続きは夢のなかで


※女審神者


「何だって?」
「ですから買い出しです」
「おいおい、まさか行けって言うんじゃないだろうな?」
「あら、鶴丸さん大当たり。大正解のご褒美におつかいに行く権利をあげます」
「それ最初の目的と変わらないじゃないか」

 昼食も済ませて何処かのんびりとした空気が漂う本丸。温かい陽気の縁側で日向ぼっこをしていた鶴丸に声をかけたのはこの本丸を預かっているナマエだった。内番姿の彼は屁理屈に苦笑いを浮かべながらもどうして俺なんだと訊ねれば、誰かに頼もうと思って部屋を出たら偶々そこに居たからという至極あっさりとした答えが返ってきた。

 そこで鶴丸に頼みたかったからと言えば彼も少々気分が上がったものだがナマエにそこまでの下心や計算高い部分は持ち合わせていない。至極まっとうで至極真っ直ぐな嘘偽り無い答えに鶴丸はため息をひとつつくと、仕方ないと言いながら腰を上げる。

「行っても良いが、仕度だけさせてくれ」
「それは勿論。お願いする物は書き出して籠の中に入れておきました」
「はいはい。じゃあ頼まれたぜ」
「頼みました」

 お願いしますねとその場から立ち去ったナマエの背中を見送った鶴丸は一度背伸びをすると籠にぽつんと入れられた紙片を摘まんで開き、買い物のリストを確認する。ありきたりなそれらに面白みに欠けるなと呟いたところで、ようやく身支度をする為に自室へ戻りそれから数分後には籠を片手に本丸を出た。

 頼まれた物は重い物はあまりなくほとんど身軽で帰ってこられた。物が物だった為に厨に居た燭台切と歌仙に籠ごと中身を任せ買い物を済ませた事を知らせる為にナマエの部屋へと向かう。部屋の前に足を運べば人の動く気配はごく僅か、執務でもしているのかと鶴丸がおーいと声をかけてみるが反応はない。

「入るぞー」

 何度呼びかけても返事が無ければ取り敢えず入ってみるかと障子を開ければふわりと鶴丸の髪を風が擽って、彼が再び前を向くと其処には窓際の壁に寄りかかって眠るナマエの姿があった。手元には風でぱらぱらと音を立てて捲れる戦術教本、色気も何もないなと鶴丸は呟いたもののその顔は緩んでいた。

「なあ、買い物終わらせて帰ってきたんだ。おかえりのひと言くらいあっても良いんじゃないか、君」
「……んん」
「……ま、起こすのも不憫か」

 君も頑張っていたようだしな。

 ナマエの脇にしゃがみこみ彼女の頬を指で撫でた鶴丸の目は口調と同じく穏やかで、風はそよそよと二人の間を通り抜ける。ふっと笑った鶴丸はそのままナマエの頭を撫でると手近にあったひざ掛けを引き寄せてナマエの体へとかけ、よっこいせとその隣に腰を下ろす。

「さっきな何だかんだ言ったが、君の我が儘は聞いてやりたくなる。不思議だが毎度のことなんだ」
「……」
「人の子の言葉を借りるなら――そうだな」

 手のかかる子ほど可愛い。

「――ってやつか?」

 ちょっと違う気もするがまあ良いだろうと呟くと静かに目を細めてニヤリと笑う。

「……なあ君、そろそろ起きたらどうだ?」
「……寝てます」
「こりゃ驚いたな。大きな寝言だ」

 お互いに何時の間に起きていたのか何時から気付いていたのか。ナマエは目を閉じたまま静かにそう呟くと鶴丸はまばたきを数回してそれじゃあ仕方ないなと片膝立てた所に頬杖をついて笑みを浮かべ、俺も寝るかと静かに目を閉じた。

 

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