見えるもの
生まれてからずっと何も認識しなかった私の目は代わりに霊力というものを分け与えた。何も写らない筈の目にたくさんの人ではない物だけが写った。
「……やぁやぁやぁ!貴方様が新しい主ですか?」
可愛らしい声が聞こえてきて、顕現に成功したのだとわかる。目の前に現れたのは狐と顔の一部を面で隠した青年だった。
「初めまして、私はこの通り目が見えないがきちんと君達ような人ではない物は見えているから心配しなくて良い」
「……他は見えないの?」
穏やかな低い声が聞こえてきて、狐ではなく彼が喋ったのだと分かった。他の刀剣達にも説明した事をもう一度説明して納得してもらう。
何で政府はこんな文字も満足に書けない人間を審神者として採用したのか、疑問でしょうがない。
「そうだよ、他の審神者の本丸より君達に不便を掛ける事は多いかもしれないがよろしく頼むよ」
「この鳴狐がきちんと主様を支えていきますのでご安心を!」
元気一杯の鳴狐のお供くんは頼もしい言葉を私に掛けてくれた。それを遠慮せずに受け取り、狐の頭を撫でた。
「そう言ってくれると助かるよ、ありがとう。鳴狐とお供くん」
「何かあったら言ってね」
それからというもの私が何か困っていたら長谷部よりも速く来て、助けてくれる。鳴狐はそんなに機動が良かっただろうか?と少し疑問に思いながらも有り難く甘えている。
普段はお供くんばかりが喋っているが大事な事は自分で言ってくれる鳴狐に少しずつ少しずついけない感情を持ってしまっている事に気付いてしまった。
「どうしたの?」
「え?」
縁側に座って鶯丸が入れてくれたお茶を飲んでいると、鳴狐の声が聞こえてくる。床が軋む音がして鳴狐の気配がして隣に座っているような気がしたのは分かった。
「どうもしないよ、鳴狐」
「うそ」
鳴狐が狐の形にした指を私の唇に触れさせる。言葉に詰まってお茶を飲む。少し冷めてしまったみたいだ。
「言って」
「…………君に良くない感情を持ってしまってる」
鳴狐と目を合わせないようにしながら隠していた想いを告げると、鳴狐は黙ったままで私の言葉には勿論答えてくれる筈もない。
「好きってこと?」
「……そうだね。好きって事だよ。ごめんね、神様に対して」
顔を上げて鳴狐を見ると首を左右に振った鳴狐がまた同じように私の唇に指をつけた。
「鳴狐も好き」
「え?」
面頬を外した鳴狐が私の頬に触れて口づけてきた。まさか気持ちが伝わるともキスをされるとも思っていなかった私は何も言えないまま、俯く。
「嫌?」
「嫌なんかじゃない。……ただ気持ちが伝わるなんて思ってもいなかったから驚いたんだ」
微笑んだ鳴狐が私の肩に頭を寄せて、猫のようにすり寄ってくる。その頭を撫でてから私もさっきのキスのお返しと思いながら鳴狐の頬にキスをした。
「さっきのお返しだよ」
笑って言うと何故か鳴狐はすぐにまた面頬をつけた。