【chapter01:ワンチャンダイブする】


私の今世での不幸は、『緑谷出久』ポジションに生まれ変わってしまったことだ。
よくある話…いや、よくあることじゃないね?よく聞く話、が正しかった。死んだら知ってる世界に生まれ変わる、みたいな話。ワァ!ワタシ、シッテル!いやぁ知っていたくなかったなぁ。
前世の知識をアドバンテージに出来る人って結構精神力強いよね。知っている知識を駆使し、敵を往なし上手く立ち回る。無理でしょ、そんなもん二次創作の中の話だよ。私なんて絶望しかないもん。生まれ変わって主人公ポジションはダメでしょ。しかも緑谷出久。無理だよ死ぬよ。もうちょっと平和な世界に生まれ変わらせてくれても良かったんじゃないかなぁ神様。
あとまんま緑谷出久であれば話は別だった。女なのよ私。前世も女だから男にならなくて良かったと思わなくもないけどさ。緑谷出久ポジションが女なんだよ。色々無理じゃないかな?せめて緑谷出久妹とかにしといてくれ。神様呪ってやる。
前世ではね、○×歳まで生きたのである程度のことには上手く立ち回れるんじゃないかなぁ、なんて思ってたんだよ。ヒロアカの世界でなければ。そして思っていた以上に自分の考えが甘かったなぁって実感してる。

いや、いじめえっぐいわ。

この一言に尽きる。差別もヤバい。
あらあら緑谷さんちの娘さん、無個性なんだそうよ?まぁ!無個性だなんて気持ちが悪い!奥さん一体何をしたら無個性なんて産めたのかしらねぇ。性病かしらねぇ?くすくす。…なんてこそこそ話(見た目だけこそこそ、団地前で聞こえるようにしゃべる。毎日)してるんだからヤバい。お母さん震えながら私の手を引いてその人達の前を早足で通り過ぎる。つらい。死ぬほどつらい。これ体験すると、クソガキからのいじめも軽い軽い、なんて最初は思ってた。言ったでしょ、いじめマジえっぐいわ。歳を重ねるごとにどんどんエスカレートしていく。


「ムコセーがヒーローになれるわけねぇだろ!」

という馴染みある声と共に爆発音。そして吹き飛び地面へと叩きつけられる自分の体。
いじめとは。そもそもいじめって言葉なんなんだろうね?いじめってだけでなんとなく軽視されるよね。でもさ、紛うことなき暴力なんだよこれ。暴行罪だ暴行罪。かはッと息が漏れる。呼吸が上手く出来ない。全身痛い。そして聞こえる笑い声。
これが将来ヒーロー目指すとか言ってるヤツなのか。犯罪者予備軍だろこんなの。
ずるり、地面を這いつくばる。そんな私の背中に足を乗せる緑谷出久、否、私の幼なじみ、爆豪勝己。

「いい加減諦めろよ!テメェなんてヒーローになれるわけねぇんだから!」

いいか爆豪勝己、私は一度だってヒーローになりたいだなんて言ったこと無いんだよ。…あ、一回だけあったかも。無個性だと診断される前、3歳とかかな。「いずく、おまえもヒーローになるか?」なんてまだ可愛らしかった爆豪勝己に問われ、まぁその場のノリで「うん!」と頷いたのだ。「じゃあおれといっしょだな!」なんて笑顔が可愛かった昔の話。まったくどうしてこんな育ち方したんだろうね爆豪勝己。爆豪家の教育方針が気になるところ。


「無個性は大人しく「社会に貢献できない無能です」って看板ぶら下げて、息を殺して生きていけよ」

10歳そこらの子供が思いつく罵倒ではないのだが?
というかそれでいいのなら私だってそう生きたい。波風を立てず穏やかに過ごしたいのに、突っかかってくるのはお前の方なんだが??いい加減にしてくれよ。ヒーローになりたいと言ってるわけでもなく、緑谷出久のようにヒーロー分析をしているわけでもない。普通に生活しているはずなのに、爆豪勝己とそれを取り巻く世界が私に牙を向くのだ。
君たちは私に何を見ている?緑谷出久の姿かたちか?



ぼろぼろになって帰るとお母さんが叫び声を上げる。ごめんね、また服ダメにしちゃった。しょんぼりする私を泣きながら抱きしめるお母さん。うーん、ほんとつらい。自分の痛みより、お母さんが泣くほうがずっとつらいのだ。







【chapter3:正しいはずなのになにか違う。いや、何もかも違う】


そんなさ、ベタな死に方ある?暴走車両に轢かれて死ぬとか。そんなことある?あるんだなぁ世の中には。
でもまさか4周目が始まるとは思わないじゃない?またおぎゃー!って生まれたら3度目のお母さんの顔で、「またかぁ」って思ったら横からおぎゃー!って声がして、視線をそっちに移したら赤ん坊が居て。みどりのもじゃもじゃ頭。え、もしかしてモノホンの緑谷出久!?嬉しさのあまり雄叫び(鳴き声)をあげた。それにびっくりしたのか緑谷出久(暫定)も大泣きした。あらあら、って泣いて笑うお母さん。尊い。
ところで今回も父親不在なんですか?緑谷家の謎である。

「出久、永久」

お母さんが心底愛おしさを滲ませ私達の名前を呼ぶ。
人生2周目と3周目の私の名前は「緑谷出久」だった。4周目ではちゃんと「私」の名前が付いたのだ。良かったと思う反面、その名前に若干嫌悪感を覚える。いやだって、永久だよとわ。えいきゅうとも読む。わー、私の人生永久に続くのかー。え、5周目ある感じ?やめてください死にたくなってしまいます。でも死んだらまた始まるから死ねない。地獄か。

なんて思っていた時期もありました。


「とわ、とわ!」

ふわふわと笑いながら私に抱きつく出久が可愛くて可愛くて仕方がない。「いじゅくー!」と舌っ足らずな私も出久を抱きしめる。ふふふ、と笑みを浮かべるお母さん。ここが天国です。.



chapter1 人生2回目とかっちゃん
chapter2 人生3回目とろきくん
chapter3 人生4回目とみんな

わりと軽率に死んで絶望振りまく主人公の話。

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