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俺が青葉城西のバレー部に入ってからそれなりに友達が出来た。言った通り、一も俺の傍にいてくれた。俺にも友達が出来て学校生活も穏やかに送れていた。少しの間を除いて。
「あの…これお兄さんに渡して欲しいんだけど」
「え?」
そう言って渡されたのは差し入れか何かなのか小さな袋に入っている。
「そういうのは本人が渡した方が良いよ。俺は受け取れない」
それだけを言って目の前の先輩かな…女子から離れる。教室に帰って椅子に座ると俺の顔を見た国見が声を掛けてきた。
「また?」
「うん」
「その場で断れば良いのに」
「何で直接渡そうとしないのか理解出来ない」
「目の前で適当に受け取られるのが嫌だからじゃないの」
「めんどくせ」
吐き捨てるように言い机に伏せると背中を国見が何度か叩いて、離れていったような気がする。あいつに良く似たこの顔が嫌いだ。
それに最近は何を勘違いしたのかやたらとあいつが絡んでくる。俺がここに入学したのは建前上はあいつのサポートの為だけれど、本当は一がいてくれるからだ。だけど一は俺だけのじゃないから、独り占めなんて出来なかった。
「岩ちゃん」
一番最初に優先されるのはいつもこうやって呼ぶあいつだった。試しに呼んでみようかと思ったけれどあいつに絡まれでもしたら面倒だから止めた。
「岩泉!」
「一!」
そしてこう呼ぶ俺とその他の部員が同列。その瞬間、一に期待するのは止めた。一緒に帰っていたのを止めた。頻繁にメールや電話をしていたのも止めた。部活の休憩時間はなるべく隣にいたけど、それも止めた。
一は何も言って来なかった。
「嘘つき」
小さく呟いた声はチャイムで消えた。一と視線を合わせたり頭を撫でてもらったのは何ヵ月前の事だろう。
もう俺から視線を合わせようとも思わないけれど。
「お疲れ様でした」
「待って!名前、一緒に帰ろ?」
俺の腕を掴んできたあいつは笑顔でそんな事を言ってくる。
「ごめん、俺…今日は寄る所あるから先に帰ってて」
「分かった」
頷いたのを確認してから部室を出る。部室を出て少し経ってから携帯が鳴った。
国見英 お前の演技力恐ろしいわ
及川名前 長年の経験ですわ
返事を返していつもの道を通る。あの時の公園を通りすぎようとした時、ふと惹かれるようにブランコに向かって歩く。誰もいない公園でブランコに座った。相変わらずうるさい耳障りな音がするブランコだ。
その時、うるさい声が聞こえてきて視線を地面から上げると三年の人たちが集団で帰っていた。あいつも一も笑っている。ズキズキと痛む胸が何で痛んでいるのかも分からなくて、俺に気付かず通りすぎていく一に心の中で何度も嘘つきと叫んだ。
少し経ってから家に帰ると何故か靴が余分に一つあって、不思議に思いながら黙ったまま家に入ると母さんの声が聞こえてきた。
「本当にありがとう、一くん。あの子、一くんの言うことなら聞いてくれるから。あの時も一くんに行ってもらえて助かったわ」
「いえ、そんな…」
「良いなぁ、岩ちゃんは名前に好かれてて」
今、何て言ったんだろう。
俺の体が今の言葉を聞きたくないと拒絶しているようでまた同じように家を出た。でも今日は財布も持っていたからどうにかなるかな…なんて考えた。
一は自分から俺を探しに来てくれた訳じゃなかった。俺の親に言われて探した所でたまたま俺を見つけて、慰める為に適当な言葉を言っただけなんだろう。
「何だそれ…」
傍にいてよ。
あの時、縋るような思いでそう言って返事を返してくれた一を馬鹿みたいに信じきってあいつの召使いみたいに動いてた俺がただの馬鹿だったんだ。
いつの間にか雨が降り出していてコンビニで傘を買った。のんびりと目的地も無く歩いて、着いた先はまたあの公園だった。でもそれを通りすぎて歩いていく。さっきからずっと携帯がバイブで震えている。
「…………」
携帯の電源を落としてゆっくりとまた歩く。本屋に寄って文庫本を幾つか買って店にあった時計を見た。もう少しでこの本屋が閉店する時間だ。店を出て今度はどこに行こうかと、のんびりと歩く。
同じように公園の前を通ったらあいつと一がいて、何か話をしていた。
「……さっさと卒業したら良いのに」
どうせ今回も牛島に負けるんだ。やるだけ無駄だ。
「名前!」
何か声が聞こえてきたけど、それを無視して携帯の電源を入れた。不在着信やメールがたくさん届いている。何も気持ちがこもっていないのが分かってしまっているけれど、涙も出なかった。
「おいっ、名前!」
「いっ!」
思いきり腕を掴まれ痛みに顔を歪めるけれど、手を離してはくれない。俺が振り返ると同時に頬に痛みが走った。
「心配させてんじゃねぇ!」
「心配してくれなんて頼んでないし、どうせまた俺の親に言われて来たんだろ。大変だね。たかが幼馴染みなだけでこんな面倒まで見させられて」
「てめぇ…」
眉を寄せて俺を見る一
隣にあいつはいない。少し乱暴に腕を振り払って今度は俺が一の頬を叩いた。
「嘘つき」