あの日の約束



ずっと一緒だよ
お嫁さんにしてあげる


そんな事を小さい頃に約束した男は現在、立派なバレー男子に成長している。勿論、女子にもモテるし俺も最近たまたま夢でそんなことを見て思い出しただけ。


俺と一、徹の三人は幼馴染みで徹は何故か唯一俺だけを名前で呼ぶ。と思っていたけれど最近になって影山の事を飛雄と呼んでいた事に気付いて、地味にショックを受けた。


「何でそんなこと俺に言ってくるんすか」
「んー、まぁ…そういう事には疎そうな飛雄に話だけ聞いてもらいたかっただけ」


ファミレスに奢るよと言って誘いだし俺の愚痴を聞いてくれる。これだけ聞いてもきっと鈍い飛雄は俺の好きなやつが徹だなんて気付かない安心感がある。


「なんか飛雄って美味そうに食べるよな」
「一口食べますか?」


「良いよ、良いよ。それ頼もうかな」
「そっすか」


何故か唇を尖らせて不服そうにしているように見える飛雄に、黙って口を開ければすぐにカレーの乗ったスプーンが口に入ってきた。


「うまっ!俺も頼も」


店員さんを呼んで同じのを頼んでしばらく待っていたら何故かカレーじゃなく不機嫌な顔をした徹がいた。


「お、徹。あのな飛雄が頼んでたポークカレーの温玉のせがめっちゃ美味くてさ」
「外せない用事があるって言うから何かと思ったら飛雄とデート?」


「何でそんな怒ってんの?」
「あ、名前さん」


飛雄が俺の事を呼んだから正面を向くとカレーを完食した飛雄が真顔で言い放った。


「名前さんって及川さんのこと好きなんっすか?」
「は?」


「あれ、違うんすか?」
「何それ。俺聞いてないんだけど」


「や、徹には関係ないし!」


何なんだよ、何でこんな事になってるんだよ。ていうか徹がちゃっかり飛雄の隣に座ってる。お前、飛雄のこと嫌いなんじゃねぇのかよ。ていうか周りの視線が痛い。何でこんな俺、責められてんの?ていうか早くカレー食いたい。


「カレー食いたい」
「良いから俺の質問に答えてよ」


「今、俺は腹が減ってんのー」
「お待たせしました」


店員さんが運んできてくれたカレーがテーブルに置かれる。スプーンを持って湯気がたっているそれを口に運ぶ。カレーの香りと卵の感触が口一杯に広がって、満足していたら更に徹の機嫌が悪くなっていた。


「つか、何でそんなに怒ってんの?ほんと意味わかんね」
「嫉妬してんの!」


テーブル置かれている俺の水を何故か徹が飲み干して、睨まれる。何で嫉妬?


「嫉妬って…」
「俺よりこんな飛雄を優先した」


「こんなって…可愛い後輩だろ」
「ぜんっぜん可愛くない!」


「何でも良いけど、俺にとっては可愛い後輩なんだから良いだろ」
「それは俺より優先しないといけない事?」


不服そうな顔をしてそんな事を言ってきた徹に思わず笑ってしまった。まさかそんな言い方をされるなんて思ってもいなかった。彼女かよ。


「徹に話せない事とかあるだろ」
「ふーん…」


何故か俺を睨み付けてくる徹は素っ気ない返事を返してから、テーブルに手をついて身を乗り出した。そして俺の唇の端を舐めた。


「ちょ!…何してんだよ!」
「カレーついてたよ」


「お前、自分の顔面レベルの事考えろよ。女子はみんなお前の事見てんだから!」
「それは良いから。俺は名前の事が好きなんだけど」


何でもない事のように言う徹は俺の腕を掴んで、立ち去ろうとする。俺は慌てながら何とか飛雄に金を渡した。


「ほら、名前行くよ」
「ちょ、あ…飛雄!これで払っといて。今日はありがとな」


飛雄に手を振ってファミレスを出る。俺の歩幅なんて考えずに歩いていく徹のせいで俺は転けそうになりながら、着いて行く。


「徹、なぁってば…」
「黙ってて」


「……どこ行くんだよ」


建物と建物の間の細い隙間の奥の方に入った徹は俺を乱暴に壁に押し付けて、キスをしてくる。
俺の気持ちなんて全部わかってるみたいに。


「んっ、ん……ちょ…んむっ……」


抵抗しようと顔を動かそうとしても出来なくて、徹の膝が俺のモノを刺激してくる。同時に唇が離れて声が漏れる。


「うぁっ、あっ!…んっ、はぁ…あっ、う…とおる…やだっ…」
「可愛いね」


「んっ、ふ…ぁ!…も、やだとおる…はなせよぉ…」
「じゃあ言って。俺のこと好きだって」


ねぇ、言って。と続けてきた徹の言葉と同時に強く膝で俺のモノを刺激してきたせいで体が震えた。


「んっ、ぁあ!…」


服を着たまま出してしまって中が気持ち悪い。脱力した俺の体を支えた徹の背中に腕を回して肩に顎を乗せた。


「徹、好き」
「耳元で言うの止めて」


「ちゃんと言っただろ?」
「ほら乗って」


一応巻いといてと言われて徹の練習着を腰に巻いて、徹がおんぶしてくれた。


「うっええ……気持ち悪い。もう徹ふざけんなよお前…」
「名前がさっさと好きって言ってくれないのが悪い。嫁にしてくれるんでしょ、俺のこと」


「…………お前、それ覚えてたのかよ。俺、最近思い出したんだけど」
「えっ!ひどっ!」