盗まれる前に
「なぁ、俺告白された」
「ふーん…良かったね」
目の前で外の景色を眺めているのは最近、近くの席になって仲良くなった月島だ。ちなみに山口とは結構仲が良くなったつもり。
今日は俺と月島が日直で分担して仕事をこなし、最後の日誌だけになった。
「でも俺、名前も聞いた事ないような先輩でさ綺麗な人だったんだけど」
手を動かしながらなんとなくそんな告白された時の話なんかをしていたら、突然月島が俺の話を遮るように少し苛ついた声を上げた。
「ねぇ、さっきからそんなこと僕に言ってどうするの?」
「え、あぁ…ごめん。つまんなかったよな」
視線を月島から日誌に移してさっさとそれを終わらせる。そういえば何でわざわざ月島にこんな話したんだろう。山口なら世間話みたいな感じで何でも話すけれど。
「苗字、終わった?」
「後ちょっと」
最後の一文を書いて日誌を閉じる。
「よし、出来た。俺が提出しとくから月島は部活行ってこいよ。遅くなってごめんな」
「良いよ、別に。あと僕はそんなことでいちいち嫉妬したりしないから」
「へ……」
「じゃあね、部活終わったら部室で待ってる」
それだけを告げて教室を出ていった月島
月島の言葉をもう一度、頭の中で繰り返す。嫉妬って
「っ……え、や…だって…」
段々とその言葉の意味を理解して顔が熱くなってくるのを感じる。だってそれは…
しばらくそのままボーッと突っ立ってしまっていて、ふと時計を確認するとあれから随分と時間が経ってしまっていた。
「うっわ……」
急いで職員室に日誌を届けて服を着替え、グラウンドに入った。
「苗字おせぇぞ!」
「ごめんごめん」
友達に笑って返しながら軽くストレッチをしたりして、部活に参加した。部活をしているとあっという間に時間は過ぎて終了となった。月島の事もすっかり忘れてしまっていて、部室で服を着替えていた時だった。
「苗字、月島が待ってるぞ」
「えっ!?すみません…!」
先輩に言われて慌てて服を着替え、鞄を持ち部室を出る。そこには月島がいていつも傍にいる山口は今日はいなかった。嶋田さんの所にでも行ってるのかな。
「遅かったね」
「うん、今日は今度ある大会に向けてのリレーの練習だったから。結構、ぎっしりメニューが入ってて」
月島の隣を歩いて校門を出る。しばらくそんな他愛も無い会話をしてやり過ごしていたら、月島が足を止める。それに合わせて俺も足を止めて月島を見た。
「月島?」
「放課後の事、もう忘れたの?それとも忘れたつもり?」
「あ、あれは…だって俺…都合の良い方向にしか考えられなくて」
「都合の良い方向って?」
距離を詰めてくる月島に俺は思わず後退する。月島の表情は楽しそうに笑っていて、俺は意味が分からずに焦ってしまっていた。
「それは……」
「それは?」
「言えるわけな…」
「言いなよ、良いから。誰も聞いてないから」
人通りが少ない場所だけれど誰かがフラッと通りかかるかもしれない場所で、男が男にこんな迫っている様な姿を見られたら月島が何を言われるのか分からない。
「と、とりあえず離れよう。な?」
月島の肩に手を置いて離れさせようとすると簡単に離れてくれて、安堵する。
「で、僕に何か言わないといけない事、あるでしょ?」
「でも…月島は…」
「僕の事なんて良いから聞かせて」
「っ……月島の事が好きなんだと思う」
不意に俺の頭を撫でた手が頬に移動する。目を閉じてその感触を待っていたら額を叩かれた。
「こんな所でするわけないでしょ、名前の馬鹿」