二年生になった。
二年生になると、三っちゃんと徳ちゃんは更に不良街道まっしぐら。
生意気そうな下級生を呼び出してはシメあげていた。
不良仲間もいつの間にか少し増えてるし、三っちゃんはその集団のリーダーのようになっていた。
そのうち他校の不良とつるむようになって、学校にもあまり来なくなった二人とは関わることが少なくなった。
家が近所だから徳ちゃんとは時々顔を合わせたけれど、三っちゃんと話すことはほとんどなくなった。
わたしは美咲に付き合って、三っちゃんのいなくなったバスケ部の練習を時々見学に行く。
「紗江最近元気ないじゃん」
「そうかなー」
「三井も堀田も最近たまにしか学校来てないもんね」
美咲に言われて、溜息を吐いた。
「なんか昨日繁華街で他校の不良といたらしいけど」
「うん」
「三井、煙草吸ってるんじゃないかって噂」
「え!」
それを聞いて、もう本当にバスケットを捨てたんだ、と思った。
それでも、入学式の日に一目惚れした三っちゃんを、初めて話した時笑ってくれた三っちゃんを、スリーポイントを決める三っちゃんを、忘れることができなかった。
二年生も終わりに近付いたある日、徳ちゃんと家の前でばったり会った。
「おはよ、学校行くの?」
「おう。たまには行っとかねーと留年する」
「三っちゃん最近見ないけど元気?」
「ああ、」
わたしの質問に徳ちゃんはバツが悪そうにしている。
「三っちゃん何かあった?」
「それがよー、一年の宮城って奴をシメようとしたら三っちゃんだけを狙って頭突き連発しやがってよ」
「それで?」
「三っちゃんもそいつも昨日から入院」
「は?」
詳しく話を聞くと、宮城くんという一年生は集団には勝てないと悟り、グループの頭である三っちゃんだけを狙って頭突きを喰らわせ続けたらしい。
「三っちゃん前歯折れてよー」
「は!?」
宮城くんて子、凄いなあ。
複数の上級生に囲まれてリーダーだけを倒しちゃうなんて。
三っちゃんには正直呆れた。
大好きだったはずのバスケットを捨てて、不良になって下級生に怪我させるなんて。
三っちゃんを不良の道に引きずり込んだ徳ちゃんも徳ちゃんだ。
「もうのりちゃんなんかきらい!」
三年生になる直前に一学年下の宮城くんと喧嘩して病院送りになっていた三っちゃんが、三年生になってから学校に来るようになった。
先日退院したらしい。
今度は新入生でもシメるつもりだろうか。
しばらく会わない間に、人相は変わってて眉間に皺は寄ってるし髪は伸びてるし前歯が折れたからなのかマスクしてるし。
あの頃の三っちゃんはもういなかった。
よく笑う、自信満々で爽やかな三っちゃんはもういない。
徳ちゃんに対しても許せない気持ちが強かったから、暫く口も聞いていないし、家の近くでばったり会っても話をすることはなかった。
わたしが一方的に無視している。
「紗江、生物の課外授業終わったらバスケ部見に行こー!」
「いいよー」
相変わらず美咲に付き合って時々見に行くバスケ部の練習。
新入生で赤髪リーゼントの桜木くんが入学早々赤木くんに喧嘩を売って、体育館でバトルしたのを見たけれど、何だかとんでもない子がいるもんだな、と思った。
赤木くんに拒絶されていたその子がいつの間にか正式にバスケ部に入部して、ちょっと面白いことになってきているのだ。
桜木くんの仲間達もよくバスケ部の練習を見に来ていて、怖そうだけどとても友達思いのいい子達だ。
生物の課外授業が終わって美咲と教室を出ると、廊下で他の生徒の会話が耳に入る。
「三井と堀田達、他校の不良と体育館襲撃に行ったらしいぜ」
「三井とやりあって入院してた宮城って、バスケ部なんだと!」
それを聞いて、何故か木暮くんを酷く心配する美咲と、体育館に向かって急いだ。
入り口付近には教師が多勢いて、閉ざされた入り口を開けるよう中を説得していた。
中は説得に応じない様子。
そんな中、赤木くんが現れて中に入って行った。
再び扉は閉ざされ、中の様子は全く伺うことができなかった。
「ん?」
心配しながら入り口の前に集まる教師たちの後ろで立ち尽くしていると、後ろから安西先生が現れる。
「ちょっといいですかな」
群がる教師たちの間を割って、安西先生が入り口前に立った。
「私だ・・・開けて下さい」
扉が開くと、そこには目を疑うような光景が広がっていた。
流血して倒れている子も何人かいて、ああ、もう全てが終わりだ、と思った。
頭が真っ白になって、わたしは意識を失った。
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