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※学パロ注意 ふらふらとしながら新しいワインのボトルに手を伸ばす細い腕を掴んで止めた。 なまえは不服そうな目で睨んできたが、アルコールで潤んだ瞳と紅潮した頬でされても俺の心臓が高鳴るだけだ。 「いくらなんでも飲みすぎた。お前そんな強くねーんだから、明日二日酔いで動けなくなるぞ」 「自分らってたいしてつよくらいくせにー」 「うっせ」 呂律の回っていない舌でぶちぶちと文句を言いながら、なまえは勝手に俺の家に置いている猫のクッションを抱きしめた。二人きりの飲み会を始めてからかれこれ二時間ほど経つ。ガキの頃から知っているこの幼馴染は、時折唐突に一人暮らしの俺の家に酒を持参して訪ねて来る。大学生にもなって女が男の家にのこのこ来んじゃねえと怒鳴ってやりたいが、コイツがうちに来るのは大概理由があってのことなので無碍にもできない。 「で、今回は何があったんだよ?いい加減そろそろ話せ」 手持ち無沙汰にクッションの猫の耳部分をいじっていたなまえの体が、ピクリと止まる。そして肩を震わせたかと思うと、隣にいた俺に抱きついてきた。 「っあぶね、ワインがこぼれるだろーが!」 「ふえ…きーてよ、ちゅーやぁ…!」 なまえは俺の胸に頭を押し付けながらみーみーと泣き始めた。くそっ、こいつ人の気も知らないで…。無防備が過ぎる幼馴染に呆れながらも、仕方ねえと頭を撫でてやる。心臓の音聞こえてねぇだろうな。 「今日、じゅぎょーがおわって、きょーしつの前とおったらーーー」 その時間、なまえは空き時間だった。けど1時間後には最後の授業があるので帰るにも帰れず、図書館で時間を潰そうと廊下を歩いていた。ある教室の前を通ると、基礎演習の授業を1年間ともに受けるーーーいわゆるクラスの男子といえる数名の青年が、教室で話をしていた。 自分と同じように空き時間なのかなと大して気にも留めず、その場を離れようとした時、ふと自分の名前が聞こえ立ち止まった。悪いと思いつつも自分のことが話題にのぼっていれば気になるもので、そのまま立ち聞きしてしまった。ーーーすぐに後悔する羽目になることにも気づかず。 『あーなになに、お前も玉砕したの?』 『そ、ちょっと夕飯に誘っただけなのによ』 『これでクラスの男子3人目?なまえのやつ、ほんとガード堅いよなー牛ちちのくせに』 『ほんとほんと。別に減るもんじゃねーんだから、ちょっとくらい揉ませろっての!』 聞こえたのはそこまでだった。気づいた時にはなまえは教室の前を走り抜けていた。男たちのあまりに下品な物言いに涙が止まらず、そのまま最後の授業をさぼり、途中のコンビニで酒を買って中也の家に駆け込んだ。 「ひ、ひどいっよ…うしちち、なんて…揉ませろ、なんて…ぐす」 思い出してまた傷ついたのか、なまえはぽろぽろと泣きながら俺の胸に顔を埋めた。またかと思いながら、クラスの男子ぶっ殺すと心の中で舌打ちする。 なまえは昔からそうだった。 周りに比べて体の成長が早かったなまえは、幼い頃から性的な嫌がらせを受けることが多かった。小学校高学年の頃にはしょっちゅう公園や家の周りで不審な男に声をかけられ、その度に俺が撃退していた。 女子高に入学したなまえはその二週間後には電車で痴漢に遭うようになった。車両を変えても毎日被害に遭うので、完全に目をつけられていたのだと思う。当時俺が通っていた男子校は運動部に力をいれてるせいか少し辺鄙な場所にあり、バスを乗り継がなければならず、一緒に電車通学をしてやることが出来なかった。女性専用車両もない線だったので、しばらくなまえの親父が早朝に起きて出社前に送り向かいをする羽目になった。幸い4月生まれだった俺は16歳になってすぐに原付の免許をとり、少し遠回りをしながらもなまえを学校まで送るようになった。おかげで寝不足が解消されたなまえの親父にはえらく感謝されたのを覚えている。それは俺が青鯖野郎と決着をつけるために転校した後も続いた。 幼少期からいままでをそんな風に過ごしてきたせいか、なまえは人見知りで男が苦手だった。だが幼馴染の贔屓目を抜きにしても可愛らしい顔立ちと、細身で小柄な割に豊満な胸は周囲の男を刺激する。本人の気持ちに関係なく、男たちが寄ってくるのだ。 「そんなくだらねえ連中のことなんざさっさと忘れちまえ。お前の見た目しかみてないような奴等だ」 「ん、…うん…っ」 でも、となまえは泣きながら続ける。 「このまえっ私に告白してくれた人だって…ふ、私の、ようりょーが悪くても、がんばるとこがすきって言ってくれてたのに…ぐす、けっきょく、からだめあてだった…っ」 自分の中身をみてくれる男の人なんて一生現れないんじゃないかと悲観にくれるなまえの言葉を否定し、細く柔らかい体をぎゅっと抱きしめる。 一月程前のことだ。 複数の学年が受ける講義で、課題のためになまえは隣の席に座っていた一学年上の男とグループを組むことになった。そして課題の発表が終わったその日、なまえはその男から告白されたのだった。 優しげで清潔感のある男の告白をなまえもはじめは断ったが、相手はなまえの内面に惹かれたことを切々と語り、お試しでもいいからもっと自分のことを知ってから決めてほしいと食い下がった。これまで見た目で決め付けられてきたなまえは、男の言葉を無碍にすることが出来ず、結局押し切られる形でデートをすることになった。 初デートの日、ランチの後ショッピングモールをまわった二人は、休憩がてら広場のベンチに座った。周りはカップルだらけ、夕焼けのいい雰囲気にのまれたのか、男は馴れ馴れしくなまえの手を握り、顔を近づけてきた。驚いたなまえは顔を背け、男を止める。そして、 『あ、あの!』 男は避けられたショックを隠さないまま、神妙な顔でなまえの顔を見つめる。 『わ、私、お付き合いする方にお願いしている条件があって…!』 『条件?』 『はい、その…キスは付き合って三ヵ月後、ぇ、ぇっちなことは半年くらい経ってからじゃないと、嫌なんです…』 『はぁ!?』 予想外の条件だったのだろう、男は素っ頓狂な声をあげて仰け反る。そしていやいやいやと首を振りながら、なおもなまえに迫った。 『や、やめてください!』 『いやおかしいって!こういうのはそんな期間どうのこうので決める話じゃないでしょ!大事なのは二人の気持ちだって!!』 『っ私は気持ちが固まるのに、そのくらい時間が必要なんです!』 そう言ってなまえは渾身の力で男を突き飛ばした。ひっくり返った蛙のような無様な姿をさらして、男はベンチから落ちた。明らかに女受けするタイプのその男はプライドが傷つけられたのだろう、わなわなと震えながらなまえに怒鳴り散らす。 『カマトトぶりやがって、ふざっけんな!』 最初の紳士的な態度は何処へやら、男はなまえに暴言を吐いてその場を去っていった。男の姿が見えなくなってから、しくしくと泣き始めたなまえの傍に近寄り、隣に腰掛ける俺。そっと綺麗に束ねられた頭に手をまわし、肩を貸す。 『ちゅう、やぁ…っ』 『気にすんな、今は泣いとけ。肩くらい貸してやるから』 頷いたなまえは俺の肩に顔を埋め、静かに泣いた。優しく頭を撫でながら、なまえに見えない角度で俺は某ノートの持ち主のようにニヤリと笑う。 (計画通り) なまえが男に話した条件は、俺がなまえに提案したものだった。 俺以外の男とはデートどころかまともに話したことすらないなまえは、当然のように今回のことを俺に相談してきた。ことの経緯を聞いた俺ははっきりと断れなかったなまえに苛立ちもしたが、昔から押しの弱いところのあるこいつの性分を否定することはできず、いくつかアドバイスをした。 ・服装は露出控えめで。タートルネックのものを着用し、出来れば長ズボンが好ましいが、スカートの場合は必ず膝下まで長さのあるものを履くこと。 ・二人きりになるような場所は避けること。暗い場所も禁止。映画館など言語道断。 ・万が一男が顔を近づけたり、肩や腰に触れてきたら、キスは三ヶ月、セックスは半年経たないと受け入れられない旨を伝えること。 ・もしもの時のため、デート中は中也が見守る。中也からの電話は最優先とし、携帯は常時音が鳴る設定にしておくこと…etc。 三番目の内容にはなまえも顔を真っ赤にしてうろたえたが、中也が言うならと素直に言いつけを守った。そしてその結果がこれである。 恐らく太宰あたりが聞いたら、男の言っていたことは正論で、奴が去ったのは十中八九俺が原因であることを指摘するだろう。 だが俺にとっちゃ正論なんぞくそくらえだ。こっちが何年なまえに片想いをしてると思ってる。他の男なんぞに横から掻っ攫われてたまるか。 高校時代は女子高だったからよかったが、共学の大学に通ういまなまえを狙う狼どもは多い。 俺もいい加減、『隣の家に住んでた幼馴染の中也』から脱却しなければならない。なまえも前回と今回の件で、世の男がどれほどくだらなく、そして俺が特別かを理解したはずだ。 俺の胸で泣いていたなまえがようやく落ち着いてきたのを見計らって、俺はちゅっとわざと音をたてて、なまえの額に口付けた。驚いたなまえが顔を上げ、大きな目を真ん丸くさせて俺を見つめる。 「ちゅーや…?」 「なあ、なまえ。俺にしとけよ」 なまえを抱きしめてる腕に力を込めた。大きく柔らかな胸が押しつぶされるように自分に密着する感覚に、眩暈がしそうになる。けれどここで欲に負けては台無しになると理性を総動員して自分を押しとどめた。 「俺は誰よりお前のことを知ってる。頑張り屋で引っ込み思案なとこも、甘えん坊で泣き虫なとこも…全部知ってる。全部ひっくるめて、お前のことが好きだ」 ーーーだからお前も、俺のこと好きになってくれ かっこよく決めたかったが、最後のほうは声が震えてしまった。くそ、情けねえ。 顔を隠しながら動揺して身じろぐなまえを、ぎゅっと押さえつける。今回ばかりは逃がしてやれない。再び目の前の額に口付ける。今度は、何度も。 最初は抵抗したなまえもようやく観念したのか、次第に力を抜き、俺に体を預けた。林檎のように紅潮した頬と潤んだ瞳で、けど俺からは目を離さずに、なまえは振り絞るように答えた。 「ちゅーやはずっと、わたしにとって特別で…だいすきなひと、だよ」 これ以上好きになったら中也きっと困っちゃうよなんて、生意気を言う唇を塞いでやる。 はじめは触れるだけのキスを繰り返し、想像よりずっと柔らかな唇を堪能する。なまえが艶っぽく切なげな溜息をこぼしたのを見計らって、舌をねじ込んだ。 小さな体は一度びくりと震えたが、抵抗はしなかった。なまえなりに俺に応えようと、濡れた舌を必死に絡ませてくる。それが可愛くてたまらねえ。 どちらの唾液かわからなくなるほどキスを繰り返し、ようやく唇を離す。羞恥のせいか酸欠のせいか、真っ赤な顔のままどこかぼんやりとした様子のなまえの顔に触れ、口の端のこぼれた唾液を拭ってやる。 それをみてはっと正気を取り戻したなまえは、息を整えながら照れたように俺を見つめた後、少し悪戯な笑みを浮かべて言った。 「キスは付き合ってから三ヶ月後、じゃなかったっけ?」 「…バーカ」 こっちは十年以上お前に惚れてんだ、お釣りがくるぜ 嬉しそうに微笑んだ女の唇に、俺は再び口付けた。 十年分を召し上がれ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 公式学パロの卒業後という設定で。あの学校が男子校かは謎。 |