「おはよう、名前」
「お、おは……」
「ん?」
「おはようございま、す。大地くん」
「ん、よく言えたな」

 偉い偉いと言って頭を撫でてもらった朝。あれから私は澤村く――大地くんの隣にいさせてもらっている。それから名前で呼ぶことも、まだ慣れないけれど呼べるようになってきた。

 そんな私に菅原くんは良かったねと笑ってくれたけど、大地くんはあんまり近づくなと菅原くんの頭を小突いていた。理由は分からない。けど、何だかちょっとだけ機嫌が悪い大地くんを見て菅原くんが楽しそうに笑っていたから、多分悪いことじゃないんだと思う。

「名前。今日はダンス部あるのか?」
「今日はお休み、です……」
「ふーん。じゃあさ、バレー部見に来ないか?」
「えっ」

 男子が多い場所、というか潔子ちゃん以外女の子がいない男子バレー部に行く。かなりハードルが高くて顔を青くすると大地くんは苦笑いをして、大丈夫と笑った。ごめんなさい、それは大丈夫じゃないです。

「え、でも……む、無理……」
「清水に近くに居るように頼んでおくからさ、取り敢えず来てみろって。ちょこちょこ窓の外から見てるのも辛いだろ?」
「! し、知ってたの……?」
「当然だろ。そういうことだから、放課後は第二体育館な」
「え、あの……!」

 決定事項になってしまったバレー部の見学。潔子ちゃんが一緒に居てくれるとはいっても私にはハードルが高すぎる。そうしてアワアワとしている私に、近くに居た菅原くんがこっそり教えてくれた。

 ――大地は、自分の格好良いところ見せたいんだよ。

「!」
「だからおいで。な?」
「……う、うん」
「おい。何コソコソ話してんだ、スガ」
「何でもないよ。大地は心配性だなー。名字は取らないから安心しろって」
「……」

 大地くんの、格好良いところ。

 そんな魅力的な言葉に引っかかった私は、放課後にバレー部を見に行く事に何時の間にか頷いていた。それに大地くんは嬉しそうに笑ってくれて、一緒に行こうかと言ってくれる。当然同じクラスの菅原くんも一緒に。

 ――大好きな人とお話が出来ることが、とても楽しくて嬉しい。

「ほら名前、遅れるぞ」
「う、うん……!」
「あーあ、本当にお似合いっていうか。俺も応援した甲斐があったなー」
「茶化すな、スガ」
「良いだろこれくらい」
「……ふふ」
「!」

 こういうの、凄く楽しい。思わず笑うと大地くんと菅原くんが静かになったから、此処は笑っては駄目なところなのかと焦り始めると大地くんはちょっとだけ顔を赤くして私の頭を撫でた。

「……あんまりそういうことされると、ちょっと困る」
「え、あ……ご、ごめんなさい!」
「あ。いや、そうじゃなくてだな……あー、そのなんて言うか」
「?」

 可愛くて、困る。

「!」
「ほら、行くぞ。そろそろ予鈴鳴る」
「あ、はい……!」



 頼り甲斐のある大きな背中を視線で追いかけて。
 短く切り揃えた黒髪が偶に寝癖で跳ねているのを見つけて、ちょっとだけ可愛く思えて。

 ああ、やっぱりこの人が好きだなって何時も思うの。


 何時も何かを怖がって震える小さな背中。
 でもふいに見せる控え目な笑顔が可愛くて、目を惹かれる。

 その癖、俺には素っ気ない。……俺の気持ちを知っているから恥ずかしがるのは当然か。


 この恋心を何時も君に伝えていたくて仕方がないくらい、君が好き。



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