本丸登場



「主さん、今日はよろしくな!」
「よろしくな、愛染」


今日の我が本丸の近侍は愛染だ。うちの本丸は毎日、近侍を交代している。6面を解放してからは主に短刀に近侍をやってもらう事が多い。それも全部昼戦でまともに短刀を入れてあげなかった俺の責任なんだけれど。


「じゃあ早速で悪いが出陣してくれるか?」
「よぉし!祭りだ祭りだ!」


勢い良く飛び出して行った愛染を見送り、最近届いた政府からの知らせを見る。期間限定で6面の検非違使を倒すと、稀にドロップするという太刀
明石や愛染、蛍丸達が属している来派の刀だ。きっと愛染も喜んでくれるだろうし、欲を言えば明石がもう少し働き者になってくれたら良い。


「主さーん!行ってくるなぁっ!」


外から大きな声が掛けられて障子を開ける。愛染率いる短刀夜戦組が門の手前で手を振っている。


「おー!行ってらっしゃい!」


手を振り返して、愛染達を見送る。まぁ太刀を持って帰って来てくれたら嬉しいけれどあまり期待はせずにのんびり構えていよう。


審神者のみが使える専用のタブレットの電源を入れて、色々な審神者が参加している掲示板にアクセスした。


【明石を働かせたい。名前よ、いずこ 52戦目】
1 とある審神者
※期間限定 検非違使ドロップ来派名前を求めるスレ 
※明石の事を矯正させてくれると信じてる
※愛染を甘やかしてくれると信じてる
※でも名前は来ない

51 とある審神者
今まで来た人の部隊見てみたら愛染が必ず入ってる

56 とある審神者
>>51
さっきから試してるけど来ない
やっぱ明石のことあんまり好きじゃないって公式で載っちゃってるから、明石で来たって人いないな

60 とある審神者
キタァーッ!
もう投げやりになってた所にキタァーッ!
来派一人もいれてない。石切丸、乱、五虎退、鯰尾、骨喰、にっかり

75 とある審神者
>>60
おめ!
石切丸でドロップ率上がるとか?
でも来派と石切丸って何か関係あった?

80 とある審神者
>>75
刀派とは違う関係とか?でも伊達組と関係あるのは分かるけど、石切丸とは無い気がする


一通り掲示板を眺めてからしばらく経って、愛染達が帰ってきた。


「主さん、ほら土産!」
「えっ!?え、これ太刀だろ?」


「拾ってきた!」
「僕達には良く見えなかったんだけど、愛染が見つけてきたんだよ」


乱がそう言って、愛染の持っている太刀を受けとる。そんな事があるのか、良く分からないがとりあえずその場で顕現させてみた。すると桜の花びらを舞わせながら求めていた太刀が現れた。


「片倉景綱様の太刀、名前だ。戦はあまり慣れていないがよろしく頼むな」


黒のコートに身を包み、太股には明石と似たような黒いバンドがついている。他の来派とは違い素肌を殆ど晒していない。そしてイケメン。穏やかな笑顔を見せて、愛染を抱き上げている。


「よ、よろしくな。名前」
「あぁ。任せてくれ」






この本丸に今日、顕現された。大将もとても良い人で国俊や蛍丸を可愛がってくれていた。国行はいないみたいで安心した。


「兄ちゃん!」
「国俊か、どうし……あ…」


廊下から走ってやって来た国俊が握っている手
それを追っていくと見覚えのある顔があった。へらへらと笑って仕事もやらない俺の兄の明石国行だ。


「国行……」
「そんな呼び方せんでもええやろ、それにその顔止めてな」


「俺にお前を兄と呼べと?」
「前は呼んでくれとったやんか」


「それはお前の性格を知らなかったからだ。ろくに仕事もしないで、国俊と蛍丸が迎えに来るまでどうせ朝だって起きてないんだろ!?」
「可愛い弟に起こしてもらいたいから狸寝入りしとるだけやって」


鼻で笑ってしまいそうになって、視線を庭に移そうとした所で国俊が俺と国行の間に割って入った。


「来てすぐこれかよ!ちょっとは仲良くしろよな!」
「……あぁ、ごめんな。国俊」


「兄ちゃんは口だけだから!」
「よう見てるなぁ、名前のこと」


国行が俺の方を見ながら国俊の頭を撫でる。舌打ちをして背を向けようとした所で何か音が聞こえた。音のした庭の方を見ると、大将がカメラを構えていた。


「兄弟喧嘩は蜂須賀だけにしてくれよー」
「主はん。これは兄弟喧嘩やなくてただのじゃれあいですわ」


「何がじゃれあいだ!」


今度こそ国行に背を向けて廊下を歩いていく。あの態度は本当にいつになっても変わらない。イライラしながら廊下を曲がると誰かにぶつかってしまった。


「っ、すまな……あ…」
「こっちこそごめんね。あれ、君は…確か…」


曲がり角でぶつかってしまった相手は政宗様に使われてきた刀である燭台切光忠だった。片倉様に仕えていた時に見た事がある。政宗様と容姿が良く似た方だ。


「申し訳ありませんでした、失礼します」


謝罪をして頭を下げ、一番最初に案内された自室へと向かった。政宗様の刀がいるなんて思わなかった。まさか他にもいるんだろうか。