一年生GW


最終日、いつよりも調子がいい。訂正、連休中の中で最も調子がいい。
いい高さで、いいタイミングでスパイカーにトスを上げれる。まぁ、二、三年に勝てるかは別問題。

「賢二郎、調子よくない?」

なんて、友人にも見透かされてしまう次第。そして一人俺の隣で「…小渓さんがいるからでしょ?」と周りに聞こえないように言うので、「…まぁ、それもある」と返しつつスクイズボトルを飲み干した。隣でまだ少し納得の行っていない太一を残して、コートへ戻った。

「ここまで、良く頑張りました。明日は休養日にしてあるのでしっかり体を休めること、それと課題などをまだやっていないとか無い奴は今から頑張りなさい。それでは、お疲れさまでした」
「「お疲れさまでしたっっ」」

やっと終わったと開放感に満たされている中、俺はこれからの事で頭がいっぱいだった。「るりちゃーん」と片付けをしている小渓さんを呼び止めた声に耳を傾ける。

「今日、俺ら片付けないから早めに送って行けそうだよ」
「あ、…あの、その事なんですが…」
「ん?どうした?」
「えーと、今日は同じクラスの子が送ってくれるみたいなので…ごめんなさいっっ!」
「あ、そうなの?一人じゃないなら良かった。気をつけてね」
「ありがとうございました、ゆっくり休んで下さい」

幸福感、いや、違う。もっと今のこの感情に的確な言葉があるけど…今はこれでいい。「…同じクラスって…あれ、何かの予定あるのかな?俺達約束してないのになぁ〜」と太一は、ネットを止めてあった紐を緩めながら言った。でも、俺は頷きもしないで「お前、課題おわったの?」と、話題を変えると体育倉庫に向かっていた足が止まった。

「……なに一つ手をつけてません」
「がんばれよ」
「え、まって、賢二郎は?同じだよな?今から一緒に頑張るんだよな?」
「俺はもう全部終わったよ」
「……っ!!この裏切りもの!」
「…見せてやろうと思ったけど、裏切りモノなんで、一人でがんばれよ」
「え、ごめん。うそ!みせて」

これで、確実に小渓さんを送ってくるのに太一は来ない。課題をどこに置いてあるから伝えると、何で部屋にいないんだ?と不思議に思った太一は「…お前、どっかいくの?」と俺に問いかけた。当たり前だよな、いつも一緒にいるなら手渡しをすればいいのに、場所を伝えたら気づくよな。「……送ってくるンだよ」と視線を彼女に向けて、零した。

「………はっ?!」

そんなでかい声を出している太一を置いて俺はさっさと片付けて小渓さんの元へと向かった。


女子更衣室から指定ジャージから制服に着替え終わった小渓さんが体育館から少し離れたら所で待っていた。その姿を見ただけで、俺はまた幸福を感じてしまう。彼女の元へ駆け寄って「ごめん、行こうっか」と言えば「お願いします」と軽く頭を下げた。
正門までも、正門を出ても、彼女は俺の一歩後ろを歩いている。歩くペースが早いのか?いや、いつもより遅いはずなのに…やっぱり、恐いと思われているのかと不安に襲われて「…か、課題、終わった?」なんて、当たり障りのない話題を持ち出した。

「あと、少しかな?白布くんは?」
「終わった」
「…凄いね!部活で疲れているのに勉強もちゃんとやるなんて、凄いね!」

目を輝かせて言うので、耐えれず視線を逸らして「…褒めすぎ」とだけ返すと「あ、でも、本当凄いよ」なんて、笑った。そして、「ごめんね」と悲しいそうな顔をした。

「…なにが?」
「…あの、セッターが恐いって思っちゃってる事…」
「話したくないなら無理には聞かないけど、同様経緯か教えてくれない?」

と振り返ると、脚を止めてコクリっと小さく頷いた。