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一年の修了式に泣き崩れてから、二週間経ち、二年生へ進級した。友達の結奈(ゆな)は、あの日のことを唯一知っている。

「なぁ、ゆり本当に大丈夫なん?」
「大丈夫だよ!もう、落ち込んでいられないし、アレは私が悪かったんだよ」
「もし、辛くなったらウチの事、絶対呼んでよ?」
「ありがとう。学校の時は普通にしてて貰えると嬉しい」
「……わかった!」

二人で校内へ進み、二年生と書かれている掲示板へと足を進めるともう人で溢れて返っていた。「うわ〜、全然見えへん」と後ろで人が減るのを待っていると「お前ら、クラス別々」と二週間ぶりに聞くをビクッと心臓が飛び跳ねた。

「えー、うそでしょ?!」

と彼の存在よりもクラスが離れた事に驚いていた。「嘘つく意味が分からない。一組と二組」といつも変わらず、顔色変えずに、指をさしてどっちがどこのクラスか教えてくれた。
角名くんと目が合うのはあの時以来…「教えてくれて、ありがとう」とニコッと効果音が付けれるように微笑んだ。

「え、ゆり、ウチと離れて寂しくないの??」
「寂しいよ?でも、隣だから休み時間会いに行くね?」
「私も毎回いく〜」

下駄箱で抱きしめ合っていると「いいなぁ〜俺も混ぜてや」とスーパースター、宮侑が両手を広げて、抱き合っている私達、二人まとめて抱きしめようとするので、二人で阻止した。

「宮くん!やめて!」
「それ以上、侑はこっちに近寄らないで!」
「なんで?今日、朝練なかったから汗臭くないからハグするなら今日がええよ?朝からシャワーしてきて、シャンプーのええ香りするでぇ?」
「「結構や(です)!!」」

私と結奈は、宮侑が近寄らないように、胸元で両手の向けた。「なんでや!」とむすっとした宮侑へ、結奈は言い切った。

「アンタのファンが怖いからや」
「は?」
「もう、アンタに近寄ったらファンに目つけられて楽しい学生生活を棒に振る事になる!」
「そりゃ、俺、モテるから仕方ないなぁ、ごめんな?」
「半径ニメトール以上近づかないで」
「おぅ!俺モテるから、悪ぃな」

なんて、鼻を高く伸ばしている宮くんを下駄箱において、教室へ向かった。
教室の前で「ゆり、絶対なんかあったらすぐ言ってな?」と凄く、心配してくれるのは登校時とは別の理由。「なぁ、なんで、置いていくん?」と再び宮侑がわざとらしくて泣き真似して現れた。

「俺、ゆりちゃんと同じクラスで嬉しいわ」
「ちょっと!侑!ゆりに近寄らんで!」
「あぁ、なんも聞こえへん!さぁ、いこう、ゆりちゃん」

宮くんに手を引かれてながら、新しいクラスへ進んだ。
昨年は運が良かった。クラスも、席も…でも、今年は…「おぉ、ゆりちゃん、俺の後ろか、よろしくな」とどこまでも運が無いようだ。


宮侑。稲荷崎高校でのスーパースター。私がその事を知ったの入学してわりとすぐだった。
去年はクラスが違ったから話す事は無かった。角名くんが持っていたバレー雑誌に【稲荷崎高校出身 高校界 ナンバーワンセッター】と大きく書かれていて、彼がどれだけ凄い人なのか良くわかった。
そして、同時に彼は学年問わず熱狂的なファンがいると角名くんが教えてくれた。

「あいつのファン、この前、喧嘩してた」、「彼女が、すげぇ言われている所見かけた事ある」等、ドラマ、漫画の中だけでしか存在しないと思っていた修羅場を何度か見かけていても、角名くんは驚く事もなく興味なさげに語っていた。
私と結奈は、怖すぎっ!と声をあげた事を良く覚えている。絶対関わらないようにしょうと思っていた…はずのに、黒板に背を向けて、脚を広げで、椅子の背もたれを肘置きにして、ニコニコと私に愛想を振舞っている。

「前、向かないの?」
「まだ、先生来ないからええんちゃう?」
「…」
「なぁ、ゆりちゃんって角名と仲ええよな?」

宮くんからの言葉にドキッとしたけど、「去年仲良くしてもらってたよ」と怪しまれないように彼の目を見て答えるとふーんっとつまらなそうなに返ってきた。なら、聞かないでそっとしておいて、ほしい…と願いは叶わず、彼の口は止まらなかった。

「アイツの事、好きなん?」
「なんで、そうなるの?仲良くしてもらってただけだよ?」
「なーんや、去年、良く部室で花篭、花篭ってよう名前出てきたから好き合ってるんかと思ったわ〜」
「多分、席が近かっただけだよ!」

まだ、癒えない傷に宮侑は丁寧にもみほぐして、塩胡椒を加えてくれた。早く席替えしたい、一刻も早く宮侑から離れたいと、願って一週間がすき、さらに一か月が過ぎた…担任は一向に席替えをする様子もなかった。

その間に、宮侑のファンが怖い…と言うのは昨年までだけだと宮侑本人から聞けた。

「他に彼氏おるくせに俺に寄ってくるから、振った女がおんねん!多分、あいつが、元凶だったから気にせんでええ」

確かに、私が宮侑と一週間席が前後で、よく話しかけられて居ても何も起きたかった。一か月経っても何かされる事は無くて、少し安心した。
けど、私が一切求めていないバレー情報を毎日くれる。「今日、サムが〜」「ーーんで、北さんに怒られた」「銀がなぁ〜」と男子バレー部の名前をそろそろ全部覚えられそうだ。

そして、忘れようとしているのに、「角名、一年のチア部の子に告られてんよ?ずるいわぁ」「あいつ、一年彼女と中庭でイチャイチャしとった」ともう、それはそれは丁寧に教えてくれた。

角名くん、彼女出来んか…そっか…とクラスが離れて、話す事も無くなったけど、まだやっぱり好きは消えていなかった。


お昼からの授業は、大きく舟を漕ぐ人、うつ伏せになって寝ている人と真剣に授業を聞きているのはクラスの三分の一ぐらい。「先生!」と静かな授業中手を挙げて「食べすぎちゃってお腹痛いので、保健室行ってきてもいいですか?」と声を絞り出した。

「ええよ、行っておいで!保健委員はだれ?」
「あ、私です!」
「一人で行けるか?」
「はい、大丈夫です!行ってきます」

ゆっくりと席を立ち、いびきをかいている宮侑の横を通り、教室を出て、保健室へと向かった。
保健室の扉には、先生は職員室にいますと札がかかっていた。先生が不在だから鍵がかかっているわけじゃない。ガラッと、保健室の扉を開けて、ふらふっと足の力が抜けてきた。

白いカーテンを開けて、硬いベットにダイブするとギィッとベッドが悲鳴をあげた。消毒の匂い、お昼休みの間に干してくれていたベットカバーからお日様の匂い…気持ちいい…気持ちいいから、涙が溢れた。

すると、開けっ放しのカーテンから、隣のベッドにいた人が「また、泣いとんの?」と声が聞こえて、顔を慌てて拭き取って振り返る。隣のカーテンを少し開けて、こちらを覗く人を確認するとホッとした。


「サボりですか?赤木先輩」




NO Title運は尽きました