菅原先輩にタオルを渡してから、先輩は私と沢山お話しをしてくれるようになった。そのうち何だかドキドキしてきて、上手くお話し出来ないって先輩に話したら、どうしてかは分からないけれど抱きしめられた。


「名字」
「菅原先輩」

 放課後のホームルームが終わって部活に行こうとしていた私に、教室の外から声をかけてくれた菅原先輩。鞄は机の上に置いたまま駆け寄ると先輩は嬉しそうに笑って、くしゃくしゃと頭を撫でてくれた。

「今日は部活?」
「はい。六時くらい、まで」
「そっか。俺は今日も練習あって、多分七時くらいになるかな。それで――」
「あ、あの!」
「ん?」
「あ、あう……」

 あああ、どうしよう。先輩の話遮っちゃった……!

 ソワソワしている私に気付いたのか気にしてないよと言うように笑って言葉を待ってくれる菅原先輩に甘えて、気持ちを落ち着かせてから話を続けた。

「あの……私、部活が終わったら、バレー部に行っても良いですか?」
「それは勿論良いけど……名字がそんなこと言うなんて珍しいな」
「す、菅原先輩がバレーをしているの、見たくて!」
「……え」

 真っ赤な顔でそう言った名字に、俺の体温は急上昇した。

「あ、あの、何か変なこと言いましたか……?」
「……いや、そんなことないけど。まあ、可愛いなって」
「えっ!?」
「よし、じゃあ何時も頑張ってる練習、普段よりもっと頑張らなきゃな。……俺の可愛い彼女が見に来るならさ」
「!?」

 ぽんっと音を立てるみたいにもっと赤くなった名字に俺はふっと笑って、彼女の頭に置いていた手をそっと離す。そろそろ行かないと大地に冷やかされる。

「じゃあ名字が来るって清水に話しておくよ。――待ってるから、名前」
「!?」

 ちょっとだけ反撃の意味を込めて呼んだ、名前の名前。ぷるぷると手を震わせて口を開いたり閉じたり――可愛いけど、あんまりそんな顔しないでほしい。優しくしたいのに、少しだけ意地悪したくなる。

 俺だけの人見知りアリスは、今日もその小さな手で世界に色を刺してくれる。



人見知りアリス王子様と一緒に幸せに暮らしましたとさ。

 

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