6/29 Happy Birthday 上鳴 電気  




朝から本当に騒がしい奴らだ。
上鳴 電気は、心の内でほくそ笑む。
6/29は、彼の誕生日。
雄英に登校すると、朝からおめでとうの嵐。
しかし、しかし…だ。

「なまえから、まだ何も言われてねぇ…」

机に頬杖を突いて、ぼやいたのは既に昼食後。
休憩中、上鳴の隣の席に移動してきた切島が、その一言を聞くと、あぁ…、と何か納得した様子だった。
上鳴となまえは、正式にお付き合いをしている関係。所謂恋人どうしなのだが、その肝心の彼女からは、何も言われていないのだ。
まさか、俺の誕生日知らないのか?と、上鳴は考えたが、朝から他の面々が騒ぎ立てているのでその線は薄い。
そもそも、朝挨拶を交わしたきりあまり今日は喋っていない。
もしかして、知らぬ所で彼女を怒らせてしまったのか?と、考えている事がそのまま顔に出ている為、百面相に忙しい上鳴。
それを見た切島が、一言。

「楽しみは最後まで取っておけってことだよ。」

なにやら含みのある言い方で、宥められてしまう。
そうこうしているうちに、放課後。
彼女からのアプローチ、未だ無し。
痺れを切らした上鳴は、少し不機嫌な足取りで自分の机の上で荷物を纏めるなまえに近付いた。

「帰っぞ〜…」
「わぁっ!?で、電気くん…っ!」

後ろから声を掛けたのは確かだが、彼女のオーバーな驚きに今度は上鳴が驚く。
そして、そんな驚かなくていいじゃん…と口を尖らせた。
帰り道、どこかソワソワと余所余所しいなまえに、いよいよ何かしたのではないかと心配になる上鳴。
と、気付くと隣を歩いていたなまえは、歩を止めていた。
振り返ると、少し離れた所に立つなまえ。
彼女は、ぐっと意を決したように前を向き言う。

「電気くん、誕生日おめでとう!」

顔を真っ赤にしている彼女に、上鳴は目を見開いた。
そして、鞄をガサガサと漁りだすなまえを黙って凝視。
鞄の中からは、女の子らしいピンクのラッピング。

「あ、あのね、…これ」

黄色のリボンで結ばれたそれを両の掌に乗せて、なまえは上鳴に近寄る。
上鳴は、言葉が出てこなかった。
結局は彼の思い過ごしだった事と、昼過ぎ言われた切島の言葉を思い出していたからだ。
そして、もしかしなくてもそれは上鳴へのプレゼント。
彼女の掌に乗るそれを凝視する彼に向かって、なまえは真っ赤な顔を更に真っ赤にさせる。

「クッキーを…、焼いてきました」
「え…?」
「いや、あの…あまり、上手に出来たとはお世辞にも言えない出来だったから…、渡そうか悩んでて…」

ここまできて、余所余所しかった理由を察する。ただ、単になまえは緊張していたのだと。そして、彼女への愛しさメーターが物凄い勢いで振り切るのを感じる上鳴。
そっと、包みを受け取ると彼はこう言った。

「ちょっとさ、そこの公園寄ってかね?」

近くの公園を親指で指す上鳴に、なまえは黙って頷いた。
公園のベンチに二人で腰掛け、上鳴は包みを開けていいかなまえに確認する。
相手が頷いたのを確認すると、黄色いリボンを解いた。

「うまそ〜!」

中には、歪な星型が沢山詰められていた。
形は歪だが、焼き色は綺麗なものばかりだ。
彼の様子を黙って見ているなまえ。
上鳴は、その星を一つ摘んで口の中に放り込む。じっくり咀嚼した後、笑顔でこう言った。

「すっげぇ、うめぇわ!サンキュな!」

なまえは、涙を滲ませる。
上鳴は、別に気を使った訳でも、嘘を言っている訳でもなく、本当にそう思っていた。
その事を理解しているからこそ、涙が出たのだが、上鳴本人は、大焦り。
オロオロしだす彼を見て、なまえは吹き出した。

「わたしの好きな人が、電気くんで良かったよ…本当に。」

人差し指で自分の涙を拭うなまえは、夕日に照らされている。
俺も、そうだよ…、そう言って、彼女の頬に触れ、親指で拭われていない涙をピッと拭う。
なまえの、光を集めてキラキラ輝くその瞳には、バカみたいに真面目な表情の上鳴が映っている。
彼は、それを隠す様に手の平で覆った。
そして、夕日に照らされる二つの影は、一つに重なる。
ほんの数秒重なり合ったそれが離れる…、照れくさそうにする上鳴と、はにかんで頬を赤らめるなまえは、お互いに笑いあった。

そんな、上鳴 電気の誕生日。