素直になれない



俺はどちらかというと、スポーツは苦手な部類で高校に入ってからもスポーツ系の部活は最初から眼中に無かった。だから自然と部活見学にも文化系の部活ばかり見てた。


「月島は入る部活決めてんの?」
「バレー部」


「へぇ、月島って俺と同じ人種なのかと思ってたから以外」
「勝手に同じ人種にしないでくれる?」


「何か吹奏楽部でトランペットとか吹いてそう」
「何そのイメージ」


心底嫌そうな顔をした月島は溜め息を吐いて俺の入部届けを見た。そこには吹奏楽部と書いてある。全く初めての部類の所だけど初心者でも良いよと言われてたから、入るだけ入ってみようなんて軽い気持ちだった。


「部活見学来たら?」
「え?」


「デカイんだし」


月島が俺の方を見ないままそう言って、授業開始のチャイムが鳴った。
まぁ確かに俺と月島は同じくらいだし、重宝されそうな気もする。俺が使い物になれば






そんなこんなで俺がバレー部に入って以外と使われて、大会とかにも出してもらえるようになってからとある合宿の日のこと。


「つき…」


月島が体育館の前を通って行くのがわかって声を掛けようとしたら、俺が声を掛けるよりも早く体育館へと入って行った。少しだけ苦しいような気分になって、少し前から自覚を始めたこの感情をまた無視した。




「苗字、もう帰ってきてたんだ」
「あぁ、うん」


隣に敷いてある布団の上に座った月島が俺に話し掛けてきて、いつも通りに返事を返す。段々と皆が布団に入って寝る準備に入っている。俺もそれに倣うように布団に入る。


「おやすみ、月島」
「おやすみ」


月島に背を向けていつの間にか眠ってしまっていた。しばらくして動きづらさを感じて、目を開けたら目の前に月島がいた。


「はっ!?」


思わずデカい声を上げてしまって、自分の口を塞ぐ。俺が寝返りをうってしまっていたみたいで、月島が寝ている布団の近くに行ってしまったのは分かるが何で月島の腕が俺の腰に回っているのか理解出来ない。


「ん……」


小さく声を上げた月島に俺の体が固まる。この際、月島は起こしても良いからどうにかして皆にバレない様に離れようと思った。


「ちょっ…!」
「何してるの?苗字」


突然月島が目を覚まして、俺の体をまた引き寄せた。心臓がうるさく鳴って顔が赤くなっているのが分かる。誰かに見られたら何て説明したら良いんだ。何も言わずに体を離れさせようとしていたら、腰に回った腕の力が少し強くなる。


「月島、離せよ」
「苗字って僕のこと好きなんじゃないの?」


「そんな訳ないだろっ…」


お互いに小声で会話をしながら、俺は月島がこれ以上体を近づけないように月島の肩に手を置いて一定の距離を保っておく事しか出来なかった。


「じゃあなんでそんなに真っ赤なの?」
「つ、月島がそんなに近づいてるからだろ」


「僕、抱き枕がないと寝られないんだよね」
「………へぇ、そうかい」


俺は抱き枕じゃねぇよ!なんて大声で言いたいのをこらえて何とか月島から離れる。


「俺、寝るから」
「僕は苗字のこと好きだよ」


俺の言葉を聞いていなかったのかそんな事を言ってくる月島


「え?何て…」
「だから僕は苗字が好きだよ」


「嘘、言うなよ」
「嘘じゃないよ」


俺の腕を掴んだ月島が距離を縮めてきて、唇が触れた。離れたかと思ったら月島が俺の唇を舐めた。


「つき…」
「苗字は?」


「え?」
「苗字は?」


得意気に笑う月島に素直に言ってやるのが少し悔しくなってくる。


「自分で考えろバーカ」


そう言って月島から離れて、布団を被った。朝、何か言われたら山口に助けてもらおう。