天


「準備して」

早朝。アポ無しで訪れた彼は相変わらずのクールな表情。
有無を言わさない態度に、私は言われるがまま財布とケータイをバッグに詰めた。

「天くん今日仕事じゃなかったっけ」
「午後からね」

今日は車で来ていたらしく、地下の駐車場まで降りる。すたすたと先を歩く天くんを小走りで追いかける。
いつもよく喋るわけでもないけど、今日は特に口数が少ない。

「どこ行くの?」

「ここ…」

「家……僕たちの」
「え?」
「僕はアイドルだ」
「…うん」
「アイドルは全てのファンを大事にする職業だから…今までもそうだったけど、きっとこれからも君には心配も迷惑もかけると思う」

「けど、君以上に僕を夢中にさせてくれる女性は今後も現れることはない。だから…」
「結婚しよう」

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