猫かぶりロボット
押し付けられるように政府の人間に渡された刀をインプットされた方法で力を送り込み無事に刀剣男士として顕現された。
たったそれだけの事だが周囲を取り囲むようにしていた政府の人間達から感嘆の声が漏れる。
審神者代行ロボットX-ONE
彼の製品名はそんな名前だった。今まで多くの人間の審神者が国の為に尽力し、その命を捧げてきた。
だが昨今の日本では審神者よりも安全で楽に収入を得る事の出来る仕事が増え、政府の力も弱まり法の力も弱まってきた。今までのように政府命令だからと強制的に審神者の仕事へと就かせる事が出来なくなった。
そこで開発されたのが審神者代行ロボットだ。刀剣を顕現させる為に必要な力を今も活躍する審神者を監視し、全身の検査を行う事で同等な力を持つ機械へと植え付けた。
初号機は刀剣男士とは似ても似つかない粗悪品を顕現させ、それもろとも処分された。
二号機は現在の数値とは劣っている刀剣男士を顕現させ、それもろとも処分された。
三号機は刀剣男士を顕現させる事は出来たが出陣や諸々の雑務処理がこなせず、それもろとも処分された。
四号機は刀剣男士を顕現させ雑務もこなす事が出来たが無駄な感情を持った為、ロボットのみ処分された。
そして今回生み出されのが五号機である。
「あんたが俺の主か?」
「よろしくお願いいたします。同田貫正国様」
きっちり90度に頭を下げたX-ONEは政府の人間に見送られ、初期刀である同田貫正国と共に本丸へと足を踏み入れた。
このX-ONE五号機には四号機で失敗したAIの感情について調整されたがこの五号機はある特徴を持っている。それは
「くっそ、窮屈だった。マジ半端ねぇわー!」
猫を被るのがとても上手い事。
先程まで機械じみた動作と言葉で政府に従っていた彼が突然、そんな言葉を喋りだしたものだから同田貫は何も言えずにX-ONEを見つめる。
「初めまして、俺は審神者業の代行ロボットX-ONE。呼びづらいだろうから正国が俺に名前をくれないか?」
「は?名前?何で俺がそんなもん考えないといけねぇんだよ」
視線を逸らして本丸内の建物に足を踏み入れようとしたら、乾いた音と共に体が弾かれた。
「俺の初期刀だろ?お願い」
「名前なんてつけた事ねぇから知らねえぞ。変なのつけても文句言うなよ」
腕を組んでその場に座り込んだ同田貫がX-ONEを見つめる。当の本人はというと本丸内に咲いている人工的な花や池を楽しそうに眺めている。まるで幼い子供のようだ。
「…………名前」
同田貫が誰にも聞こえないような小さな声で言った名前のような言葉にX-ONEはすぐに反応した。
「何々?それが俺の名前?良いなぁ!さすが正国だな!お前だけが呼べる俺の名前だからな。覚えといてくれよ?俺は名前な!」
表情など分からないと言うのに同田貫は今、目の前にいる機械がとても楽しく笑っているような気がした。
「良いからさっさと戦に連れて行ってくれよ」
「おー、任せとけ!俺も戦に行くからな!」
楽しそうに告げてきた言葉にまた同田貫は驚いて言葉を失う。今までの主なら共に戦に行くことが当たり前だった。だが顕現される際に頭の中に組み込まれた情報では審神者とはただの人間で、この建物の中で戦についての指示をくれるだけの役割と聞いていた。
「お前が戦ってるのに俺だけがのんきに見てるのは嫌だし、現場にいた方が指示もしやすいだろ?」
「それで良いなら別に良いけどよ」
「ありがとな、同田貫。んじゃ俺もいるし先に出陣するか?」
サラリと告げた名前は門を指差す。同田貫は久しぶりの戦に気分も高揚し、門へと向かう。名前の視界の右端に政府からの出陣命令でするリストが表示された。
*新しい刀を拾うこと
*入ったエリアのボスを倒すこと
「ほんと…当たり前のことわざわざ命令してくるんじゃねぇよ」
名前が右手を強く握りしめて力を抜くとそこにゆっくりと粒子が集まり、刀の形を成していく。それはやがて大太刀の形を作り、名前の手におさまる。
「さぁて、行くぞ。正国」
「おお!」
門をくぐり戦場へ降り立つと同田貫が名前の手を引いて物陰に隠れた。名前が物陰から顔を少しだけ覗かせて敵の出方を確認する。片目が遠くにいる敵にピントを合わせる。
「まぁ二人だからあんま意味ないような気がするけど、横隊陣で。ちなみに俺は攻撃しないからな。大太刀だし」
「あぁ、俺の獲物奪うつもりかと思ったぜ」
そこで見てろ。
微笑んだ同田貫は刀を握り敵の前へと立った。敵は短刀が三振り
雄叫びと共にただの作り物を切るように簡単に倒し、同田貫は奥へと進んでいく。それを周囲を警戒しながら名前が追いかけ、この場所でのボスが現れる。
「正国!」
「暴れるぜ!」
名前は同田貫に刀装を持たせるのを忘れていた。少しずつではあるが同田貫の体に傷がついていく。同田貫自身は気にしていない様子だが名前は、何も言わないながらも心配しているようだった。
「くそっ……だがまだまだだぜ!」
ようやくボスを倒し、敵が消えてから一振りの刀が落ちた。短刀にしては長いそれは同田貫と同じような打刀のようだ。
「終わったぜ」
「ごめんな、刀装持たせるの忘れてた」
「別に刀なんだから気にすんな。帰るぞ」
「うん…」
名前の目にあたる場所に内蔵されたセンサーが同田貫の今の傷の状態を認識し、同田貫が拾ってきた刀の名前や詳細な情報まで視界を埋めるように表示される。
「帰ったら手入れ部屋な」
「この程度舐めときゃ直る」