チョコレートの本気度



好きな人が女子からもらったチョコを自慢してくるのは結構ダメージが凄いんだなと冷静に感じた。


「もらえた」


たった一言のその言葉と共に一が見せてきたのは可愛くラッピングされたチョコレート。満更でも無さそうに少し恥ずかしそうに笑う。
一の格好良い所は俺だけが知っていれば良いのに。及川と俺だけの一でいたら良いのに。


「良かったなぁ!俺は今年はまだもらってない」
「及川のバカがうるさくなるからさっさと部室行くか」


「あー、そうだな」


スポーツバッグを持って教室を出る。今年はもらってない。だなんて嘘だ。一を好きになってからずっと断ってきた。そんな事は絶対に本人には言えないから誤魔化している。


「名前」
「んー?」


部室に入って着替えをしていると、一が声を掛けてくる。俺だけを何故か名前で呼んでくれる一。何でなのか一度理由を聞いた事があるけれどはぐらかされて、結局理由は教えてもらえなかった。


「これ」
「え?」


差し出されたのは綺麗にラッピングされた箱
思わずその箱を見つめたまま固まってしまう。


「さっさと受けとれ」
「何で一が?」


「別に…いらねぇなら俺が食う」
「これ一から?」


窺うように視線を向ける。その言葉を聞いたら一気に一の顔が赤くなって、俺の心臓が早くなっていく。頭の中が混乱してきて、どういう意味なんだろうと考える。


「誰からのでも良いだろうが」
「ありがとう」


それを受け取ってすぐに紐を解く。包装を取ったら小さな箱が現れた。


「目の前で開けるな!ボケッ!」
「え?だって早く食べたいから」


蓋を開けるとシンプルなチョコレートが入っていると思っていたら、結構女の子が買うようなデザインのチョコレートだった。ピンクのハートが描いてあるチョコレートやピンク色のチョコレート、loveと書かれたチョコレートもある。


「なぁ、これ中身確認してから買ったのか?」
「…………先行ってる」


「えっ、ちょ!」


一が背中を向けて先に部室から出ていく。それと入れ替わるようにしてへらへらと笑いながら、及川が入ってくる。両手に紙袋を持っている。


「あれ?それ、岩ちゃん…名前ちゃんに渡したの?」
「は?」


「岩ちゃんがさ、休みの日に突然チョコレート買いに行くとかいうから逆チョコでもするのかと思ったんだけど…もう逆チョコってあんまり見かけないからさぁ…やめたほうが良いんじゃない?って言ったんだけど結局、凄い本命っぽいの買ってたから誰にあげるのか気になってて!」
「で、俺に?この本命っぽいチョコを俺に?」


思わず信じられなくてそんな言葉を言ってしまう。本当はニヤけるのを我慢するのに必死なのに。
俺の言葉を聞いた及川が俺の肩を全力で掴んでくる。


「ちゃんと岩ちゃんの気持ちに返事しないと名前ちゃんでも俺、許さないからね?」
「バレーでは頭回んのにこんな事には鈍感なんだなぁ、及川は」


「は!?それ、名前ちゃんに一番言われたくないんだけど!」
「うるせぇ!イケメンは黙ってろ!」


「理不尽!」


とりあえずチョコをロッカーにおさめて一を追いかける。まだ誰も来ていない体育館で一は用具の準備をしていた。


「一!」
「名前、準備手伝え」


「手伝うけどその前に聞きたい事がある」
「部活終わってからにしろ」


「今、聞かないと部活に集中出来ないんだよ!」


俺が少し声を荒げて言い、一を見つめる。準備をしていた手を止めて一も俺を見る。たったそれだけの事なのに心臓がうるさく鳴った。


「一は………その、……俺のこと好きなのか?」
「練習するぞ」


「一!」
「っ………あんな物あげたんだから分かんだろうがっ!」


やけくそみたいに大声を上げた一はそのまま俺の腕を引く。少し背伸びをした一が俺にキスをした。


「これで満足だろ」
「一、マジでイケメン」


「馬鹿言ってる暇あったら、さっさと準備しろ」
「はいはい、やりましょうかね!」