今日は広島に行く!
バスケットのインターハイだ。
湘北バスケ部は開会式で前日入りしている。
「紗江おはよー!」
「美咲ー!」
夏休みになってから初めて会う美咲はなんだか楽しそうだ。
新幹線に乗り込むと、徳ちゃんたちも乗っていた。
「紗江ちゃん!」
「徳ちゃーん!」
「いよいよだな」
徳ちゃんが"炎の男・三っちゃん"の旗を感慨深そうに抱き締めている。
「堀田張り切ってんじゃん」
「お前らもな」
わたしも少しそわそわしている。
三っちゃんの気持ちを知ったあの日からまだ三っちゃんに会っていない。
「紗江も変だね?何かあったね?」
ずずい、と美咲が顔を寄せてくる。
「べ、別に」
「嘘吐いても無駄」
美咲は目をキラキラと輝かせながら、急かしてくる。
「み、三っちゃんと花火した」
「えええ!」
美咲は驚いてわたしの肩を揺さぶる。
「やっぱり三井、紗江のこと!」
「うん、同じ気持ちだった」
そう告げると、美咲は頬を赤く染めて、目を丸くした。
「やーだー!!!!なになに、二人は付き合っちゃったんだね!?ついに!」
・・・付き合う?
わたしと三っちゃんが?
わたしの頭の中に浮かぶのはたくさんの疑問符。
確かにお互いの気持ちを伝えて、両想いだとわかった。
けれど、付き合おうとかどうとか、そんな話はしなかった。
「付き合ってない」
「はああああ!?」
いや意味わからん、と吐き捨てて美咲は眉間に皺を寄せた。
「両想いなのに?何で?」
「何でって・・・」
三っちゃんはバスケがあるし、わたしは受験生だし。
(両想いってわかっただけじゃダメなのかな?)
広島に着いた。
インターハイの会場に行くと、多勢の観客がいる。
緒戦はちょっとガラの悪そうな観客が多い豊玉高校。
湘北側の応援席に座ると、豊玉の応援席の方から大きな声がした。
「うおーっ!!湘北ーッ!!」
駅から徳ちゃんたちと別々に来たけれど、まさかそっちに行ってたとは。
案の定、豊玉の観客から追い回されていた。
「何やってんの堀田は」
「さすが徳ちゃん・・・!」
そのうちに桜木軍団や晴子ちゃんたちがやって来た。
「美咲さん紗江さんー!」
「晴子ちゃんおはよー!一緒に応援しよー」
「はいっ」
「あっ、出てきた!湘北!」
湘北がコートに入ると、豊玉応援席からものすごいヤジが飛ぶ。
目立つ桜木くんに対してのようだった。
「桜木くん人気者だね〜」
「あの頭だよねやっぱり」
視線を移すと、宮城くんたちと笑っている三っちゃんが目に入った。
そんなに緊張していないみたいだ。
「桜木君ガンバレーッ」
突然晴子ちゃんが叫ぶと、桜木くんは嬉しそうにしていた。
試合開始早々は完全に豊玉のペース。
湘北はなかなか流れを掴めないでいた。
そこに桜木くんに替わって安田くんが投入される。
「あ、安田くん入ったら雰囲気変わったね」
いつもの雰囲気に戻って来たかと思えば、流川くんが倒されてしまった。
「流川君!」
試合がどんどん荒れて行く。
皆イライラしてるようだった。
前半が終了すると、応援席のわたしたちはどっと溜息を吐いた。
「何か落ち着かない」
「何なのよー」
後半には流川君が戻ってきた。
「流川君の顔!」
心配そうに見つめる晴子ちゃんを見ると少し泣きそうになった。
流川くんの親衛隊も悲鳴を上げていたけれど、試合が進むにつれ徐々に声援に変わって行く。
片目が見えない状態で彼は大活躍している。
それから桜木くんも単独合宿で習得したというジャンプシュートを決めて、応援席も熱くなる。
「あ、三井!」
赤木くんから三っちゃんにパスが通ると、徳ちゃんが大きな声で叫ぶ。
「待ってました三っちゃんーっ!!」
どフリーで外すわけない。
綺麗なフォームだった。
あれは入ると確信してる顔だ。
わたしたちが歓声を上げると、三っちゃんがこっちを見た気がした。
いや、見ている。
彼はガッツポーズした手を、そのままこちらに伸ばした。
「三っちゃん!」
「やっと決めたね三井ー!」
わたしは興奮して美咲の手を握った。
二人とも手汗びっしょりだ。
「徳ちゃん!もっとちゃんと旗振って!」
「お、おう!」
豊玉がタイムアウトを取ると、ベンチは荒れている様子だ。
「なんだ内紛か?」
「荒れてるね」
湘北ベンチを見ると、みんな落ち着いているようだった。
タイムアウトが終わって選手がコートに入って行く中、三っちゃんが振り返る。
目が合って、わたしは一生懸命手を振った。
三っちゃんは緩く笑って、コートに戻って行く。
「紗江、三井かっこいいじゃん」
「うん、知ってる」
「このやろー」
美咲はわたしの手を握ったままぶんぶんと振る。
本当にかっこいい。
やっぱりバスケットをする三っちゃんはたまらなくかっこいい。
かっこいいところを見せてくれると言ってくれたことを思い出すと、また嬉しくなって頬が緩んだ。
試合は5点差で湘北が勝った。
「三っちゃああああん!」
部員が控え室に戻っていく中、三っちゃんが旗を振る徳ちゃんに気が付いて手を上げる。
その視線がこちらに流れてきて、わたしは大きく手を振った。
三っちゃんも嬉しそうに手を振り返してくれた。
湘北バスケ部が全国制覇に一歩、近づいた。
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