重く、低く、地鳴りに似た音が響く。
私は手許から視線を外すと、暗澹たる気持ちで空を見上げた。
鬱蒼と繁る木々。
その合間から、つい先程まで晴れ渡っていたはずの空が、真っ黒な雲で覆われているのが見て取れた。
これは幾ばくもせずにひと雨来そうである。
私はそっと息を吐き、雨に濡れてしまわないようにと地図と資料をしまい込んだ。
そして私自身が雨宿り出来る場所を探すべく、もう一度辺りを見回した───その瞬間。
ポツ……。
……ポツ……ポツ……。
と木々の間から落ちた雫が、地面に染みを作っていく。
私の頬にも当たるそれらは徐々に勢いを増し、すぐさまマントに含まれ重みを増した。
これは木の下でやり過ごすには雨足が強すぎる。
容赦なく降り注ぎ始めた雨の中、私は手をかざし、視界と足場の悪さに悪戦苦闘しながら走り出した。
───次の瞬間。
がっ!
緑の間から見える空に閃光が走り、雷鳴が空気を震わせた。
更に雨は激しさを増し、私の体力と体温を急速に奪い去ってゆく。
……ついてない。
そんな思いが過るも走り続けるしかなく───それから程無く。
黒雲の下に佇む大きな建物が目に入った。
───……古びた教会。
こんな山中に建てて意味なんてあるのだろうか?
とも思うが、今はそれよりこの雨をどうにかしたい。
私は教会へと近づき、大きな扉に手を掛けた。
……ぎぃぃいぃぃぃ……。
と、重く怪しい音をたてながら開閉する扉。
それをくぐると、後ろで紫がかった光が瞬いた。
ぴがしゃあっっ!
次いで何処かに雷が落ちる音。
後ろを振り向けば、数メートル先も見通せないほどの雨が地面を叩いている。
これは当分止みそうにないな……。
瞬く間に濡れ鼠と化してしまった私は、本日二度目の溜め息をゆっくりと吐き出した。
仕方ない。
ここは一晩、この教会に留まらせてもらおう。
見たところ放置されて随分経ってるみたいだし……。
念の為に人が居ないのを確認してから、近くにあった参拝者用の椅子に外したマントをかける。
「……本当ついてないな……」
やるせなさから小さく呟き、着替えの為に濡れた法衣を脱ぎ始め───ふと、そこで動きを止めた。
───聞こえたのだ。
雨音に混じる声が。
ハッキリとはわからないが、何かを言い合っているような……。
って……あれ?
もしかしてこっちに近づいてきてる?
音源の方向に顔を向けた丁度その時。
扉は軋む音すらさせず、勢いよく開かれた。
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