冬休みが終わり、センター試験が近づく。
わたしたちは相変わらず勉強漬けの毎日で、時々押し潰されそうになる。
そんな中、朗報が届いた。


「おい紗江ー!!!!」
授業直後、受験生ばかりの静かな教室に響き渡る三っちゃんの声が、扉を勢いよく開ける音とともに響いた。
わたしは驚いて固まり、隣にいた美咲は大口開けて笑っている。
「あっはは、三井どうした」
「ばかだなあ、もう」
わたしはすぐにそちらへ向かい、彼を廊下へ引っ張り出した。
「どしたの!」
「わ、わりぃ、この教室静かだな」
「うちのクラス殆どが受験生だから」
「そ、そうだよな」
「で、どうしたの?」
わたしは顔を赤くして恥ずかしがっている三っちゃんに尋ねる。
「さっき職員室呼ばれてよ、大学から声掛かったって」
「えええええええ!」
先程の三っちゃんの声より大きな声が廊下に響いてしまった。
それが聞こえたのか美咲も廊下へ飛び出して来た。
「どうした!?」
「三っちゃん大学からスカウト来たって!」
「本当!?」
「おう!やべーまじやべー死ぬほどうれしー」
わたしたちは三人肩を組んで飛び上がった。
三っちゃんの頑張りが届いたんだね。
面接は再来週、スポーツのスカウトだから簡単なもので、殆ど入学決定だという。
「まさかうちらより先に決まるとはねー」
「ほんとー」
「ね、2年も勉強サボってたのにねー」
「う、うるせーよ!オレはバスケで入学すんだよ」
美咲はそんな悪態をつきながらも嬉しそうにしている。
「三井に負けないようにうちらも頑張ろ!」
「おー、お前らなら大丈夫だろ」
三っちゃんは眉間の皺を緩ませて、わたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。




やがてセンター試験が終わり、三っちゃんの面接も終わり、わたしも志望校の試験を全て終え、二月も半ばに差し掛かっていた。
三年生はこの時期学校にはほとんど行っていない。
そんな中、美咲に誘われて近所の喫茶店で落ち合った。
「やっと解放〜」
「まだまだ、結果わかってからでしょ」
わたしが釘をさすと美咲は得意げに笑った。
「わたしは自信あるー」
結果ももうすぐわかるけれど、わたしが気にしているのは三っちゃんのことだ。
冬の選抜が終わってからもバスケ漬けの日々は変わらず、面接が近づくと先生に付きっきりで指導をしてもらったという。
「そういえば三井、単位が怪しいらしくて卒業まで補習必要らしいよ」
「何それ!」
「木暮から聞いたー」
(くっ、木暮くんめ、わたしより何でも知っているじゃないか!)
「そういえば木暮くんとどうなってんの?仲良すぎない?」
わたしは単純に、二人の仲が気になって尋ねる。
「この間フラれた」
「は!?」
美咲はホットティーに口をつけながら、淡々と話す。
「今は考えらんないって」
「でしょうね、あんた何でこんな時期に・・・」
「時期の問題じゃなくって、」
カップをゆっくりと置くと、美咲は目を細めて笑った。
「恋愛対象として考えられないってこと」
その表情は、6年間ずっと傍にいたわたしでも初めて見た優しい笑みだった。
美咲が木暮くんのことを考える時って、いつもこんな顔してたのかな。
でも悲しくはないようで、彼女は燃えているようだ。
「わたし諦めないし木暮と同じ大学絶対入るんだ」
「あれ、志望校一緒だったっけ」
「そうだよ、だから頑張ったんだもん」
わたしはそこまで考えていなかった。
三っちゃんの大学はどこなんだろう?
県外に行ったら会えなくなってしまう。
急に寂しくなってきて涙が溢れてきた。
「紗江どした」
「卒業したら三っちゃんと離ればなれだなって」
「そういえば三井どこの大学なんだろ?」
今度会ったら聞かなくちゃ。
「あ、雪降って来た」
窓の外を見るとチラチラと雪が降っている。
わたしたちの高校生活が終わろうとしている。




水面から息継ぎ


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