二日後、教室に入ると亜希が駆け寄ってくる。
「紗江、1年7組行こう!」
「は?」
半ば強引に引っ張られてやって来たのは一年生の教室。
7組の前には多勢の人が群がっている。
「ほら見てあれ!」
教室を覗くと丸坊主の桜木くんがいた。
「何あれどうしたの!」
「あ、堀田」
「よお、紗江ちゃんたちも見に来たのか?」
徳ちゃんも桜木くんの丸坊主の噂を聞きつけて見に来たらしい。
徳ちゃんたちは大笑いしている。
「なんか聞いた話だと、この間海南戦負けたの自分のせいだって」
自戒の気持ちで丸坊主にしたのか。
「ぬ、紗江さんと美咲さんじゃないすか」
「あ、桜木くん似合ってるよ、可愛い!」
「そ、そっすか」
桜木くんは少し恥ずかしそうに笑っていた。
「紗江、今日バスケ部見に行こうね」
「はいはい」
海南大付属との試合を見てから、三っちゃんのバスケに対する気持ちが本物だと思えて、わたしはもう純粋に応援できるようになった。
やっぱりバスケットをする三っちゃんはかっこいい。
放課後体育館に行くと、二、三年生と一年生で試合をしていた。
「あれ、三井審判?」
「ハンデだってよ」
水戸くんはニヤリとわたしを見た。
「な、何?」
「いや別に」
(・・・この野郎!)
「それにしても一年生すごいね」
「あ、三井出るよ」
美咲に言われて三っちゃんを見ると、とても気合が入っているようだ。
大好きなバスケができる喜びが溢れてる。
かっこよくて泣きそうだ。
「三井やっぱりうまいね」
美咲の手をぎゅっと握る。
三っちゃんのばか!
こんなにかっこいい三っちゃんを見ない時間が本当に勿体無かった!
バスケ部の練習が終わると、部室に向かう三っちゃんがこちらに気付いた。
「おう、紗江!」
「お疲れ様ー」
近付いてきた三っちゃんがタオルをわたしの頭にパシッと被せた。
「見てたのかよ」
「まあ気が向いたから」
頭に被せられたタオルから三っちゃんの匂いがする。
わたしはタオルを三っちゃんの首に掛ける。
三っちゃんは額から汗を垂らしながら、わたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「ちょっと!」
「うれしー」
目を細めて笑う三っちゃんを見て、気持ちが昂ぶる。
本当にバスケットが好きなんだ。
(ずっと見ていたいなあ)
「気をつけて帰れよ」
「うん」
わたしは恥ずかしくなって頬を抑えた。
「へぇー」
「なるほどな」
「ミッチーやるじゃねえか」
桜木軍団がこちらを見ている。
ああ、終わった。
「紗江ちゃーん」
「徳ちゃん、どしたの?」
「ちょっと頼みが」
バスケ部は明日の陵南との試合でインターハイに行けるかどうかが決まる。
そんな日に徳ちゃんがわたしの家へやって来た。
「三っちゃんの応援旗を作りてえんだ」
「素敵!いいね!」
「紗江ちゃんにも手伝ってもらえねえかなと思ってよ」
「もちろんだよ〜!上がって上がって」
わたしは徳ちゃんを上げて、リビングへ通した。
「あら徳ちゃん」
「あ、おばさんお邪魔します」
「この間徳ちゃんのお母さんとお茶行ったんだけどねー、」
「お母さん!これから忙しいの!」
「あらあら」
リビングの床に徳ちゃんが持って来た大きな布を広げた。
「なんて書いたらいいのかな」
「三井命」
「それ流川くんの親衛隊と一緒じゃん」
あれこれ考えて、色を塗って、完成した応援旗。
「炎の男三っちゃん」
「すごいかっこいい〜」
「あら素敵、三っちゃんてお友達?」
作業を終えたわたしたちに、母が声を掛けてくる。
「ああ、三っちゃんは俺の友達で紗江ちゃんの好きな、」
「コラ徳男!」
徳ちゃんにまでバレていたとは。
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