三井くんが退院した!
と木暮くんから聞いた。
「ねえ紗江、バスケ部ちょっと見に行ってみない?」
「え!」
「なんかほら、木暮が言ってたじゃん、今年は期待できそうって」
「ああ、」
美咲からの誘いに乗り、放課後バスケ部の練習を見に行くことにした。
バスケをする三井くんが見れるかもしれないと期待半分、復帰早々無理はできないんだろうなと心配半分。
体育館に着くと、一年生と上級生でゲームをしているようだった。
「赤木コラー!俺にパスよこせっ」
「うるせー三井!」
ゲーム中にも関わらず三井くんはチームメイトと喧嘩しているようだ。
「あの子デカくね?」
美咲が三井くんと喧嘩している子を見て驚いている。
「喧嘩してる子、紗江好きそう」
わたしは驚いて美咲を見た。
「あ、もしかしてもう好きとか?」
ニコニコと笑うその顔を見たら嘘吐けなくなって、つられて笑った。
三井くんはスリーポイントが得意みたいだ。
何度か決めていて、決まると上げたままの右手をグッと握る。
「美咲、どうしよ、かっこよすぎる」
わたしは堪らなくなって美咲をぎゅっと抱き締めた。


それから数日経って、三井くんの怪我が再発したと木暮くんから聞いた。
インターハイの県予選には間に合いそうもないようで、部活に姿を現さなくなったそうだ。




夏休みが終わり二学期が始まる。
三井くんは夏休み一度も部活に来なかったという。
そして、徳ちゃんは初日から早速お弁当を忘れて、わたしはまた10組へ向かった。
久し振りに行く10組の教室。
三井くんの姿も暫く見ていない。
学校には来ているのかな?
「おい、三井。お前バスケ部辞めたのか?」
「あ?」
「ちょっと屋上来いや」
徳ちゃんが三井くんを屋上に連れて行くところを丁度見掛けて、こっそり後をつけた。
屋上では徳ちゃんが喧嘩を売り始める。
「何か最近のお前気に入らねえなあ」
三井くんをジロジロと見ながら話す徳ちゃんを見て、どうしよう、とあたふたしていると三井くんが徳ちゃんにパンチを喰らわせた。
怪我をしてバスケを諦めた彼はイライラしていたんだろう。
そんな中クラスの不良に喧嘩売られたもんだから、つい買ってしまったのだと思う。
吹っ飛ばされた徳ちゃんはカッコつけながら言った。
「なかなかいいパンチ持ってんな」
「何だお前大したことねーな」
そんなやりとりの後二人は笑った。
「徳ちゃん!」
「お、紗江ちゃん」
「またお弁当忘れてるよ!」
「サンキュー」
恥ずかしくて三井くんの方は見れずに、徳ちゃんだけを見ていた。
「あー、堀田の幼馴染じゃねーか」
三井くんがそう言って、俯くわたしの顔を覗き込んだ。
「せっかくだし一緒に昼飯食おうぜ」
「え!」
「嫌なのかよ」
そう問われて首を横にブンブンと振ると、三井くんは笑いながらわたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。
心臓の音がうるさくて、苦しい。
わたしはお弁当を取りに教室へ戻ると、美咲に呼び止められる。
「どこ行くのー」
「徳ちゃんとこで食べてくる」
美咲は何か察したように、ニヤリと笑った。


それから、徳ちゃんを介さずとも、三井くんと会えば話をしたり挨拶をするようになった。
「紗江ちゃんこれから帰りか」
「徳ちゃん、と三井くん!」
放課後、美咲はまたバスケ部を見に行くというのでわたしは一人で帰ることにした。
後ろから声を掛けられ振り返ると三井くんと徳ちゃんがいた。
「これから三っちゃんと帰るんだけどよ、紗江ちゃんも一緒に帰ろうぜ」
「え、いいの?」
「行くぞー」
先に行く三井くんに着いて後を急いだ。
「徳ちゃん、いつから三っちゃん呼びなの?」
「最近だな」
「徳男に呼ばれると変な感じだな」
三井くんも徳ちゃんを名前で呼んでいて、やはりあの一発のパンチで二人が友達になったことが伺えた。
「三井くんバスケ部やめたの?」
「あ?」
「一度練習見に行ったことあるけど、すごくかっこよかったから」
三井くんは恥ずかしそうに俯いて、それから溜息を吐いた。
「あ、紗江ちゃんも三っちゃんて呼べよ」
「え!」
「三井くん、なんて固いじゃねーか」
「いいの?」
わたしが三井くんの方を見ると、彼は笑いながら言った。
「俺は別にいいけどよー」
「三っちゃん」
「なんだよ」
「三っちゃーん」
「紗江はうるせーなー」
急に名前で呼ばれて、頬が緩む。
また心臓がとくん、と大きく鳴った。




「紗江、最近三井くんと仲いいじゃん」
「え!そんなことないよ」
美咲に言われて否定する。
「徳ちゃんの友達だから」
「・・・何でバスケ部行かないんだろ、木暮寂しがってたよ」
三っちゃんはもう、バスケを諦めている。
一緒にいてもバスケの話はしないけど、何となくそう感じていた。
かっこよかったって言った時、溜息吐いていたのを忘れない。
中学から一緒のバスケ部の仲間たちも既に三っちゃんから離れていたし、本当にバスケを辞めてしまうのかな。
自信満々でスリーポイントを決める三っちゃんは本当にかっこよかったから少し勿体無いと思った。




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