元まで出かかっていた言葉を飲み込んだ。
置き去りの純情
あとがき。
浅葱は書けば書くほど少女漫画のヒロインみたいになってくる。
それとこの段階ではまだ『美津先輩』って呼ばれていたことに気付いていない美津。
(後で思い返したときに恥ずか死ぬパターン。)
毒入り苺。