「んでよォ、センコーに呼び出されてよ。職員室まで行ったらなんて言われたと思う!?」
さぁなー。なんて気のない返事を億泰に返す。
放課後、こいつとぷらぷら町を歩くのはもう日課になりつつあった。
仗助オメェ俺の話聞いてんのか!?と、少々不満そうな億泰だったがその言葉すらも右耳から左耳へすっぽ抜けていった。
何処に行くでもなく二人で学ランのポケットに手を突っ込んで町を歩く姿は正真正銘の不良だ。
「で、今日はどーすんだ?」
「そーだなー。」
小腹も空いたし近場でジャンクフードでも食いに行こうと提案しようとしたが、視界の端に見知った姿を捉えてやめた。
「悪い、億泰!俺、用事思い出したわ。」
俺の一言を聞いて、明らかに落胆する様子を見せた億泰を何とか言いくるめて見送った。
さて…と、自分はある建物に身体を向ける。
そのままズンズン建物…もとい一生懸命クレーンゲームに齧り付く少女に向かって歩を進めていく。
(真後ろに立っても気付かねぇ…)
それ程までに真剣にアームとにらめっこをしているという事なのだが、その様子に笑いを堪えられない。
暫く様子を見ていると、どうやらケースの中には山積みにされた小さめのマスコット。
女子がよくカバンなんかにぶら下げてるアレだ。
その中の一つを懸命に狙うもアームが弱過ぎて獲れる気配はない。
(こーゆーのって、正攻法では絶対に獲れない設定になってんだよな。)
彼女は、獲れないのが悔しいのかはたまたもう意地になってるのか、糸目を付けずに硬貨を投入していく。
俺が見てるだけでももう500円以上は投資していた。
「ンンンンン〜!!!!なんで獲れないのさァ!アームこんなグラッグラじゃあ掴めるわけないじゃん!!」
「プハッ!」
耐えられずに吹き出してしまう俺。
すぐ後ろから声がして大層驚いたようで凄い勢いで振り返る。
「仗助!?」
「よぅ、なまえ」
居たなら声掛けてよ!!!と顔を真っ赤にさせるなまえに悪い悪いと悪びれた様子もなしに謝罪する。
「で?何を一生懸命狙ってんだよ?」
「あ、あれなんだけど…」
そう言って指さすのはふわふわした星型のキーホルダーだった。
他のマスコットに少々埋まるようにして配置されたそれは、やはり正攻法では獲得が難しい。
俺は徐に自分の鞄から財布を取り出した。
「い、いいよ!仗助!」
「いいからいいから」
遠慮の意を見せるなまえの頭にぽん、と手を乗せる。
そうすればそれ以上は何も言わなかった。
財布の中から1枚の100円玉を取り出し投入口に入れて、躊躇いもなくボタンを押す。
その様子をなまえは固唾を飲んで見ていた。
ボタンを離すと軽快な音を立ててアームが開き、そのまま一直線に降りるも狙いのマスコットを挟み込める位置には落下しない。
「あーあ…」
ガックリと肩を落とすなまえ。
いや、これでいい。狙いはバッチリだぜ。
そのままアームを閉じると上昇を始めた。
アームの爪にはしっかりと狙いのマスコットのタグを引っ掛けたまま。
「グレート!!!」
そのまま取り出し口まで移動して、はい、おしまい。
なまえに至ってはマスコットが途中で落ちるのではないかとハラハラオロオロ。
だけど、見てみろよ。しっかり獲れたじゃあねぇか。
「ほらよ、これが欲しかったんだろ?」
俺の手の中にあるふわふわのマスコットをなまえは3秒ほど凝視してから受け取った。
「仗助!ありがとぉ!!グレートだよ!!」
心底嬉しそうにするコイツを見て顔が綻ぶのを感じた。正直ニヤけを抑えられない。
隠すために口元に手をやった。手をやったところで、なまえは星のマスコットに夢中で気付きゃしないだろうけどな。
「でもよぉ、お前そんなに星好きだったっけ?」
「え!?…えと…」
聞けばなまえは驚き、ごにょごにょと口篭るではないか。
何かまずいこと聞いたか?と頭を捻っていると蚊の鳴くような声で何かを呟きだす。
「じょっ…仗助の首筋のアザと…同じだったから…」
見ると顔を茹で蛸のように真っ赤にするなまえ。
いや、なんと言うか…こいつァ………
「っ…、グレートってんだぜ……」
口元に当てた手は未だ離せず。
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お題メーカーにて
ゲームセンター 頭を撫でる 星