キミがワカラナイくてハナレタイ
6
今日はもう、週の真ん中。
なんか、今週は時間が過ぎていくの早いなぁ…と、治くんとよーちゃんが車から降りて、残された車内で携帯を開いて、後悔をした。
「おまたせ〜、次はゆり送ってくなぁ…ってどうした?さっきまで楽しそうにしとったのに、難しい顔しとるよ」
「…直から、連絡入ってた」
「あぁ、なんて?」
「どこにおる?何やってん?とか、そんなやつ」
よーちゃんは、あっはは〜どんまいなや。と乾いた笑いで直の話を聞き流して「治くん、ええ子やな」と話題を変えた。
「優しいよね」
「ゆりには、治くんみたいな子がええと思うなぁ」
「…直とは似ても似つかんからね」
「あーぁ、また難しい顔に戻ってんよ」
難しい顔にもなっちゃうよ。
なんで、こんな風になっちゃったんやろなぁ。
直は、気づいたら一緒にいた。
昔、幼稚園の頃一度だけ「わたし、なおくんのおよめさんになりたい」と言った事をある。でも、直は「ゆりちゃんみたいなブサイクはいいや」と振られた。
多分、この初恋を小学校高学年まで引きずっていたし、振っておきながら直は、今まで通りだったからもしかしたら…なんて、期待もしていた頃がある。けど、小学生最後の夏に、「なぁ、ゆりの友達の子、めっちゃおっぱいデカくない?えろいな」と言ってきた時、あぁ、直は私を異性と見ていないのかと気付かされた。
中学に上がったら、女“で“遊ぶという事を覚えた。そんな幼馴染み見たくなくて、直と関わらんようにしたいのに「弁当作って」「宿題見せて」「今日、泊めて」とか、関わってくる。
直から離れたい…彼氏が居たら変わるかなっと中学の頃仲良くて、いい感じの男友達が居た。この人と付き合ったら何かわかるかなって、無謀な期待をしてました。
そして、そんな期待はすぐに砕け散った。仲良くしていた男は、週明け、私避けるようになっていた。理由は知らない。仲のいい友達が居なくなったよりも、直に「アイツと付き合えると思っとたん?勘違い野郎やな」と嘲笑われた方が嫌だった。このセリフが直じゃなくて、仲の良かった友達からの方が良かった。
なんで、好き勝手遊んでいる直に言われなきゃいけないの?と腹がたった。でも、そんな事を直に伝えたところで何も変わらない。
帰りが、今みたいに遅くなるとすごい機嫌が悪い。私は家政婦なンかな?自分は遊ぶけど、お前は家にいろ。声出して笑うな、連絡は早く返せ、など、直が関わると最近は、苦痛でしかない。嫌だって突き放しても、同じ学校、家が隣…離れていかない関係。
はぁー、と深いため息が溢れた。
「あっそう言えば、ちび達がが、ゆりの作るマドレーヌ食べたい言ってたでぇ!気晴らしにまた作ってあげて」
「作りたいっ!いいの?」
「ええよ!ええよ、大歓迎や。……あんま考えすぎない。なるようになるから!な?」
「全然意味わからんけど、よーちゃんに言われるそれ好き!」
「うん、私もわからん」
なにそれ、と笑い合っているうちに家へ着いた。お礼を言って、鍵を開けた。家の中に入ろうとしたらドアがいきなり開き、開いた隙間から手首を掴まれて、引きずり込まれ、ガチャっと玄関の鍵が閉まった。
誰?なんて、焦る事なんてない。
勝手に家へ入り込んで、力一杯私を引っ張る人なんて、一人しかいない。
「…直、痛い。離して」
「お前、遅いすぎ!俺が帰ってこれなくなったからって出歩くなよ、アホか」
未だ、私は直に抱きしめられたまま…抱きしめられているわけではないか。潰されているって感じ…だって、痛いもんな、これ。
「夕食をバイト先に持って行って一緒に食べただけ。よーちゃんだったでしょ?」
「バイトばっかりで、お前色気ねぇな」
「ソーデスヨ…ん?直、私のシャンプー使ったでしょ?」
「おぅ、さっきシャワー借りた」
何だろう…疲れたのかな?ツッコミたくない。
ため息を吐いて「私、お風呂入るから」と言えばすぐに私を解放して、「ちゃんと寝ろよ」と直が自分の家に帰って行った。なんのためにウチに居たんだろう。あ、潰してストレス発散かな?…やめよ、考えたくない。
直の言う通り、お風呂上がりすぐに布団に入る…なんて、良い子ではない。
お風呂上がりに、キッチンへ向かった。
お風呂に入って体を癒して、次は精神。ちびっ子達が喜んでくれるのは嬉しいから、粉を図り始めた。お菓子作りは、分量が大切。一グラムでも間違えてしまったら味が変わってしまう…だから、真剣に取り組む。余計な事なんて考えなくて済むから、気分展開には最適だ。
夜な夜な、我が家から甘い香りが漂い、朝起きても甘い香りがほんのり残っていた。
今日は、朝バイトが無い。
学校へ行くには少し早い。
昨晩、よーちゃんの車から降りた時とは比べものにならないほど足取りが軽い。カラン、カランッと喫茶店の扉を開けた。
「あれ?ゆりちゃん?おはよう、どうしたの?」
「お、ゆりちゃん、おはようさん」
「おはよ、ゆりちゃん」
オーナーに続いて、常連さんにも挨拶をして「よーちゃん達にマドレーヌお届け!まだいる?」と聞いたら「まだ準備してたから裏から入りぃ」とお邪魔する許可をもらった。常連さん、オーナーに「またねぇ」と言ってから裏口へ回った。
喫茶店の方は古びた趣のある外装だけど、裏に回れば綺麗な二階建ての一軒家。インターホンを鳴らして「ゆりです」と言えば、外まで聞こてくる程ドタバタと大きな足音が近づき、玄関の鍵を早く開けてっと騒ぐ声。ガチャっと、鍵が開いた音から数秒後。
「ゆりーーっ!」「ゆり姉ぇーーー」
「「おはよっ!」」
「息ぴったりだね!お支度は終わった?」
「「おわってなーい」」
玄関のドアを支えるよーちゃんに視線を送るとクタクタになっている…子育てって大変なんだなぁと感じた。
「じゃあ、一緒にお支度しょうか?終わったら良いものあげる」
「「っ!する!こっちー!」」
と、小さな手二つに惹かれて、家の中へお邪魔しました。「ゆり、おれのたおるかっこええやろ?」「ゆりねぇ、どっちがかわいい?」と持ち物自慢を聴きながら手伝って十分後、二人とも保育園にいく準備ができた。
私が持ってきた紙袋から、二人にご褒美を渡した。
「「.マドレーヌ!!!」」
「保育園から帰ってきたら食べてね」
「「ありがとう!!」」
「どういたしまして」
朝から気持ちの良いほど息ぴったりで心身共に癒される…なんて、数秒。
「なぁ、そっちがおおきい!こうかんして」
「いやや。ぜったい、あげん」
「あさごはんンとき、わたしのうぃんなーたべたやん!」
「おそいんが、わるい」
「そんな事で喧嘩するなら、ゆりのマドレーヌぜんぶ、お母さんが食べよう〜」
「「.それは、ぜったい、あかん」」
「なら、仲良くしぃや」
さすが、お母様。見事に二人の喧嘩を収めた。
二人はマドレーヌをダイニングテーブルに置いて、保育園の鞄を持って、帽子を被り、やっと登園。よーちゃんが「乗ってく?」と誘ってくれた。けど、ここから学校は歩いて十分もしない距離なので、「歩いていくで、いいよ!ありがとう」と断った。名残惜しそうに車から手を振る二人を見送って、学校へ向かった。
バイトがある日よりは、少し早い。
バイトがない日よりは、少し遅い。
沢山の生徒が昇降口にいる中一際目立つクラスメイトを見つけた。
「おはよう、角名くん」
「…おはよ、」
朝練だったの?なんて、当たり障りのない会話して上履きに履き替えていると「ゆり!」と駆け寄ってきた彼にも「おはよう、朝練お疲れさま」と伝えた。
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