激しく打ち付けるような雨とラジオから聞こえてくるパーソナリティの笑い声が車内によく響く。会社で私が担当しているわけでもない国見くんとの共通の話題はゼロに等しい。家まで送ってもらうのだから何か喋らなくてはと考えるけど、彼氏職場以外での増しては、歳下の男の子に話す内容なんて、思い当たらない。
「学校たのしい?」などの会話はもう既に終わっている。「まぁ、そこそこです」だけの返答を広げられない。次も同じ返答だった場合の気まずさ今の比にならない。次の会話は慎重に選ばなくては…と考えているとラジオから気象予報士の声が聞こえて何気なく耳を傾けた。天気はコミュケーションで最も使える話題である。
明日は会社が休みで、明日の予報が晴れだったら、どこか行くの?とか、雨だったら家で何してるの?とか会話が続きそうなので、ラジオの気象予報士に手を合わせて感謝をした。

【先程から降り始めた激しい雨、風は前回の台風と同じ威力で明日の明け方まで続き時より雷もあるようです。今晩は、不要な外出を控えてる事をオススメします。】

数秒前感謝いた天気予報士が今でも悪魔のような囁きに聞こえた。彼に不要な外出を私させています。もしも、彼が帰りに事故でもあったら会社に私を送っていたと知れ渡り、加害者に成りかねない。

「…ごめんね?」
「別にいいですよ、雷鳴り始めたら運転したくないですけど」

そうだよね、私の家に着くまで雷様どうか鳴りを潜めてくださいっと願っても今日の星座占い最下位の願いが届くわけもなく、私の家の前に着いた頃にちょうど鳴り始めた。

「…国見くん、……ウチで、雨宿りしていきますか?」

こう言うしかないよね?だって、雷鳴ったら運転したくないって聞いちゃったのに、このまま帰して事故に合えば加害者になる。

「いえ、大丈夫ですよ」
「雷鳴ってても平気なの?」

断ってくれたことに少しホッとしたけど「全然大丈夫じゃないです」と言うので、「上がってください」としか言えなかった。

家に入るまでも、入ってからも何度も「すみません」と申し訳なさそうにしている国見くんを見て、この人なら一晩ぐらい平気かなっと少しだけ彼氏への罪悪感が減った。
少しだけ濡れたスーツから、彼氏が泊まりにくるときに着ている部屋着を出して、着替えてもらっている間に夕食の支度を済ませて、私はシャワーを浴びて戻ってくると国見くんは食べ終わった食器を洗ってくれていた。

「洗い物させてごめんね」
「いえ、ごちそうさまでした。美味しかったです」
「お粗末様でした。雨止みそう?」

そう言って窓から外へ視線を向けると霧が出て真っ白になっていても聞こえている激しい雨音と雷。

シャワー使っていいよ、なんて、罪悪感が消えてたらもう弟だと思えばいいんじゃない?と開き直るほどの対応に自分でも驚いた。また謝って「じゃあ、お借りします」とお風呂場へ向かった。
鞄から携帯を取り出しても彼氏からの連絡が入っているわけではない。この前自然消滅すればっていわれてからも業務連絡のような内容は送り合っている。はぁあーと深いため息を吐いた。

「…珍しいですよね、ため息」

と、シャワーを済ませた国見くんが立っていた。

「は、早かったね」
「まぁ、ゆっくりはできないです」
「ゆっくりしてくればよかったのに〜」

そう笑ってため息を無かった事にしょうとしているのに「悩み事あるんですか?」と振り返された。

「…あぁ〜お恥ずかしい話なんですが、彼氏とうまく行ってなくて」
「へぇー、あんなにゾッコンだったのに何でですか?」
「なんか、その、色々あって」
「別の女とかですか?」
「それもあるけど、金銭問題…かな?」
「へぇー、別れるんですか?」

職場に恋愛事情持ち込みたくないから職場の人は彼氏がいるしか知らないしそれ以上話した事ないのに成り行きとは言え、話してしまった。金銭問題浮気となれば、別れるの?って聞くのが正解だと思う。彼が言ったように、あんなにゾッコンだったのに…時の流れにも逆らえないよね…変わっちゃう事もある……そこで聞き流した言葉の事を大きさに気づいた。

「まって、!ゾッコンだったのにって、何で知ってるの?」
「花篭先輩とサークル一緒だったので、知ってますよ」
「え?!被ってないよね?」
「はい、被ってはいないです」

驚いて彼の話を聞くと高校の時部活に力を入れていたので、大学外のチームに入団していたので、サークルは適当にすると決めていた彼がオープンキャンパスで私を見かけていたらしい。知らなかった。教えてください、出来ればあの気まずかった車内で話して欲しかった。

「そうだったんだ、全然知らなかった」と彼の話に夢中になっていたのに「別れるんですか?」とまた振り返された。

「別れようとしたよ、何度か。でもダメだった」
「…流されたんですか?」
「…っはい」

と体まで縮こめて頷いた。別れを切り出しても流れて抱かれて、またね。なんて指折りでは足りない程ある。恥ずかしい…と顔を隠していると、フローリングがぎしっと音を立てたので顔を上げると目の前に国見くんのに綺麗な顔が、喋ったら息がかかってしまいそうなほどの距離にあった。「く、にみくん?」と息がかからない程、小さい声で彼の名前をの呼ぶと「…そうゆう所も好きです」とリップ音が部屋に響いた。

驚いて抵抗しょうと彼の肩に手を当ててもビクともしない。「彼氏大好きな所、可愛いです」とまた、わざとらしく音を立てた。唇が離れたときに自分の手で口を隠しても「流されちゃう程、依存ですよ、愛じゃない」と耳元で些細て「ゆり先輩がすきです」とまた唇に触れた。

何度も抵抗しすぎているウチに、身体が受け入れてしまった。彼氏とは比べものにならない程に優しい手、意地悪な言葉を囁いても、いいですか?なんて確認してくる律儀な態度。彼氏と体を重ねている時に味わった事もない、初めての感覚に自分でも驚いた。

そして、そのまま二人で一つのベッドで寝てしまって朝起きたら夢だったのではないか、と思ったけど隣には綺麗な顔の国見くんがいた。夢じゃない…とりあえず、シャワーを浴びようと身体を流してリビングに戻ると国見くんが部屋着から昨日着ていたスーツに着替え終わっていた。

「おはようございます、雨上がっているのでそろそろ帰りますね」

昨日のことが無かったかのように平然というので私も「気をつけてね」と送り出すと、玄関で靴を履き終わった国見くんがこちらを見て動きが止まった。

「どうしたの?」
「昨日のゆり先輩の顔最高だったので、焼き付けています」

平然だったじゃん!なんで、また思い出させるの!と顔が熱くなると「それも可愛い」と言われて、彼の胸板を押して「早く帰れ」とキツく言うとニヤリと企んだ笑みを浮かべた。
彼の胸板に当ていた手を彼の手に寄って、国見くんの腰へ回された。

「早く、別れてくださいね」
「…わ、別れても国見くんと付き合うとは言ってないよ」
「昨日あんなに感じてたのに、セフレなんですか?」
「っ!そんなの求めてないから!」

次第に私の腰に回っていた手を離れて、肩を掴み私の首元に顔を近づけて、またわざとらしく音を立てると次はチクリっと痛みが走った。

「綺麗につけたので、これで別れれますね」
「もう、辞めて!」
「来週はデートしましょうか?」
「人の話を聞いて」
「では、また連絡します!お邪魔しました」

と嵐が去っていた。ホッとするはずなのに何だが少しだけまだ国見くんと一緒に居たかったなぁと思ってしまっている時点で彼に恋してしまった。

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