任務終わりに恵と一緒に渋谷まで来て、とりあえず東堂に頼まれた高田ちゃんのアクキーを買った。恵に「アイドル好きでしたっけ?」って聞かれたけど友達に頼まれたお使いだよ、と言うとすぐ納得してくれた。
「何食います?」
「逆に何食べたい?私先輩だから奢ってあげるよ」
「え」
「なんだっけ?なんか生姜効いてるのが好きだったっけ?」
「いや外食でそこまで気にしなくていいです」
いい機会だと思った。
恵と話して自分が恵のことをどう思っているか考えるタイミングなのかもしれない。
それで食事に誘ったというのもある。
恵は少し悩んだ後、強いて言えば韓国料理を食べたいと言い出したので近くの店に入った。
ヤンニョムチキンとタッカンマリを頼んで前菜を突いていると、沈黙が訪れる。ここはもうストレートに聞いてみよう。
「…恵って私のどこが好きなの?」
「ッ」
何気なくそう聞くと、恵はあからさまに動揺したのか飲んでいた水を吹き出しそうになっていた。面白ー!悟くんが恵虐めたくなっちゃうのもわかるなぁ。
「…何ですかいきなり」
「いや、気になって」
「ストレートすぎませんか」
「ストレートな方がわかりやすいじゃない」
それはそうですけど、と少し顔を赤くする恵。
運ばれてきたヤンニョムチキンを取り分けながら、私は他のメニューにも目を通した。マッコリって美味しいのかな。あ、でもお酒だ。
「だって交流会で勝ったらさ、私と恵は付き合うんだよ?知っときたいじゃん」
「勝つ前提で考えてくれてたんですね」
「当然」
というのはまあもちろん本心ではあるけど。
「…勝ったら言います」
「えー何それー」
「食いましょう、早く」
恵がもうこの話は終わりにしたそうにしているので、仕方なく私も頷いた。
はあと大きく息を吐くと、ウーロン茶を飲む姿は年相応でやっぱり可愛い。…可愛い?
私恵のこと可愛いと思ってるのか。
「そういう突拍子のないところ、五条先生にすごく似てますよね」
「なんか似たようなこと硝子ちゃんにも言われた気がする…」
上京してから悟くんは一応私の保護者だったので、事務手続きや書類やらで絡むことが多かった。みんなが言うほど私的に悟くんはウザくないし面白いなって思うんだけど、それって私も悟くんに似た部分があるからなのかな。
…なんかヤダな。
「家入さんと仲良いんですか」
「ん?まあ周りに女子が硝子ちゃんと真希しかいないから」
真希と恋バナとか何も盛り上がらないんだよな…。真希の口から出る男の話って大体憂太くんのことばっかりだし、それも恋愛対象って感じじゃなさそうなんだよね。憂太くんが真希をどう思ってるかも私絡みなさすぎて謎だし。
それに比べると、硝子ちゃんはどんな話題でもある程度オールマイティに対応してくれるのが流石だ。
「真希さんと名前さんが話してるところって任務と修行のイメージしかないです」
「まあ、基本的にまともに会話しないからね。真希って憂太くんの愚痴とか実家の愚痴とか修行の話ばっかりだし」
ああ、と恵も頷いた。恵の中の真希の評価は私と同じらしい。
恵と他愛もない話をしていると、私のスマホに着信が入る。誰かと思えば悟くんだった。
また厄介ごとだろうか。
「ごめん、悟くんだわ。出るね」
「どうぞ」
「はい、名前ですけど」
『今忙しい?』
「とても忙しい。恵とデート中」
私の一言にじろ、と恵が私の方を見たがにこにこ笑って応じると目を逸らされた。耳が少し赤くなっている。ちょっとウブすぎない?
タッカンマリのスープを飲みながら耳を傾けた。電話口の悟くんの声は特に緊迫感のあるものではないから急用では無さそう。
『青春だね』
「ウチと恵はズッ友やからな!」
『その趣味の悪い京都弁やめな?』
「やめます」
『それにしても恵とデートか。ふーん…』
「……何その感じ、悟くんキモーい」
『あー傷ついた!キモいとか言わないでよ!』
「そろそろ本題に入ってくれます?」
肩を使って耳にスマホを挟んでメニューをパラパラと眺める。次アレ頼もう、この激辛なんとか炒めってやつ。
『次の任務だよ。悪いんだけど僕と同行してくれないかな』
「いいよー」
『今どこにいる?前乗りしたいから迎えに行きたいんだけど』
「え?今から?」
『今から』
ええ〜…そんな急な話?
ヤダなーそれだったら行きたくないな。何やかんやで疲れてるんだけど私。あと恵とのこのデートも切り上げなきゃいけないじゃん。
「てかさ、それ私も同行しないとダメ?悟くん一人で行きなよ」
『名前が一緒じゃないとダメなの』
「何でー?」
『何でも』
……なんかめんどくさい案件な気がしてきた。電話無視すれば良かったな。いやでも悟くんの電話だけは無視出来ないんだよな…。
悟くんの声は恵には聴こえていないが、私がゴネだしたのを見て恵も何か思うところがあるようだった。
「良いですよ、仕方ないです」
私がグダグダ言ってると、恵が一言、そう言って店出ましょうと伝票を持ったので私は慌ててその手を掴んだ。
私が払うからそれは。
「恵が良いよだって。今渋谷だから車で迎えに来て」
『オーケー』
電話を切るとはあとため息をついた。あの男何やかんやで私のことこき使いすぎでは?
人手不足とは言えこっちは呪詛師一人連れて帰って結構良い仕事してるんだけどなぁ。
「五条先生今から来るんですか?」
「らしい。ごめんね」
「任務なら仕方ないです」
恵はそう言うと席を立った。私もタッカンマリのスープを飲み干してその背中を追いかけた。
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