夢は欲望に忠実である
7
送ってもらって、ツムが風呂から出てきたらすぐ風呂入ってベッドへ入り込んだ。
「なぁ〜サム、誰と飯食ったん?角名と銀、以外に友達おる?」
おるわ。でも、お前に喋ったら話が長なって寝れんなる事、俺は知っとる。だから、無言を貫いた。いつもだったら、宿題あったなぁ〜とか、朝飯何やろうな〜と考えて、眠っていくのに、今日はそんな事考えでも、なんや、身体ふわふわしとって眠りに入れた。
「治くん、似合ってるね」
ゆり…?なんや、この数時間で少し髪の毛伸びたか?大人びたゆりがニコニコ笑っとる。喫茶店に似とるけど、似てへん。何処か分からん店ん中に、俺とゆりが二人。ゆりはカウンター席に座って、俺は厨房におる。なんや、ここ。でも、喫茶店に居た時よりも楽しそうで、こっちも楽しなってきた。
「…馬鹿にしとるんか?」
「してない!してない!かっこええなぁって見惚れてました」
「よー言うわ」
「治くんは、ずっとかっこええよ?」
「ほんなら、今日も頑張れるようにいつもの頼むわ」
いつもの?なんやそれ?なんか、体が勝手にゆりが座っているカウンターの方に近づいた。ゆりが「しょうがないなぁー」とカウンターテーブルに手を付き、身体を俺に近づて、俺の唇にチュッと小さなリップを立て「今日も頑張ろうね」と、頬を赤く染めた。
そんな顔、俺見た事ない…ええなぁ。
「じゃあ、私いくね」とよく分からん店の扉を開けて、後ろ姿を見送ったら「っ!……!」さっきまでふわふわしとった雰囲気をぶち壊す声が微かに聞こえてきた。いや、今は要らんねん。まだ、このふわふわした感じ堪能させろ。ここで、待っとったら、ゆりが帰ってくるかもしれんやろ。「……っ!」もう一回頬が染めるゆりがみたい。「…っ!サムっ!!」だから、黙っとれ、言っとるやろ。
と、目が覚めたら、俺らの部屋だった。
…夢やってわかっとたけど、なんで、お前に起こされて起きな、あかんねん。腹立つ。ツムを睨み付けたら「今日は俺が早よ、起きれたで?お前、寝坊やな」一日、早く起きただけで、何言っとんね、こいつわ。
「…飯、」
二階からリビングへ向かうと後ろからツムも付いてきた。珍しく二人で並んで朝飯食ったら「なぁ〜、昨日誰と飯食ったん?」とお前は彼女か。…気持ち悪い。それを聞き出すために早く起きて、わざわざ並んで朝飯食っとんのか…「教えん」と言って、ツムの卵焼きに二つ、俺の口へ運んだ。
「…っお前、俺のやろ!何食っとんねん!」
「喋っとるから要らんかと思ったから食ってやったわ。感謝しぃや?」
「おぉそうか、ありがとうなサム!…って、なるか!ボケ!返せ」
「無理やな。もう俺の腹ン中」
「はぁ?なら、お前の寄こせや」
「アホなん?俺のは俺のや」
ダイニングテーブルで朝飯食っとる俺らを横目でソファに座っとるおかんが「あんたら、時間ええの?」と言ってきた。
家出るンは、いつも三〇分。時計をみたら長い針が四を指してるんから問題ないやろ?
「何言っとん、おかん。俺らがいつも出る時間は三〇分やで?んで、今はまだ、二〇分!かわええ息子をそんな追い出すよう事言わんといてやぁ〜」
「ツムが、うっさいから早く出てってほしいんやろ」
「はぁ?サムの方がうっさいわ!」
「どっちとも煩いのは変わらんでええけど、この時計十五分遅れとんで?」
「「……は?!?!」」
いや、何嘘言っとんねん、おかん!とソファの前にあるテレビの時刻を見たら三十八分…で、残りの白米を流し込んだ。「なんで、それ、もっとはよ言わんの?!」とツムがおかんに文句を言っとる。それには俺も同感。
「侑には、昨日の夜にも言ったでぇ〜?忘れたん?」
「あ〜ぁ、聞いたような…ってなら、昨日夜中にドラマ見る前に直しといてくれてもええやん!」
「アンタら怪我した時、私何もしンでも勝手に治ったから、これも治るやろう思ったわ〜」
「そいつは、機械や!俺らと一緒にすンな!」
ツムがおかんとまだ揉めとるうちにさっさと部屋から荷物持ってきて「行ってくるわ」と家を出た。後ろから待てや!なんて、叫び声が聞こえてくるが、絶対待たん。遅刻だけは絶対いやだ、と思ったのに、この日見事に朝練を双子揃って遅刻した。
朝練後、北さんに怒られた。けど、すぐに終わった。授業に遅れんようって事らしい。助かった。
俺ら二人を見捨て行った一人、角名が昇降口で止まっているのが見えた。あいつ、後ろからど突いてやろかな…なんて、考えとったら、角名のせいで全然見えて居なかった姿が一瞬見えて「ゆり」と駆け寄った。
「おはよ、朝練お疲れ様」
あぁ、夢とは違う。昨日と同じゆりや。ゆりに近寄るとふわっと香ばしい香りがしたから「今日もバイトしてきたん?」と聞くと首を横に振った。
「今日、コレ届けに行っただけだよ」
手に持っていた紙袋を広げた瞬間、甘い香りが鼻から全身へ伝わり…「欲しい」と言葉が出た。腹が鳴らんでよかった。
「いいよー、お昼に友達にもあげる予定だから、はい、どうぞ」
「ありがとう!」
「角名くんもいる?」
わざわざ角名に聞かんでええよっの声と重なって「ゆりちゃん、それなに?俺も食べたい」と一番来なくていいツムが来よった。ゆりは、いいよいいよって、角名とツムの手を綺麗にラッピングされたお菓子を渡すのをみて、モヤッとした。
たぶん、このモヤっは、アレだな。
俺の食いもん、取んなよって言うモヤっだから、「ゆりちゃんからお菓子嬉しいわぁ」と手に置いたままのツムのお菓子奪ったら、モヤッは消えてなる…奪ったらいいねん……と、手を伸ばした時ツムが「なぁ」と深刻そうに、自分の手元と俺の手元を見比べて言った。
「サムの方が大きい!交換して?」
「あげるか!あほか、お前」
「朝飯の卵焼き食ったやろ?」
「それは、遅いからや」
「そっちが俺ンや!」
「はぁ〜、もうツムのも俺に寄越しぃ。そんなヤツの無い分ない!」
「なに、俺が正しいみたいな言い方しとるん?卵焼き食ったんお前やろ??悪ぃんサムやんけ!」
何デカイ声出してん?喧しぃわ!早よ、教室行って、ゆりのお菓子食べたいんだから、ツムの分、寄越せっと歩き始めても、俺らの口は一向に止まらんかった。
すると、肩を上下させて「っふふ、あははっ!」と小さな手で顔を覆って、文字通り、腹抱え混んで笑い始めたゆり。
初めて、声出して笑うゆりを見た。
初めて、大笑いするゆりの声を聞いた。
一緒に歩き始めていた角名、ツムも目を丸くしてゆりを見ていた。他の生徒も足を止めてゆりの姿を見ていた。
「ふふっ、ごめんっ!っふふっあはは!」
「まぁ、俺面白いから笑ってもらえるのは嬉しいわ〜〜」
「大丈夫?」
「っふふ、だっ!い、じょぶっふふ」
ゆりの笑いが収まりかけて、屈んでいた上半身をゆっくり起き上がり見えたゆりの目尻に大きな雫が一つ。
それの雫を、振り取ろうとお腹を抱えていた手が顔に近づいたのを見て、すかさず、その手を掴んだ。
「…かわええな、ゆり」
ゆりの手を掴んだ手とは、反対の手で、そっとゆりの目尻を拭った。
「なんか、ゆり見とると腹減ってくンなぁ」
目尻を拭った俺に驚き、さっきまであんだけ声だして笑っとったんが嘘みたいに止まった。なんや、もうお終いか?もっと見てたかったんだかなぁ…でも、俺を見て、目をパチパチさせているゆりもらかわええからええか。
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