何時も何かを怖がって震える小さな背中。
 でもふいに見せる控え目な笑顔が可愛くて、目を惹かれる。

 その癖、俺には素っ気ない。……俺の気持ちを知らないから当然か。

「……」

 その丸い目には俺を映してほしくて仕方ないっていうのに。



「大地」
「ああ、旭か。何だ?」

 廊下に面した窓が開いて顔を覗かせた旭に、俺はバレー雑誌から顔を上げた。何か用があるのかと思えばそれはただの世間話で、暇だったから来ただけかとため息をついてやる。それに旭はビクリと体を震わせて、来ちゃ不味かったのかよとか言ってるが、素直に、ああそうだだから帰れなんて言ってやるつもりはなかった。

「……」

 また、スガと話してるのか。

「あの、菅原くん」
「大丈夫大丈夫、気付いてないよ」
「そ、っか……」

 何に気付いてないのか、そんなのこっからじゃ分かるはずがない。俺は彼女に背中を向けてるし教室の中と旭の声で二人の会話なんて、それしか聞き取れなかった。

 スガと話していることにほとんどの奴が気にしてないという意味なら、それは俺を除いてほとんどっていう意味に変えるべきだ。


「大地――って聞いてる?」
「聞いてる聞いてる」

 俺が名字を気にしてないとでも、思ってるんだろうな。

 今までそんなに話したことはないし、直接的に何かで関わったこともほとんどない。だけどふと気付いた時には名字を目で追ってる俺が居て、馬鹿じゃない俺はその理由にもとっくに気付いてる。

 でも目を向けた時には、スガが一緒にいることが多い。

「……なあ、旭」
「ん?」
「例えばの話、気になってる物があってそれにこっちは気付いてるのに向こうが気付かなかった場合どうする?」
「え? えーっと……俺なら気付いてもらえるまで待つ、かな」
「お前に聞いたのが間違いだった」
「え……」

 旭の回答を叩き切って、ついでに落ち込んでるのも放置した。今はお前と話してるよりも名字とスガのことが気になって仕方ないんだ。急に来て世間話するお前が悪い。

「……ごめんね、菅原君」
「いや、良いけど……。名字は可愛いんだから自信持って良いと思うけどなあ」
「そ、そんなことない。絶対ない」
「いやだから――うん、まあ今は良いか」

 ほらそうやってまた、俺の気持ちも知りもしないでスガと話をする。

 

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