真冬のおでん



「繋心!あったかいものくれー!」


坂ノ下商店に飛び込むようにして入ると、目の前に薄い壁があって思いきり顔を打った。


「うぐっ!」
「うわぁっ!」


どうしたら良いのか分からずにとりあえず二人揃って転ばないように、相手の腰に腕を回した。


「あー、やっべ…転けるかと思ったぁ!」
「す、すいません…!」


体勢を立て直した所で視線を上に向けるとそこには髭の生えた男の子がいた。学生服を着ているから烏野高校の生徒かな。
申し訳なさそうに眉を下げている。


「悪かったなぁ、いっつも俺がここ来たらばあさんかじいさんしかいねぇからさぁ…こんな若いのがいるなんて思わなかった」
「おい、名前。そりゃどういう意味だ」


呆れた声音で話す繋心は俺の為に温かいコーヒーとおでんを用意してくれた。それを受け取って椅子に座る。


「ふはっ!あっつ!…うまぁー」
「コーチ!俺らもおでん!おでん!」


オレンジ頭の小さな男の子が俺が食べるのを見てから、ジャンプしながらそんなアピールをしている。


「そんな金あんのか?」
「うぐっ!」


残念そうに肩を落とした男の子は羨ましそうに俺のおでんを見つめている。ここは社会人のおっさんが奢ってやろう。


「繋心」
「おら、お前ら名前にちゃんと礼言え」


「ありがとうございます!」


バレー部の面々から頭を下げられて、笑って返す。良い子達だなぁ…本当に。俺の右隣にはさっきぶつかってしまった旭くんが座って左隣には蛍くんが座っている。


「蛍くんは少食なんだな」
「部活した後にそんなに食えませんから」


「そうだな、俺もそうだった」
「……………」


他の部員より少なめのおでんを食べ終えた蛍くんは俺を見て、鼻で笑った。


「マネージャーですか?その身長…っ!」
「おー、良く伸びるなぁ!蛍くんのほっぺは」


「やめ…」
「名前、あんまりイジメんなよ」


呆れた声と共に繋心が俺の手をとって蛍くんから離れさせる。少し眉を寄せている繋心に思わず笑ってしまう。分かりやすい俺の恋人だこと。






「静かになったなぁ」


烏野バレー部が帰って行き、静かになった坂ノ下商店で追加してもらったおでんを食べる。体がようやく芯から温まってきた。


「名前」
「んー?」


おでんから視線を上げると思っていたよりも近くに繋心の顔があった。


「けいっ…んっ、ん…!」


熱くなった舌を触れさせて、お互いに静かに目を開けて離れた。


「タバコ臭い」
「お前はおでんくせぇよ」


「いつもの繋心の味」


笑って言うと繋心が顔を真っ赤にさせて、レジの方へと戻っていく。あれは相当恥ずかしかったみたいだ。





「山口」
「ん?どうしたの?ツッキー」


「あの二人ってさ付き合ってんの?」
「えっ!?どの二人?」


「コーチと苗字さん」
「あー、どうなんだろうねぇ」