一年生gw



連休の折り返し地点に到着した。
だからと言ってメニューが変更される事なく二、三年生は練習試合が続いていた。

今日も練習試合が終わった。

「鍵返してくれるから、まってて」
「また、どっか消えたりしないでよ」
「もう、勝手に行きません!!今日もよろしくお願いします」

と瀬見先輩と天童先輩が持ってくるまでの間、少しだけ一年生の体育館から光が漏れていた。そっと覗き込むと練習は終わっていた。帰り道に良く天童先輩が「あの辺は残らないねー」なんて言っていたので、探してみると見当たらなかった。他の人達はとまた覗き込むとドアがいきなり開いたので「うわぁ」と声を上げてしまった。
そこには、クラスメイトの白布くんが「何やってんの」と言わんばかりの顔をしていた。少しだけ会話んしていると先輩たちが戻ってきたので、話の途中だったけど、白布くんに「ばいばい」と言って先輩の元へむかった。

「ほら、またどっかいった!」

なんて、天童先輩には言われてしまったけど…ちゃんと駅まで送り届けてくれた。その帰りに瀬見先輩が「白布と仲いいの?」と聞かれた。

「同じクラスなんです。後、川西くんも」
「だから、か。前も喋ってたよね」
「へぇ〜仲いいんだあ〜」
「どちらかと言うと、席が前後の川西くんが仲がいい…?話事は多いです」

なんて、たわいのない会話をしている天童先輩が「ちょっとトイレ」と駅までの途中にあるコンビニへ入ってしまって、瀬見先輩と二人きりになった。少しの間、突然天童先輩が消えてしまった混乱と気まずさで沈黙になるもそれを断ち切ったのは瀬見先輩が「…るりちゃん」と呼ぶのでビクッと肩を揺らすと「やっぱり」と瀬見先輩は確信を持ったように続けた。

「俺の事、恐い?」
「……怖くないです」
「俺の顔を見て同じ事言える?」

ゆっくりと瀬見先輩の顔へと視線をあげると「…ぅぅっ!」と声を上げてしまった。

「俺何かしちゃった?いってくれたらちゃんと謝るから」
「瀬見先輩は何もしてないです!!」
「じゃあ、どうして?」

まっすぐ見つけまれる視線に嘘は付けないので、小さく「…私、バレーボールのセッターが恐いんです」と言えば、「は?」と帰ってきたので、ゆっくり話した。

「中学の時、バレーボール部のマネージャーをしていたのは友達に誘われて断るのが怖かったからです」
「あぁ、女子って大抵だよね」
「一つ上のバレーボール部のセッターは凄く人気で周り女子から好かれていました。私はその先輩に、好きでもないのに告白をしました」
「は?」

人気の先輩が卒業する時に当時の友人が一人、告白して振られて、また別の子の友人が告白して、振られて、そして、グループ内で告白していないのが私だけになった。
だから、好きだとも思っていない先輩に「好きです」と言えば、その先輩は何かと褒めてから振っていた。でも、私の時だけその先輩は、少しの間を置いてから何かを言おうとした。その間が怖くて「聞いてくれてありがとうございました」と逃げてしまった。多分、あの先輩は私が好きでもないのに告白した事に気付いていた。だから、恐い。
バレーボール部のセッターはチームの司令塔で周りをよく見ているので、何かと見抜かれてしまうのかと思って、反射的に、感覚的に、反応してしまう。
失礼なことをしてしまったからどんな罪を受けても何も言えないけど、いざその先輩と同じポジションの人を見つけてしまうと恐くて身震いをしてしまう事話し終えると「それって、及川?」といつの間にか戻ってきた天童先輩が問われて頷くと瀬見先輩が驚いた。

「じゃあ、北川第一出身だったのか?だからあんなに仕事できるんだな」
「…マネージャーも友達に誘われて断れなくて…」
「そうか?るりちゃんはちゃんと仕事出来ているからそんな感じしねぇよな」

と視線を天童先輩に向けると「それだ!」と声を上げた。「なんだよ、お前いきなりでかい声出して」と瀬見先輩がいえば「その呼び方だよ」と続けた。

「たぶん、瑛太くんのるりちゃん呼びが及川を思い出させて恐いんじゃない?瑛太くんが呼ぶ時だけビクッてなってることが多い」
「俺、そんなに及川に似てるか?」
「似てはない」
「なんだよそれ、上げて落とすな」
「…ポジションは同じです」

と私が答えると「それだけ?」とごもっともな回答に思わず「…すみません」と頭を下げた。

「あぁ怒ってねぇよ、まぁ今更呼び方変えるわけにも行かねぇからひとまずは慣れてほしい…かな」
「わかりました!ビクッとならないように気をつけます」

駅まで送ってもらい、ホームで帰りの電車を待つ時にフッと思い出したのは同じクラスの二人はどこのポジションだろう…。バレーボール部という言葉に反応して聞いていなかった。でも、やっと仲良くなれたクラスメイトに私の中学校時代の話をして、軽蔑されたら嫌だなぁ。今のままの距離がいいのかな?