アマキ(1/5)

重く、低く、地鳴りに似た音が響く。

私は手許から視線を外すと、暗澹(あんたん)たる気持ちで空を見上げた。

鬱蒼と繁る木々。

その合間から、つい先程まで晴れ渡っていたはずの空が、真っ黒な雲で覆われているのが見て取れた。

これは幾ばくもせずにひと雨来そうである。

私はそっと息を吐き、雨に濡れてしまわないようにと地図と資料をしまい込んだ。

そして私自身が雨宿り出来る場所を探すべく、もう一度辺りを見回した───その瞬間。

ポツ……。

……ポツ……ポツ……。

と木々の間から落ちた雫が、地面に染みを作っていく。

私の頬にも当たるそれらは徐々に勢いを増し、すぐさまマントに含まれ重みを増した。

これは木の下でやり過ごすには雨足が強すぎる。

容赦なく降り注ぎ始めた雨の中、私は手をかざし、視界と足場の悪さに悪戦苦闘しながら走り出した。

───次の瞬間。





がっ!





緑の間から見える空に閃光が走り、雷鳴が空気を震わせた。

更に雨は激しさを増し、私の体力と体温を急速に奪い去ってゆく。

……ついてない。

そんな思いが過るも走り続けるしかなく───それから程無く。

黒雲の下に佇む大きな建物が目に入った。

───……古びた教会。

こんな山中に建てて意味なんてあるのだろうか?

とも思うが、今はそれよりこの雨をどうにかしたい。

私は教会へと近づき、大きな扉に手を掛けた。

……ぎぃぃいぃぃぃ……。

と、重く怪しい音をたてながら開閉する扉。

それをくぐると、後ろで紫がかった光が瞬いた。





ぴがしゃあっっ!





次いで何処かに雷が落ちる音。

後ろを振り向けば、数メートル先も見通せないほどの雨が地面を叩いている。

これは当分止みそうにないな……。

瞬く間に濡れ鼠と化してしまった私は、本日二度目の溜め息をゆっくりと吐き出した。

仕方ない。

ここは一晩、この教会に留まらせてもらおう。

見たところ放置されて随分経ってるみたいだし……。

念の為に人が居ないのを確認してから、近くにあった参拝者用の椅子に外したマントをかける。



「……本当ついてないな……」



やるせなさから小さく呟き、着替えの為に濡れた法衣を脱ぎ始め───ふと、そこで動きを止めた。

───聞こえたのだ。

雨音に混じる声が。

ハッキリとはわからないが、何かを言い合っているような……。

って……あれ?

もしかしてこっちに近づいてきてる?

音源の方向に顔を向けた丁度その時。

扉は軋む音すらさせず、勢いよく開かれた。

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