三大欲求の七割食欲
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稲荷崎高校は全国出場すると部活が多くある。もちろん俺の部活、バレーボールもそうや。後は、吹奏楽部、サッカー、野球、テニス、スポーツ系はだいたい強い。
んで、そいつら、スポーツやっている奴らはだいたい顔がいい。俺らとツムも宮ツインズと呼ばれてファンが付いているみたいに他の部活もそうや。
野球は大体が彼女おるわ。サッカー部は、全員顔が整いすぎとってキモイぐらい。
そんで、俺らとは比べものにならん程、人気なんが、バスケ部のエースの二年生。斎藤直哉(さいとうなおや)
爽やかで、アイドルのような顔立ちで、誰にでも笑顔で頭もまぁ良くて、モテる。校内一のイケメンは斎藤や。ツムは絶対に認めんけどな。
俺やって、斎藤ってヤツの存在は知っとた。そこそこいいヤツだとついさっきまでは思った。
「なぁ、さっきの、本当に斎藤なん?一瞬別人かと思った」
「俺も思った」
角名も斎藤の本性みて、若干引いとる。ってか、俺らがなにしたんっていうん?なんや、喧嘩売られた気分で感じ悪いわぁ。まぁ、元から関わる事なんて、ほとんど無かったからええけどなぁ。
午後からの授業は寝とってあっという間に終わった。
まだ、三年生がおらんうちに新しいスパイクの練習しょうやとツムが煩いから五本だけ付き合ってやった。なのに、アイツは本当に文句多いねん。
「おい、サム!一瞬頭ん中違う事考えとったやろ!」
「は?夕飯なんやろなって思っただけや!」
「今からスパイク打つって時に何、夕飯考えとん?ちゃんとやれ!」
「.あぁー、もう、うっさいな、次はちゃんと飛ぶからいいやろ」
「あ゛ぁ、なんや、その態度!お前、俺のユキちゃん抱いてなに偉そうにしとんねん!」
「はぁ?今、それ関係ないやろ?」
どんだけ、ユキちゃん根に持つねん、コイツ!言い合っているうちにどっちかの手が出た。そんで、どっちかがボール投げて、ぐしゃぐしゃになった時に、アイツが狙いを誤って一年生に当たりそうになったんを俺が凌いだ…が…「っ痛ぇ!」
「っ!」
「治、大丈夫?」
「ツムのせいで、突き指した」
「俺のせい…っ?!…まぁ、仕方ないからテーピング巻いた…あれ?テーピング救急箱に入ってへんで?」
「今、買い足しに行ってくれてるの、忘れたの?」
「本当、最悪。俺、保健室でテーピングもらってくるわ」
「北さん達、来る前には戻りなよ」
本当、ツムと関わるといい事ない。いつもの事やけどな。はぁ〜ってでかいため息を零しながら向かうと保健室から少し離れた、廊下の端に寄りかかった見覚えのある顔に「なにしとる?」と声をかけた。
「治くん!私、今週当番だから各階にプリント張りに行ってたんだけど……」
と、語尾を濁す花籠さんの視線が保健室へ向かっていたので、そっと覗き込む。すると、保健室の中には男子生徒一人と、養護教諭の先生一人が今からおっぱじめますよっと言わんばりのキスをしとって、思わず「うわぁ〜ッ」と声が出た。
「保健室の先生に頼まれたから、余りのプリント渡さないいかんのだけど、入れなくってってさぁ〜…あっはは」
「最悪やな」
「慣れてるから、大丈夫」
「…は?」
「男子生徒の方、直(なお)だから…」
直と聞いてて、すぐに顔が出てこなかった…が、花籠さんが「斎藤直哉、ね?」と言い換えたので、あぁ〜アイツかと思い出した。
「アイツと仲ええん?」
「ん〜、幼馴染みかな?家が隣同士なんだ」
保健室から少し離れた廊下で肩を並べて、早く終わってくれんかなっと考えていると「治くんはどうして、ここに?」と問いかけてきた。
「突き指して、テーピングなかったから貰いにきた」
「はよ、戻らんと怒られそうやね」
「っ!!」
そうや、北さんより先に戻らんと怒られてしまう。校内でやる方があかんねん!俺は花籠さんみたいに終わるの待っとれん!保健室、突っ込んでいったろうとしたら「良かったら私の使う?」と突っ込むのをやめた。
「なぁ、さっきの慣れたってどうゆう事なん?」
鞄が保健室の中でも、教室のロッカーに予備があるからと言われて、急ぎ足で教室へ向かう時、先程の会話で違和感があったので、聞いてみた。
「直があぁゆうこと学校内でする時、私だいたい見張り役なんよ」
「なにそれ?」
「邪魔が入らんように外で見張っとけよ…?的な? 」
「はぁ、きも」
「あははは、だから、ごめんね?」
いや、花籠さんが謝る事なんて何もないやろ?「花籠さんは何も悪くないやろ?」と言い返すとふわっと微笑んで「ありがとう」と言った。
いつも角名が座っている椅子を借りて、花籠さんと向き合えるように座った。んで、「あぁ、ココね」と手慣れた手付きでスルスル〜とテーピングを巻いてくれた。別に頼んでへんのにめっちゃ早かった。
「ありがと」
「どういたしまして、部活遅れんように気をつけてねぇ」
と、ロッカーに置いてあった予備のポーチにテーピングとハサミをゆっくり締まっている花籠。
「自分、これからどうするん?」
素朴な疑問だった。
だって、花籠さんの鞄は保健室の中で、きっと今真っ最中だから、入るに入れへん。だから、花籠さんは帰れん。なら、どうするん?
「あぁ〜…う〜、ここで時間潰してから、鞄取りに行こうっかな…」
なんや、さっきまで楽しそうに笑っとったんが嘘みたいな程、寂しそうにするその顔、嫌いや。
「なら、バレー見に行うへん?」
「…ぇ…」
「なにそんな驚いとる?ここでおるより、俺のカッコいい姿見とる方が楽しいでぇ?」
「っうふふ、行ってみよかな?」
あ、また、ふわっと笑った。
花籠さんはその顔が似合とる…いや、待って!「今、笑う所なかったやろ?!」今は俺がかっこよかったやから、キュンってする所やろ。
「私、治くん派でよかったわ〜〜」
「もうちょっと、気持ち込め言えや」
「ふふ、ありがとう」
「うん」
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