「ベルくんはおっきいですなあ。」
「え?どうしたの急に。」
急じゃないよ前々から思ってた事。
だって見上げると首が痛くなっちゃうんだよ?
わたしもそこまで小さくない筈なんだ。
と言う事はベルくんがおっきいって事になる。
「ベルくんの視点だと見える世界が変わりそうだね。」
「それは大袈裟だよ」
ふふってベルくんが笑った。
ベルくんって大きい身体の割に動作とか口調とか上品だと思う。
「いーや、違うね!180度違うね!視界が広がって新世界築けちゃうね!」
「オーバーだなあ」
わたしみたいに地面から近い視界じゃ何も見えやしないよ。
ベルくんみたいに少しでも地面から離れてるときっと見えるものは沢山あると思うんだよなあ。
「じゃあさ、見てみる?」
「どうやって?」
まさかわたしの身長が伸びる魔法でも掛けてくれるつもりだろうか。いや、無い無い。自分で言ってて無いな。
わたしが首を捻っていると隣のベルくんがまたふふって笑った。
「こうやって。」
彼の言葉のすぐ後にわたしの身体がふわっと浮いた。
思考回路停止。
何が起こってるかというと、ベルくんがわたしの身体を軽々と持ち上げている。
「べ、ベルくん意外と大胆…だね。」
「そうかな?それよりどう?僕と同じ視界だよ。」
言われて前を見る。
一気に視界が広がった感じ。
木の枝に鳥の巣。屋根の上で昼寝する猫。草原に反射する日光。
どれもわたしの視界じゃ気付けないものばかりだった。
「す、凄い!ベルくんいつもこの視界なの!?」
「うん、まあ。」
「凄いね!色んな発見があるよ!」
傍から見れば可笑しな光景である。
一回りも二回りも大きい男性に抱き抱える様にして持ち上げられた少女が眼を輝かせてわーわー言ってるのだから。
「ナマエは面白い子だなあ。」
「そんな事無いですぅー!」
「そう?」
「そーなのー!」
「じゃあ、ナマエが言うならそうなんだろうね。」
ああ、何か幸せだなって感じる自分がいた。
好きな人に持ち上げられて、ちょっと恥ずかしいけど笑い合える事がこんなにも心地良いものなんだなあって。
まあ、当の本人は気付いてないだろうけど。
「あー、地面に足付けるのが勿体無いな。」
「ずっと僕が持ち上げている事は出来ないけど、」
「ん?」
「けど、言ってくれればまたいつでも抱きかかえてあげるから安心して。」
そう言って彼は只管優しく笑うのであった。