思春期男子2
「へぇ〜、辻でも恋とかするんだなぁ」
「いや、普通だろう?辻だって、男だから頭の中では如何わしい事ばっかり考えてんぞ」
「いやぁー辻くんのえっちー」
「…いや、あ…」
「なぁ、どこに惚れたの?」
「あれだろう?顔」
「それ、お前だろう、弾馬鹿」
「はぁ?お前だって、花篭いいよなぁって言ってただろう、槍馬鹿」
…なんで、こうなったってしまったのだろう…。
学校が終わり、奈良坂と一緒に本部に向かった。ここまでは普通。奈良坂も俺も今日は非番。お互い合同練習までまだ時間があるからテスト勉強でもして時間を潰そう…と、まぁ、ここまでは普通。
「どこで勉強する?」
二宮隊の対策室でも、俺はよかった。けど、本部に入る直前、背後から「奈良坂ーっ」と隣を歩いている友人の名を叫ぶ声に振り返った。
「出水と、陽介か。ランク戦か?」
「まぁ、そうな所!って、思うじゃん?」
「奈良坂なら合同練習に参加するから本部にいると思って来たら大正解だったな」
「…はぁ、何が言いたい。俺は、今から辻とテスト勉強をしなきゃいけないんだ。お前らに付き合っている暇はないぞ」
出水と米屋はニヤリっと笑って「「俺らに勉強教えてくれ」」と米屋は俺と奈良坂の肩を掴んだ。…逃げ出したい。この人が真面目に勉強するとは思えない。
「お前ら、教えてもちゃんとやらないから嫌だ。自分達でやれ」
と、奈良坂が言ったので、俺も首を大きく縦に振った。「連ねぇこと言うなよ、俺らとお前らの仲じゃ?なぁ?」と米屋は奈良坂の首に腕を回して、俺の肩を掴んでいた手を離して、奈良坂の横腹を人差し指でツンツンっと突っついた。
米屋と奈良坂の仲は、同じ隊だから、認めよう。同じ隊の米屋と同じ学校だから出水も、そこそこ奈良坂と交流があるのを認めよう。…俺は…特に無さそう…じゃ…。
「奈良坂、忙しそうだから、また、今度一緒にテスト勉強しょう…俺…対策室へっ!」
言い終わる前に、俺に腕を掴み「逃れると思うなよ」と目の据わった奈良坂が言った。いや、逃げたいです。正気凄いいやです。
そのまま、引きずられるように三輪隊の対策室へ入った。案の定、米屋、出水は開始数十分でやる気が消えた。
「ぁあっ!わからんねぇ!」
「はぁ、可愛い女の子に優しく教わりてぇ」
この人たち、教わっている側なのに…文句が多い。奈良坂は慣れたもので、はいはい、と聞き流している。俺も聞かなかったことにしょうと、自分のテスト勉強を始めると出水が「お前、宇佐美に教えてもらえばいいじゃん?」と言ったので、勉強に戻る気がないのが伝わった。
「栞かぁ、あいつ、頭良いけど…違ぇんだよ!アレは身内だから、ふわふわしたドキドキがねぇんだよなぁ」
「まぁ、身内にふわふわドキドキしてたら引くな」
「だろう?三上も教えてくれそうだけど、冷や冷やスッンだよなあ」
「風間隊は、怖ぇ…あ、なら、花篭はどう?あいつ、良いやつじゃん?」
「あぁ、いいな、花篭!よし、奈良坂、花篭も呼んで勉強しょうぜえ」
俺と同じように自分のテスト勉強をしていた奈良坂に話を振った。「お前らが少しでも自力でやるようになったら考える」と奈良坂は答えた。
うん。そう!自力でやれるようにしてからしろ!花篭さんは、優しいからこの二人にもちゃんと教えそうだけど、それは俺的にあまりよろしくない。俺よりも普段から花篭と交流している出水、米屋がさらに仲良くなるのは、花篭さんに恋焦がれている俺からしてみたら気が気じゃない。
俺の気持ちを知っているから奈良坂は自力でやれと言ってくれたはず…!やっぱり、奈良坂は王子様ではないか?と思って奈良坂に視線を送ると凄く睨まれた。俺を睨んだまま「それに」と口を動かした。
「お前らと花篭が仲良くするのを、”辻″が見たくないらしいから、俺は、呼ばない」
「「「はっ!?!」」」
あれほど煩かった二人の口が一瞬止まった。俺の思考も一瞬止まった。椅子から立ち上がり「っ、ならさかっ!」と声を上げた。
「残念ながら、俺はお前が思っているような、王子様じゃないから!悪いな」と嘲笑った。いや、王子様みたいな優しい奈良坂返して!お前、だれ!なんて、俺が奈良坂を攻めるよりも、いつの間にか俺の両隣に立っている出水、米屋に肩をポンっと手を置かれた。ポンっなんて、優しく添えているなんてもんじゃない。そのまま「まぁゆっくり話そうぜ?」と押し潰すように俺を椅子に強制的に座らせた。俺は勉強がしたい。
本当に最悪と思った時に、三輪隊の対策室の外から「すみませーん」と聞きたかったけど、今は、聞きたくなかった優しい声が響いた。
それに、食い付いたのは、俺の両肩を押しつけている二人。「「はぁ〜い」」ときれいに声を揃えた
「入っていいぞ〜」
「花篭がくるの珍しいじゃん」
何度も言うけど、ここは三輪隊の対策室。なんで、出水は我が家のように迎えているんだよ。「奈良坂いますか?」と対策室を覗き込む顔がかわいい。
「どうした?」と視線をノートから#花籠#さんに向けた奈良坂に、花篭さんは少しだけムスっとした。あ、その顔もすき。
「どうしたじゃないよ、ノート!」
「…あっ、すまん」
「写し終わってない?」
「終わった。ありがとう」
「どういたしまして」
ノートを奈良坂から受け取った後、米屋や出水、そして、俺を見て「お邪魔しました」と丁寧にお辞儀をして対策室を出ようとした時花篭さんは振り返った。
「さっき、犬飼先輩がさがしてましたよ」
と、米屋を見ながら言った。
米屋に犬飼先輩が用事あるって珍しいなぁと米屋自身も驚いたように、人差し指を自分に向けて「え、俺?」と花篭さんに問いかけた。
微笑んで花篭さんは、首を横に振って、一瞬俺を見て、また米屋に視線を戻した。
「辻くんのこと探してたよ」
と最後の言葉は背を向け言い残して、対策室から姿を消した。
あれほど煩かった、米屋、出水が空いた口が塞がらないと言葉通りにポカーンっと言葉を失っていた。まぁ、俺もその一人だ。顔を赤らめる事しかできなかった。
出水と米屋が動き出す前に「お、おれ、いくから!」と走って三輪隊から逃げ出した。
その数秒後、「はぁぁ?!?!なに今の!!!!」とどちらの声か分からない叫び声が聞こえてきた。
俺だって、叫びたいほど驚いている。
俺が女性と話せないから敢えて、米屋を見て伝言をしてくれた。この優しさが嫌だと思う人がいるだろうか…想いが募っていくばかりだ。