左右田が異常  





※絶望時代の狂ったヒロインと左右田
ただただ気持ち悪いだけかも















「今日、夢を見たよ。」
「あん?」

この機械馬鹿はスパナやらレンチやらを片手に何かをバラしては組み立ててを繰り返していた。

「左右田が出てきた。」
「そーかよ」

左右田は見向きもせずバラした部品に夢中だ。

「左右田を殺す夢」
「…は?」
「仰向けの左右田に馬乗りになってね、首を締めて殺したんだ。」

あの感覚はリアルだった。今でも手に感触が残ってるみたい。
左右田の細いけどしっかりした首筋に手のひらを絡めて少しずつ力を入れていく感じ。
みるみる左右田の顔色が赤から青に変わる感じ。
手にまとわりつく左右田の脈。
左右田の鼓動がだんだん早くなるあの感じ。
必死に抵抗するくせに、だんだん力が緩んでいくあの感じ。
事切れる瞬間の高揚感は夢の中にも関わらず確かにあった。

「苦しむ左右田の顔がね、気持ち悪かった。」
「…おい。」
「だけど、凄く興奮した。」

作業が終わったのかこっちを振り返ってきた。
今までわたしに見向きもしなかったくせに…

「オレさ、思うんだよな。」
「何が?」
「こうやって機械バラしてるけどよ。
人間の中身ってバラしたらどうなるんだろうなって。」
「なにそれ」
「お前は夢の中だろうけど、オレは頭の中でお前を何回もバラしてるぞ。」
「異常だね。どうだった?わたしの中身は」
「機械の部品とは何もかも違うかな。
あったけーしやわらけーし…」
「………………」
「でもよ、一つだけ共通点があったな。
鉄の匂いだけは一緒だ。」

なんだ。
わたしだけが異常なんだと思ってたけど実際そうでもないのか。
左右田を頭の隅では殺したいと考えてたわたしと人をバラしてみたいと考える左右田。

「それよりお前さ、
結構いい骨格してるよな。」

気付けば左右田の片手にはサンダーが握られている。
本来の用途は金属を切断、研磨するもの。
左右田の持つそれは何やら赤い液体がべっとり付着していた。