「なんか雪降りそうじゃないー」
「いやいや降るわけないでしょ」
「でも寒すぎるー」
冬休み直前の教室は、とても静かだ。
終業式の後、教室のストーブの前で美咲と暖をとりながら、窓の外を眺めていた。
「ついに明日だね」
「うん」
明日からバスケットの選抜大会が始まる。
「木暮がこの前、息抜きにバスケ部に顔出したらしいんだけど」
木暮くんと相変わらずちゃんと交流があるんだなあと考えていると、美咲はずずいと顔を近付けてくる。
「三井のシュートの精度がやばいって」
「毎日早朝からやってるからね」
三っちゃんはここで目立って、大学の推薦取らないとだもんね。
「試合見に行きたくてさー」
「わかる」
三っちゃんの高校最後の大会を見たい。
「わたしたち毎日頑張ってるよねー」
「息抜き行っとく?」
「行かないと勉強手につかなくなりそー」
結局バスケにハマってしまっているわたしたちは、息抜きという名目で冬の選抜大会の観戦に行くことにした。


「おい紗江ー」
ホームルームが終わって帰り支度をしていると、教室の入り口の方から呼ぶ声がした。
そこには三っちゃんがいて、わたしは駆け寄った。
「どしたのー」
「明日から選抜始まるからよー、パワーもらっとこうと思って」
「なにそれ」
「ん、」
三っちゃんが右手を差し出した。
確実にシュートを決めてくれる、頼りになる大きな手だ。
わたしはその手を掴んで、もう片方の手で包んだ。
「三っちゃんが大活躍しますように」
わたしがそう言うと、三っちゃんは嬉しそうに微笑む。
話によると、インターハイに行ったことが大きな糧になって、後輩はぐんぐん伸びていて、チームとしての仕上がりも良いとのこと。
インターハイで怪我をしてリハビリしていた桜木くんもギリギリ間に合って、無理はできないけれど復帰したんだそうだ。
トーナメントも運の良い組み合わせだと聞いた。
「見に行くよ」
「勉強しなくていいのかよ」
「三っちゃんの高校最後の大会見れないのは一生後悔するから」
三っちゃんは何も言わずに、握った右手に力を込める。
「オレ死ぬ気でやる」
「倒れないでよ」
「体力は前よりついたはずだぜ、走り込んでるからな」
「なかなか自信ありますね」
「お前が来てくれるなら、尚更」
彼は自信たっぷりに笑う。
予選で神奈川の強豪校をなぎ倒して来たんだから、明るい未来が待っていると信じて今はひた走るしかないね。




12月23日から冬の選抜大会が始まった。
わたしは美咲と木暮くん、赤木くんとともに連日東京まで観戦に行った。
皆して受験勉強の息抜きだと気休めを言いながら、バスケ部の健闘を祈った。
湘北シューティングガードの三っちゃんは準々決勝で35得点を挙げた。
どれも綺麗なフォームで、シュートを打つたびに"入る"と確信できるものばかりだった。
体力も本当に以前より少しついていたみたいで、最後まで走り抜く姿は本当にかっこよかった。
徳ちゃんも毎度の如く、旗を振りながら号泣していた。
復帰直後の桜木くんも大事な場面で活躍していたし、何より全日本合宿に呼ばれた流川くんの活躍は素人目に見てもすごいものだった。
湘北バスケ部はベスト8で冬の選抜大会を終えた。




君の手を握れば


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