部活帰り、学校と家の途中にある公園でそれ聴いたような気がする。多分気に留めなかった。なんとなく耳に届いた、それだけのこと。なのに何故か、その音が頭に残って離れなかった。


【1】

「あ?」
「いや、だからお前器用じゃん?」

そう言ってクラスメイトの、誰だったか。取り敢えずクラスメイトではあるそいつに渡されたのは、音楽の授業でよく見る黒い点が書いてあるものだった。俺にどうしろっていうんだ、と渡されたソレと名前が分からないクラスメイトの顔を交互に見る。そいつは笑って「どうよ?」と聞いてくる。何がだよ。次いでなんか薄っぺらいピアノを「どどーん!どうよ!」と見せられ「だから何がだよ」としか言えなかった。

「行ける?」
「は?どこに」
「…おっと、天然の気配を察知」
「ていうかお前名前なんだっけ?」
「うっそだろ、何気に俺ら1年から同じクラスなんだぜ?嘘だろ?」
「しらね」
「嘘だろマジか…分かったオーケー、俺クラスメイトの相崎千種」
「俺は影山飛雄」
「知ってる」
「あ、そ。じゃ」
「待って待って、どうしてそうなる?ちょ、帰ろうとすんなって!」

どうも自己紹介して終わり、というわけではないらしい。「頼むから話を聞いてくれ!頼む!!」と割と必死に引き止められるものだから、仕方なく足を止めた。で、結局何の用なんだと顔を向ける。

「部活もさ、引退の時期じゃんか。影山も引退しただろ?」
「…、まぁ」
「で、受験まで暇だろ」
「まぁ…ひま、暇か?」

実際俺はもう部活を引退している。あんなことがあった日から、俺は部活には行かなくなった。あれが有ろうが無かろうが数日後には引退していたんだし、然程変わりはないだろう。暇か、と聞かれれば…自主練でバレーボールを少し触るくらいか。使える場所も限られる、部活のときのような本格的な練習も今はできない。暇といえば、暇ではある…けど。

「勉強しねぇと」
「頭は大丈夫か」
「どういう意味だコラ」
「授業中寝てるか、授業とは一切関係ないこと考えてるんだろうなーって顔してた影山から勉強という言葉が出るとは思いもしなかった」
「推薦来なかったから一般で受からねぇと」
「どこ?」
「白鳥沢」
「悪いことは言わねぇ、諦めろ」

肩をぽんと叩かれた。自分でも無謀なのは分かってる、試験の過去問見ても全然分からなかった。でも諦めきれねぇし、とも思う。「小耳に挟んだけど、青城から推薦来てんだろ?そこでもよくね?」という言葉に、う、と息を詰まらせた。あいつら、多分青城に行くだろうし…あの人も居るしなぁ…。今となってよく分かるが、俺はかなり嫌われていたらしい。それを思い知らされて、青城に行くにはかなり勇気がいる。そして人付き合いが良くないと自覚した俺も、そんな人間が沢山居る中で良いプレーを出来るとは到底思えない。うん、無いな。

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